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想いの矛先

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 絶対に亜純とは付き合えない真白からしたら、別の男と寝たら亜純と付き合えると聞けば喜んでねようと思えた。だから依の気持ちはわかるのだ。
 もしも亜純と付き合えるのなら、友達である依と寝た亜純とだって変わりなく愛することができる。

 本気で依のことが好きだったなら、自分と寝たことなど関係なく今の依が好きだからと思えるはずだと真白は思った。
 結局のところ、男女の恋愛は容易い。代わりはいくらでもいて、両想いになる確率だって高い。

 自分のようにレズビアンでもなく、かといって男性にも恋愛感情が沸かない特殊な人間には好きになったその人しかいないのに、一般的な人間にはその特別感もわからない。
 同じように真白にも亜純の不快感はあまりピンとこないものだった。

 依への不信感が募ったから、離婚を視野にいれたから真白のことが許せなかったのか、夫婦円満だったとしても離婚を考えるほど嫌なことだったのかわからなかった。

「亜純と別れたからってお前とは付き合わないから。俺はお前のこと、好きだと思ったことないし」

 依は不機嫌そうにそう言った。まるで全ての原因が真白にあるとでもいいたげだった。

「ああ……別にもう離婚が決定してるなら今更隠すこともないけど。高校時代からアンタを好きだって言ったけど、あれは嘘よ」

「……は?」

「本気で亜純のことが好きなのか試したかっただけで、依のことが好きだと思ったことは一度もない」

「意味わかんね……じゃあ、何のために」

「少なくともアンタのためじゃない。亜純を幸せにできなくなったアンタにはもう用はないわ。どうせ私と同じように亜純に嫌われたんでしょ」

 真白は自分でそう言いながら胸が苦しくなった。たった今亜純が苦しんでいることを思えば、亜純と依のことには首を突っ込まず亜純が自然と好きになった人との恋愛を見守るべきだったのかと過去の自分を思い返す。
 仮に依ではない男が浮気をするような男でも、暴力を振るう義父みたいな男でも亜純が選んだ人だからと納得できただろうか。

 真白はブチッと切られた依との電話を耳の奥で聞きながらゆっくりと首を左右に振った。今更過去に戻れたとしても、同じことをする気がした。
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