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夫婦のかたち

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 亜純は暫く車の中でぼーっと考えていた。千景に話を聞いてもらって少しは落ち着いたが、依がいる家に帰るのは億劫だった。ベッドは1つしかないし、いつもは依の腕枕で眠るのに背中同士を向けて寝るのも気まずい。
 夫婦のことだから避けて通れない話題だとしても、依の口からはっきりと子供がいらないと言われるのは正直耐えがたいものだった。

 ただでさえ仕事が辛くなってきたところだというのに、また子供たちの笑顔を見たら今日の話し合いを思い出して泣いてしまいそうだった。

 依は私と2人がいいって言ったけど……子供が嫌いなのかな。ううん、そんなことは言ってなかった。お金がかかるから? それなら1人でもいい。そりゃ兄弟がいた方が寂しくはないだろうけど、その分1人の子にたっぷり愛情を注いであげられるし……。でもそんな話にもならなかった。ただいらないって。いらないって……。

 亜純はまた目頭が熱くなるのを感じた。子供ができてしまえば依は自然と父親になってくれるのか。そもそも避妊しないセックスはしないと断言したのだから、子供ができること自体ないのか。なんてまた同じことを繰り返し考えた。
 しかし、いつまでもそうしているわけにもいかず、亜純は仕方なく自宅へと戻った。

 いつもならテレビがついていて、依が1人で待っている空間は騒がしい。それなのにしんと静まり返った部屋で、依も同じようにソファーに座ったままぼーっと一点を見つめていた。
 亜純の気配に気付いてはっと顔を上げた依は、不安を全面に押し出した表情を浮かべた。

 今日は帰ってこないかもしれない。そう思ったら依もどうしていいかわからなかった。結婚してから亜純が帰って来ない日など一度もなかった。
 一緒に寝ない夜などなかった。それが亜純を泣かせた上に今夜帰ってこなかったら……あるいはずっと帰ってこなかったら。そう考えたら冷や汗が止まらず動悸がした。
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