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将来の夢

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 隣で身じろぐ気配がして、依はパチリと目を開けた。亜純の髪が依の頬をくすぐって、甘い香りがした。同じシャンプーを使っているはずなのに、自分とは全く違う香りがする。
 そう感じながら体を起こすと、依に背中を向けてしまっている亜純の頭に軽くキスをした。

 結婚して6年目だというのに、依はまったくもって亜純への愛情の薄れを感じなかった。それどころか年々強くなっていく感情に自分でも戸惑う。
 程よく焼けた肌と、紫外線に当たって少し傷んだ髪を暗闇の中でぼーっと見つめながら、依は亜純と出会った日のことを思い出していた。

 依は昔からクラスでは1番目立つ存在だった。友達は多かったし、可愛い女の子達からも人気があった。
 中学になる頃にはファンクラブもあって、好奇心に負けてそれほど好きでもない子と初体験も終えた。

 周りが恋愛をしていたから、依も興味本位で彼女を作ってみたが自分には不向きだと感じた。束縛されるのは嫌だし、なによりも皆でワイワイと賑やかくしているのが楽しくて好きだった。

 そんな中、高校に進学し亜純と出会った。放課後になると会話の中心となる依を囲んでクラスメイトが遅くまで残っていた。
 しかし亜純だけはすぐに教室を出ていったのだ。最初は部活へ行っているのだと思っていた。

「久保さんって毎日ご飯作ってるらしいよ」

「妹が小さいんだってね」

「女子力高いよねー」

 そんな会話をたまたま耳にした。まだ久保亜純だった彼女は、どうやら共働きの両親に代わって妹の面倒をみているらしい。
 特に興味はなかったが、人見知りのない依は翌日亜純に話しかけた。

「なー、久保って毎日夕飯作ってんの?」

 突然そう声をかけた依に亜純は怪訝な顔をした。

「え? 天野くんなんで知ってんの? 怖いんだけど」

「怖くないって。女子たちが話してるの聞いたの。妹小さいって」

「あー……そう。小学校上がったばっかりで帰ってくるの早いんだ。学童保育に通ってるから迎えに行くの」

 依はまるで母親のようなことをしている亜純に驚いたのを覚えている。
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