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友人の恋人

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「なんで……。それのどこが誠実なの? 依が言ったんだよ? 私たちの子供なら可愛いって。子供が欲しいって言ってた私と家族になりたいって。酷いよ……」

 亜純はそう言いながら、ポロッと一筋涙をこぼした。視界が滲んで次から次へとボロボロとこぼれ落ちた。

「亜純!? ごめんって……。俺だって最初から亜純のことを騙すつもりで言ったわけじゃないんだよ。亜純と一緒に住み始めたら楽しくて、幸せでずっとこのままがいいって思っただけで……」

 泣かせるつもりなどなかった依は、オロオロと落ち着かない手で空を切りながら必死に説明しようとする。

「今が幸せなのはわかってる。でも私……」

 依が最初から子供は望んでないってわかってたら、結婚なんてしなかった。
 そう言ってしまいそうになり、亜純は慌てて飲み込んだ。

 果たして本当にそうだっただろうか。確信はもてなかった。依が言うように今までの結婚生活は幸せだった。依と結婚して困ったことも不満に思ったことなかった。セックスレスになるまでは。
 この人と結婚できてよかったと思えた。その相手に結婚しない選択があったことを伝えてしまっていいのか迷った。

「亜純が子供を好きなのはわかるよ。でも、だから保育士になったんじゃないの? 子供の世話なら仕事でもできるだろ? 何も仕事から帰ってきて疲れてる中育児なんかしなくても……」

 依が良いことだと言いたげな言葉は、亜純の心を抉るばかりだった。好きで始めたその仕事が辛くなってきたのは、自分に子供がいないからだ。
 仕事から疲れて帰ってきたって、我が子の育児ならしたいと自ら願っているのだ。それを真っ向から否定された。亜純は絶望的に咽び泣くしかなかった。

「他人の子供と自分の子供じゃ違うよ! 私は私の子供が欲しいの! よその子じゃ嫌なの! なんでわかんないのよ!!」

 亜純はそう大声で喚いた。
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