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それぞれの生活

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 亜純はシャワーを浴びながら、ふと考えていた。悠生が自分と会っていたのは、こうしてお金を抜き取ることが目的だったのかと。
 今まで奢ってもらった分も、こうやって回収していけばマイナスにはならない。むしろ、気づかなければプラスになる。

 そこまで考えて、こうして被害に遭っているのは自分だけなのだろうかと考えが巡る。もしも、何人も相手がいてその相手全てから現金を盗んでいるとしたら、ブランド物で身を固めていることにも頷ける。
 不動産業に就いているとは聞いたが、会社名も知らなければ年収も知らない。目に見えるものと本人の言葉だけで経済力のある人間だと信じてしまった。

 今までこんなお姫様のような扱いを受けたことがなかったから、勘違いしてしまった。悠生は自分のことなど微塵も愛していない。改めてそう確信して涙が滲んだ。

 さっさとシャワーを済ませると、既に着替え終わった悠生がソファーに座っていた。

「……おまたせ」

「うん。着替えたら行こうか」

 笑顔を向けられて、亜純は顔を引きつらせながら頷いた。亜純は意を決して口を開く。

「あのね、ゆうくん。ご飯……凄く楽しみにしてたんだけど、なんか生理前でお腹痛くなってきちゃって……。食事はまた今度でもいいかなぁ」

 真っ直ぐ顔を見れなかった。それでも断りは入れなければと息をのむ。

「え? 大丈夫? 薬飲む?」

「う、ううん。そこまでじゃない。家に帰ってゆっくりすればよくなると思う」

 痛いのは腹部ではなく、無理やりねじ込まれた陰部だ。ボディーソープがしみて辛かった。今でも下着で擦れるとヒリヒリと痛む。
 喉の奥の違和感もまだ残っている。2回歯磨きをしても、口内の精液の感触は消えなかった。いつまでも鼻の奥に残っているような気がして気分が悪かった。
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