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愛情は感じるもの

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 亜純の心は悠生に対してもはや何も感じなかった。確かに安月給で生活水準はそこまで高くはない。けれど、子供はいないし結婚していた時だってお互いフルタイムで働いていたから経済的に困ったことはなかった。
 独身になった今は自分の生活だけ考えればいいのでもっと余裕ができた。

 貧乏でひもじい思いをしていたことなどない。最初から悠生の経済力をあてにしていたわけでもない。それなのに貧乏人扱いをされたことも納得いかなかった。

「あなたから見たら私は貧乏なのかもしれないけど、詐欺をするほど困ってはないよ。そうやって大きな声を出して脅せば私が黙って言うことを聞くと思ってるの?」

「……は?」

 亜純がじっと目を見て言えば、悠生は口元をヒクヒクと引きつらせた。亜純の怒りを感じたのだ。
 自分に対して盲目的な好意を持っていて、ホテルへの誘いも断らない亜純は思い通りにできると思っていた。けれど、本来の芯の強さが表に現れて、悠生は狼狽した。

「物で殴るなんて最低だよ。悪いけどこのまま警察に行かせてもらう」

「はぁ!? なんだよ、大袈裟な」

「大袈裟かどうかは法律が決めてくれるから。それとも口止めするためにここで私を殺す?」

 亜純はそのまま殺されるかもしれないことも、これ以上殴られることも考えたが何もしなければ自分が悪者にされてしまう。それだけは避けなければと思った。

「なに、お前殺されたいの?」

 悠生は舌打ちをすると、亜純の服の肩口を掴んだ。けれど亜純はじっと悠生を見つめたまま「ねぇ、ゆうくん私に生でしたよね? 私の中にゆうくんの皮膚や体液が残ってるかもしれないよ。死体を調べたらすぐにあなただってわかる。ホテルのエレベーターに行きには2人でいたのに帰りに1人で帰ったら殺したのはゆうくんだってわかるけどそれは大丈夫そう?」と尋ねた。
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