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愛情は感じるもの

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「脅したってなんだよ。単なる痴話喧嘩だろ? そんなの警察は相手にしないよ」

 悠生は大きなため息をつく。正直、被害届を出されたら困る。警察で事情聴取をされるだろうし、亜純に優位に立たれるのも胸糞悪い。
 何とか亜純の気を鎮めてさっさと関係を絶った方がいい気がした。

「それでも行くよ」

「……悪かったよ。俺だって自分が疑われて気分が悪かったんだ。顔の治療費も払うし」

「そういう問題じゃない」

「じゃあ、別れてもう二度と近づかないって約束するよ。付き合ってる間の喧嘩じゃん」

「喧嘩……」

 亜純はふむ……っと考えた。それから「じゃあ、被害届は出さないから帰りは送ってってくれる?」と言った。
 悠生は一瞬驚いたがすぐにふっと頬を緩めて「まあ、いいよ。今日は最初から送り届けるつもりだったし」と返す。

 悠生はやけにすんなり言うことを聞いたなと思ったが、考えてみればここから亜純の家まで距離がある。タクシーも夜間料金となるだろう。亜純の財布の中に1万円札は1枚しかなかった。先程会計を済ませたため、金が足りないんじゃないかと思った。

 亜純は軽く頷き、悠生の車に乗り込んだ。今度はまた刺激しないように、攻撃的な言葉を避ける。

「さっきの、信じていいんだよね? 別れてもう二度と近付かないって」

「うん。その代わり、亜純ちゃんも被害届出すとかやめてよ」

「……わかった」

 軽く会話をしながら車は進む。15分程走ったところで亜純が口を開いた。

「喉乾いたからコンビニ寄って欲しい」

 悠生は顔を顰める。「は? 家まで我慢すれば?」そう言いかけたが、音声が亜純の手元にある以上、下手なこともできない。
 どうせその音声を持っていったとこで、悠生のことなどほとんど知らない亜純が訴えることは困難だ。
 この場をやり過ごせば面倒事からは逃れられる。そう思いながら、苛立ちを抑えてコンビニへ向かった。

「はい。着いたよ」

 エンジンを止めた悠生が亜純の方を向く。亜純は悠生の顔をじっと見つめて「この顔じゃコンビニに入れないからお水とティッシュを買ってきて。そのくらいいいでしょ」と冷静に訴えた。
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