したい夜はきみとじゃない

将来の夢

18

　依が思うようにいかずに悩んでいる中、現れたのは真白だった。知らない内に仲良くなっていた亜純と真白。
　休み時間や昼休み、放課後も真白は亜純にベッタリだった。だからどうしても亜純との距離を縮めるには真白を避けることなどできなかった。

　ただ、そんな真白はとても都合よく働いてくれた。

「今度の休み、亜純と動物園に行くの！」

　母親が休みだから妹の面倒を見る必要がなく、珍しく1日遊べるという。それを自慢気に話してきた真白。

「いいね、動物園」

「んー、天野くんも行く？」

　え？　と驚く亜純に確認もせず真白はそう言った。当然依は断る理由などなく直ぐに行くと返答したのだ。

「じゃあ、緒方くんも一緒に行こうよ」

　そう続けた真白に今度は苛立ちを募らせる。なんでよりによって千景……などとは思うが、その場にいたのだから仕方がないし、千景は亜純に手を出さないと約束した分まだ動きやすいかと渋々了承した。
　こんなことが繰り返され、気付けば自然と4人でいることが増えた。

　プライベートで会う度に、依は亜純に惹かれていった。女の子は守ってあげなきゃいけないものだと思っていたが、亜純の方がよっぽどしっかりしていて依の方が叱られることも多かった。
　そんな時間も心地よくて、依は自分だけを見て欲しくなった。クラスでは見せないプライベートな亜純の表情もたくさん知っている。

　他の男子には自分から話しかけたりしないのに、自分には話しかけてくれるようになった。それがたまらなく優越感で、もっと、もっとと欲が出た。

「亜純ってさ、彼氏いないの？」

　その頃には名前で呼ぶ仲になっていて、少しずつ距離を縮めた。

「か、彼氏!?　いないよ！　できたこともないし！」

　驚きと照れが混同し、亜純は両手をぶんぶんと振って大きな声を上げた。その瞬間、依はどうしても亜純が欲しくなった。
　まだ誰とも付き合ったことがない。男を知らない亜純の最初で最後の男になりたいと思った。