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それぞれの生活

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 暫く見つめ合って、亜純がチラチラと悠生の視線を捕らえる。亜純は自分の心臓の音を聞きながらキスされるかも……なんて少し期待する。

 もう子供じゃないのだ。依に抱かれなくなって1年。更に離婚に至るまでの期間と離婚してからの今をいれればもう2年近くも誰ともセックスをしていない。
 それなのに暫く刺激を受けていなかった子宮が腹の中でずくんと疼いた。

 30歳間近になって、男女の間に何もない関係の方が少ないこともわからないわけではない。依以外の男はどんなふうに触れるのだろうかと恐怖もあるが、好奇心だってある。
 結婚してからはセックスは子作りの行為だと思っていたが、純粋に愛されたいと今は思えた。

 悠生の顔が近付いて、亜純の唇が震える。ついに……と思ったところで「じゃあ、そろそろ帰ろうか」と顔を覗き込まれて寸止めを食らう。

「はひ……」

 裏返ってしまった声に亜純は咳払いをして、誤魔化すように大きく数回頷いた。

 恥ずかしい、恥ずかしい!
 私ってば何を期待して! まだ2回目なのに、付き合ってもないのにキスなんかする人じゃないのよ! 
 体から入る恋もあるって聞くからちょっとそういうこともあるのかなぁとか思っちゃったけど、ゆうくんはそんなんじゃないんだから!

 心の中でバーッと喋り倒して、笑顔で話す悠生の言葉に相槌を打った。しかし、亜純はその内容など頭には入ってこなかった。

「また次もご飯行きたいね」

「そ、そうだね。楽しみにしてる」

「次はいつ空いてる?」

「えっと……」

 慌ててスマホを取り出してスケジュールを見る。4日後が休みだった。たしか悠生も日曜日は固定休だと言っていたような……と思い出す。

「私、日曜日お休み。ゆうくんも休み?」

「お! そうなんだ。俺も休み。でもごめんね、その日はもう約束があって。次のお休みはいつ? 仕事終わりでもいいよ」

「あっ、そっか……」

 亜純はそう返しながら改めてスケジュールを確認した。

 私みたいに友達と遊ぶ予定や出かける予定がないわけじゃないよね。皆それぞれ忙しいんだから。と改めて恥ずかしさを感じながら10日後の朝番終わり食事の約束をした。
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