したい夜はきみとじゃない

愛情は感じるもの

02

　傷付いた亜純の姿を知っている千景は、依に言いたいこともたくさんあったが、亜純から全て筒抜けなのも依には面白くないであろうと思い、それは控えた。

「真白とは……元々そんなに連絡取ってなかったから知らなかった」

　依はそう言って顔を伏せたが、真白がいなくなった理由は依が1番理解しているはずだった。
　だからこそ、真白にではなく俺に頼もうと思って最初から俺に連絡してきたんだろ。と千景は思った。

「そう……。まあ、いいや。それを渡しておけばいいんだね」

　そう言って千景は手を差し出す。依は持っていた紙袋を渡そうとして手を止めた。

「……亜純と会ってる？」

　依の表情と質問から亜純に未練があるのは明白だった。あれだけ亜純のことを好きだったのだから、そう簡単に忘れられるわけがないのは当然だ。
　しかし、その原因を作ったのは他でもない依だ。亜純のことが好きなら、亜純が望むものを与えてやればよかった。それを自分の欲を優先させたからこうなったのだ。

　散々泣かせておいて、まだ亜純に関わる男が気に入らないのかと千景もいい加減呆れた。

「たまにね。最近はちょこちょこ電話もする」

　嘘をつく理由はない。亜純の方から連絡をくれるのだ。千景がしつこく付きまとっているわけでもない。依との関係が終わっても、自分との関係は変わらないのだからなにもおかしなことではない。
　それなのに依はギリっと奥歯を噛んで「お前、亜純のこと狙ってんのか」と低い声で唸った。

「狙ってないよ。亜純、今彼氏いるし」

　うんざりした千景はそう答えた。亜純にとっても依にとってもこの事実は伝えておいた方がいい気がした。

「……は？　彼氏？　いつから」

「もう別れたんだから変に詮索するのやめなよ。亜純だって次に進もうとしてるんだからさ。依も新しい相手探したら？」

「簡単に言うなよ！　俺がどれだけ亜純のことを好きだったかわかるだろ!?」

　依は掴みかかる勢いで声を荒らげた。