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溯雅ノ國、国王誕生【1】
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珱礼三百年。匠閃郷ーー
「祥澪様! こちらにいらしたのですか! もう民がお待ちですよ!」
一人の男が息を切らしてやって来た。額に大量の汗を浮かべて、血走った目を向ける。それだけで、相当探し回ったのであろうことくらい検討がついた。
「おー。稀淘、元気だなぁ」
満開の桜の木の上から稀淘を見下ろし、祥澪はにいっと歯を出して笑った。肩甲骨辺りまで伸ばした鮮やかな赤髪は、さらりと揺れ頬を撫でる。
しっかりと身なりを整えたというのに、あっさり家来達の前から姿を消し、いつものように自由に動き回る。
重臣である稀淘は、いつも奔放な王に頭を抱えていた。
「元気だなぁじゃありませんよ! 貴方って人は! いつになったら王の自覚が湧くのですか!」
稀淘は目をつり上げて声を張る。汗で濡れた黒髪を揺らして、緋色の瞳を光らせた。
「おうおう。威勢がいいなぁ。王の自覚なんかあるわきゃねぇだろ。ついこの間まで平民だったんだぜ、俺は」
豪快に笑ってみせ、口内の赤い舌が上下する。
「それでも貴方は王です! いつまでもそのような態度では困ります! 民達は皆王に会えるのを楽しみにしているのですよ!」
地上からぎゃんぎゃんと騒ぐ稀淘に祥澪はふっと肩の力を抜き、暖かみのある薄茶色の目を細めた。頬を緩め、穏やかな表情で「平和だなぁ……」と言った。
どこまでも自由な祥澪に、稀淘は長い長いため息をついた。
「なあ稀淘、見ろ。まだ国は半分潰れたままだ。それでも民が笑っている。死者は最小限で免れた」
「それは祥澪様が隣国の王の首を討ったからです。不条理な戦争から民を守ったからです。だから貴方は、王という概念のなかったこの国で、唯一国王となった」
「別に俺は国王になりたかったわけじゃない。ただ、俺は匠閃郷が好きなのさ。それを海の向こう側から突然やってきて、郷を攻撃されたら面白くねぇ。だから叩き潰しただけだ。俺は英雄でも何でもないのさ。ただの自由人だ」
「それでも国民は、貴方を王と認めたのです。全ての郷を束ねる王として。全ての郷を元に戻すための代表として」
稀淘は真剣な眼差しで祥澪を見つめた。今も昔も変わらない。自由で奔放な人間だが、義理堅く人情味に溢れた暖かい男、それが祥澪である。
祥澪は、ごく平凡な家に生まれた。六人兄弟の長男であった。兄弟仲がよく、両親にも可愛がられて育った。
子供の頃より運動神経がよく、木の枝を使っては弟達とちゃんばらをして遊んでいた。森に入れば野生の動物達と過ごし、時には山犬や狼に乗っかり移動したりもしていた。人間に慣れるはずのない野生の動物が、何故か祥澪にだけはなついていた。
「俺は動物と話ができるのさ」
そんな馬鹿げた話をしていたのを稀淘はよく覚えている。
稀淘は祥澪の住む隣の村で育った。体が小さいことで同じ年頃の男児達からからかわれ、酷い扱いを受けていた。
祥澪と稀淘が初めて出会った時も、祥澪は山犬に乗ってやってきて、威張っていたガキ大将を食い千切らんばかりに追いかけ回しおかしそうに笑っていた。
「祥澪様! こちらにいらしたのですか! もう民がお待ちですよ!」
一人の男が息を切らしてやって来た。額に大量の汗を浮かべて、血走った目を向ける。それだけで、相当探し回ったのであろうことくらい検討がついた。
「おー。稀淘、元気だなぁ」
満開の桜の木の上から稀淘を見下ろし、祥澪はにいっと歯を出して笑った。肩甲骨辺りまで伸ばした鮮やかな赤髪は、さらりと揺れ頬を撫でる。
しっかりと身なりを整えたというのに、あっさり家来達の前から姿を消し、いつものように自由に動き回る。
重臣である稀淘は、いつも奔放な王に頭を抱えていた。
「元気だなぁじゃありませんよ! 貴方って人は! いつになったら王の自覚が湧くのですか!」
稀淘は目をつり上げて声を張る。汗で濡れた黒髪を揺らして、緋色の瞳を光らせた。
「おうおう。威勢がいいなぁ。王の自覚なんかあるわきゃねぇだろ。ついこの間まで平民だったんだぜ、俺は」
豪快に笑ってみせ、口内の赤い舌が上下する。
「それでも貴方は王です! いつまでもそのような態度では困ります! 民達は皆王に会えるのを楽しみにしているのですよ!」
地上からぎゃんぎゃんと騒ぐ稀淘に祥澪はふっと肩の力を抜き、暖かみのある薄茶色の目を細めた。頬を緩め、穏やかな表情で「平和だなぁ……」と言った。
どこまでも自由な祥澪に、稀淘は長い長いため息をついた。
「なあ稀淘、見ろ。まだ国は半分潰れたままだ。それでも民が笑っている。死者は最小限で免れた」
「それは祥澪様が隣国の王の首を討ったからです。不条理な戦争から民を守ったからです。だから貴方は、王という概念のなかったこの国で、唯一国王となった」
「別に俺は国王になりたかったわけじゃない。ただ、俺は匠閃郷が好きなのさ。それを海の向こう側から突然やってきて、郷を攻撃されたら面白くねぇ。だから叩き潰しただけだ。俺は英雄でも何でもないのさ。ただの自由人だ」
「それでも国民は、貴方を王と認めたのです。全ての郷を束ねる王として。全ての郷を元に戻すための代表として」
稀淘は真剣な眼差しで祥澪を見つめた。今も昔も変わらない。自由で奔放な人間だが、義理堅く人情味に溢れた暖かい男、それが祥澪である。
祥澪は、ごく平凡な家に生まれた。六人兄弟の長男であった。兄弟仲がよく、両親にも可愛がられて育った。
子供の頃より運動神経がよく、木の枝を使っては弟達とちゃんばらをして遊んでいた。森に入れば野生の動物達と過ごし、時には山犬や狼に乗っかり移動したりもしていた。人間に慣れるはずのない野生の動物が、何故か祥澪にだけはなついていた。
「俺は動物と話ができるのさ」
そんな馬鹿げた話をしていたのを稀淘はよく覚えている。
稀淘は祥澪の住む隣の村で育った。体が小さいことで同じ年頃の男児達からからかわれ、酷い扱いを受けていた。
祥澪と稀淘が初めて出会った時も、祥澪は山犬に乗ってやってきて、威張っていたガキ大将を食い千切らんばかりに追いかけ回しおかしそうに笑っていた。
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とても素晴しい作品でした。3日間ひたすら読み続けてしまいました。本当にこのまま書籍化されても良い作品ですね。ありがとうございました。これからの作品も楽しみにしています!
さくらちゃん様
感想ありがとうございます!
3日間で読み終えられたんですね!!(°д°)
かなり長編でしたが楽しんでいただけたようでとても嬉しいです☺️
和風ファンタジーは初でしたが、完結できてよかったです。
温かいお言葉をありがとうございます😊
書いたかいがあったと報われました!
3日間一気に読み続けてしまいました。素晴しい物語でした。楽しかったです。ありがとうございました。
めちゃくちゃ面白いです。毎回更新楽しみにしてます。
こてつむり様
感想ありがとうございます😊
面白いと言っていただけて嬉しいです‼️
毎日更新しますので、最後まで読んでいただけたら幸いです(*´꒳`*)