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愛情は感じるもの

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 千景は慌てて外に出た。今家の前にいると連絡が来たからだ。

「久しぶり……」

 目の前の男はバツが悪そうにはにかむ。こんな顔を見たのはいつぶりだったかと千景は思う。夜はまだ冷える。
 それでも吐いた息が白くならない程度の気温にはなってきた。

 男2人目を合わせて気まずそうに同時に逸らした。亜純と依が別れてから、千景も依とは連絡を取っていなかった。
 依との経緯については一方的に亜純から聞いたことしか知らない。今依がどこで何をしているのか、亜純が知らなければ千景が知る由もない。

 わざわざ自分からその後どうなのかと離婚を煽るようなこともしたくなかった千景は、依の方から連絡がくるのを待っていた。
 待っていたといってもこのまま疎遠になることも覚悟していた。

「久しぶり。どうしたの? 急に」

「家の場所、亜純に本送ってくれた時に控えておいた」

「いや……住所の話じゃなくて」

「……亜純とは連絡取れないから」

 ポツリと呟いた依に、千景はああ……とようやく納得した。亜純に用事があって、自分は亜純と連絡が取れないから俺を介して何かをしようということかと。
 亜純が既に依の連絡先をブロックしてしまったことは了承済みだ。

「なんか忘れ物?」

「うん。アパート、ようやく片付け始めて亜純が忘れてったもんが色々出てきた」

 そう言って依は持っていた紙袋を腰の位置まで上げた。街灯に照らされた依の横顔は覇気なく笑う。

「俺から渡しておけばいいってこと?」

「他に亜純と連絡取ってるヤツを俺は知らない」

「そう……か。真白もいなくなっちゃったしね」

「いなくなった?」

 依は不思議そうに目を大きくさせた。

「知らないの? 多分今、誰も連絡取れない。それこそ俺もどこで何してるか知らない」

 言いながらも千景は、依が自分との関係を亜純に暴露したからじゃないかと心の中で呟いた。提案したのは真白だし、彼女にも非はある。けれど、それに乗っかったのは自分だし、結果的に亜純と付き合うことに成功はしたのだから2人の秘密は墓場まで持っていくべきなんじゃないかと思った。
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