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婚姻届
【32】
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「……周は、自分が大切に思う人間に対しては、どこまでも優しくできます。反対に、自分が大切に思う人間に害を及ぼそうとする相手に対しては容赦ない。
結城は、おそらく周のその本質を見抜いていたんでしょう。保険の件で、結城と何度か話をした際、彼は周のことを危険だと言っていました。保険に関して、全く身に覚えのないことだから、恐らく周が関わってるんじゃないかって。実際のところは、実の家族によるものだったわけですから、とんだ言いがかりなんですけど……まあ、結城にとっては周はそれほどまでに脅威だったんでしょうね」
「脅威って……」
「結城も最初は単純に周を利用するだけのつもりだったんだと思いますよ。写真さえ取り返してもらえれば、顧客を解放して全てが丸く収まる。その予定だったんでしょう。
ですが、結城が周と何度も打ち合わせを重ねる内に、結城に対する憎悪のような、違和感のようなものを感じたのかもしれませんね。誰かを犠牲にしてでも、自分の目的を果たす。それを結城本人が行っていたわけですから、周が顧客を取り戻すためなら、自分やまどかさんがどんな危険な目に遭おうとかまわないと思うような人間だと捉えていてもおかしくはない」
「あまねくんは、そんな人じゃないよ!」
私は、ついむきになり中腰で律くんにくってかかった。律くんが悪いわけではないけれど、あまねくんが酷い人間呼ばわりされるのは、理不尽である。
「落ち着いて下さい。周の性格については、俺の方があなたよりも理解しているつもりですから。ただ、結城もあの時は気が動転していたし、何もかもうまくいかないことに苛立ちもあった。冷静に分析して物事を見極める判断力が低下していたとしてもおかしくはない」
「……結城がね、私とあまねくんを刺そうとした時、俺に会いに来てくれたの? って聞いたの。それに、あまねくんには私が九州へ行ったのは、あまねくんのせいじゃないのかって。私には、何でそんな考え方になるのかわからなかった……。
ただ、結城の日記には、律くんが言ったようにあまねくんが私に危害を加えるかもしれないって書いてあったの。だから、俺がまどかを守らなきゃって」
私はそう言いながら、静かに腰を落とした。
結城は、おそらく周のその本質を見抜いていたんでしょう。保険の件で、結城と何度か話をした際、彼は周のことを危険だと言っていました。保険に関して、全く身に覚えのないことだから、恐らく周が関わってるんじゃないかって。実際のところは、実の家族によるものだったわけですから、とんだ言いがかりなんですけど……まあ、結城にとっては周はそれほどまでに脅威だったんでしょうね」
「脅威って……」
「結城も最初は単純に周を利用するだけのつもりだったんだと思いますよ。写真さえ取り返してもらえれば、顧客を解放して全てが丸く収まる。その予定だったんでしょう。
ですが、結城が周と何度も打ち合わせを重ねる内に、結城に対する憎悪のような、違和感のようなものを感じたのかもしれませんね。誰かを犠牲にしてでも、自分の目的を果たす。それを結城本人が行っていたわけですから、周が顧客を取り戻すためなら、自分やまどかさんがどんな危険な目に遭おうとかまわないと思うような人間だと捉えていてもおかしくはない」
「あまねくんは、そんな人じゃないよ!」
私は、ついむきになり中腰で律くんにくってかかった。律くんが悪いわけではないけれど、あまねくんが酷い人間呼ばわりされるのは、理不尽である。
「落ち着いて下さい。周の性格については、俺の方があなたよりも理解しているつもりですから。ただ、結城もあの時は気が動転していたし、何もかもうまくいかないことに苛立ちもあった。冷静に分析して物事を見極める判断力が低下していたとしてもおかしくはない」
「……結城がね、私とあまねくんを刺そうとした時、俺に会いに来てくれたの? って聞いたの。それに、あまねくんには私が九州へ行ったのは、あまねくんのせいじゃないのかって。私には、何でそんな考え方になるのかわからなかった……。
ただ、結城の日記には、律くんが言ったようにあまねくんが私に危害を加えるかもしれないって書いてあったの。だから、俺がまどかを守らなきゃって」
私はそう言いながら、静かに腰を落とした。
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