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将来の夢

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「じゃあ、依だけ同窓会に行くつもりだったの?」

 亜純は依が刻んだキャベツをボウルに移しながら尋ねた。刻み葱が冷凍庫にあったはずだからそれを使おうと頭の片隅で考えながら。

「さすがにそろそろ言わないとかな……とは思ってた。まさか千景と連絡取るとは……」

「依も千景と電話したって言ったじゃん。私はまた千景から絵本が届いたからそのお礼に電話したんだよ。そしたら同窓会の話をされたから」

「ああ……。なるほど。黙っててごめん。言うなって言われたら言えなくて……」

「まあ、真白との約束を守ったのは偉いと思うけど、なんか仲間外れにされたみたいで私は悲しかったんだよ」

 亜純がポツリと言えば、依は驚いたように瞼を持ち上げた。亜純がそんな気持ちになることまでは想定していなかったといった顔だ。

「ごめ、そんなつもりじゃ……」

「話してくれたからいいけど。私だって真白の前で聞いてないふりくらいできる。私たち4人に関係してることなら隠し事しないでよ」

「それはごめん……。亜純に嫌な思いさせた」

 依はしゅんと目を伏せて、包丁を置くと横からぎゅうっと亜純を抱きしめた。依が亜純を大切に思っていることは伝わってくる。こうして亜純が怒れば言い訳することなくちゃんと謝罪もする。

「わかってくれればいい。私も同窓会行くからさ。一緒に行こう」

 これ以上怒ったところで仕方がないし、そもそも怒りたいわけでもなかった。ほんの少しの寂しさが不満に繋がってしまっただけだ。喧嘩をするようなことでもないし、この話はこれで終わりにしようと亜純は思った。

「うん。わかった。……亜純同窓会行きたい?」

 せっかく許そうと思っていたのに、依がそんなことを聞くものだから、亜純はまた少し苛立った。

「行きたいよ。なんでそんなこと聞くの?」

「いや、亜純が行かないなら俺もやめようかと思って……」

「え? でも千景には行くって言ったんでしょ?」

「まあ、うん。でも、亜純が行けないなら行くつもりなかった」

「土曜日の夜だって聞いたから行けるよ? 千景にも真白にも会いたいし。千景も依に会えるの楽しみにしてた」

「うん。わかってるよ……。じゃあ、一緒に行く」

 更にぎゅうっと力を込める依に、亜純は盛大なため息をつきながらよくわからない夫の頭をポンポンと撫でた。
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