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愛情は感じるもの

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「……お腹、空いた」

 亜純はポツリと呟いた。夕食は食べずに帰ると悠生に言ったものだから、少な目に摂った昼食依頼何も食べていない。
 加えて千景の顔を見て安心したら、途端に空腹を思い出した。

「お腹空いた? ご飯食べてないの?」

「うん……食べてない」

「そっか。じゃあ、どこか食べにっていってもあまり店には入りたくないか」

 千景はちらっと亜純の顔を見て言った。店員や他の客が亜純の傷を見たら驚くだろう。好奇の目で見られるのもいい気はしないはずだ。

 亜純は黙って顔を伏せたまま軽く頷いた。

「んー、じゃあなんか買ってく? コンビニくらいしかないけど」

 千景が再度提案すると亜純はまた小さく頷いた。千景は亜純の反応を見てから近くのコンビニまで走らせた。
 それから適当でよければ俺が買ってくるよと言った千景に了承した亜純は、コンビニの駐車場で待つことにした。

 コンビニの灯りが眩しかったが、亜純は安心した。学生時代に何度か訪れたコンビニだ。長いこと変わらずここにある。
 実家の近くというのが無事に帰ってこれた実感を得られた。

 顔に傷を付けられた時点で無事だったかどうかは不明だが、とにかく生きて帰ってこれただけよかったと思わずにはいられなかった。
 今思い出しただけでも体が震える。あんな悠生を見たのは初めてだった。何度か会っているのに、今までの彼とはまるで別人だった。

 亜純がもう帰ると言ったあと、悠生は亜純の体調を気遣う素振りを見せながら「そういえば旅行を予定してた日曜日だけど」と切り出した。
 亜純は一瞬息を飲んだがなるべく平然を装うとした。

「うん……」

「申し訳ないんだけど、お客さんの都合で休日出勤しなきゃ行けなくなっちゃったんだ」

「え? あ、そうなんだ……」

 亜純は少しホッとした。旅行のスケジュールについて決めようと言われたらどうしようかと思っていたからだ。

「ごめんね。俺も凄く楽しみにしてたんだけど」

 悠生はそう言いながら亜純の頭を軽く撫でた。
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