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それぞれの生活

02

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 亜純は殆どの荷物を持ち去ってしまったが、お揃いで買った依の物は当然残っている。片割れがなくなったとしても、愛用していたマグカップがお揃いであることは記憶から消えない。
 亜純がいなくなっても思い出だけはいつもそこにある。

「……なんでこうなったんだろうな」

 1人ポツリと呟いてみても、それに返してくれる言葉はない。亜純と出会うまで、女性なんて誰でも同じで誰でもよかった。
 見た目はそれぞれ違うが、中身は皆同じようなものだった。依の容姿に集ってきて、声をかけられない性格の子は遠くから目が合うまで見つめてくる。

 何の感情もわかなかったのに、亜純だけは違った。周りの人間が亜純のことを今までの女性のタイプとは違う、地味だ、面白みがない、色気がないなどマイナスな評価をしても依にとっては全てが1番で、唯一だった。
 世の中で騒がれている“可愛い”の基準だってどうでもよかった。依にとっては亜純が1番可愛くて、特別だった。

 亜純とずっと一緒にいたいから子供は望まなかったのに、結果的に自らの手で手放してしまった。
 こんなことなら子供を授かってでも、亜純と一緒に暮らしたかったと後悔した。

 本音を言えば今だって子供はいらなくて、亜純と2人だけで暮らしたい。しかし、亜純が戻ってきてくれるのであれば、どんな条件があったって受け入れられると思えた。

 今後亜純が他の男性と恋をして、自分でない誰かに今まで自分にしてくれたように愛情を注ぐのかと想像したら、嫉妬で気が狂いそうになった。
 もしもその相手が亜純の子供を望んだら、自分にはしてあげられなかったものを亜純に与えてやることができるし、自分には見ることのできなかった亜純の笑顔を見ることができるのだ。

 亜純が喜んでくれるなら、子供いてもよかったかなぁ……と思う反面、そこから18年はやっぱり耐えられないよなぁ……と現実を思い知る。

 こんなに長い時間一緒にいたと思っても、たったの6年なのだ。今の倍以上の年月を子供ありきの生活で過ごすなどやはり依には無理だと顔を伏せた。
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