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前進
【41】
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あまねくんの部屋へ戻り、律くんとのやり取りを話すと「あー……まどかさんわかりやすいからなぁ……」とまるで私のせいだ。
「あまねくんがあんなことするからだよ」
「じゃあ、まどかさんはしたくなかったの?」
「それは……」
「俺に触られるの嫌?」
「……嫌じゃないよ」
そんな聞き方はずるいと思う。
「俺は、まどかさんのことが好きだから触りたいんだよ?」
「それはわかるけど……ここじゃ……」
「だって暫くここに住むんでしょ? そしたら、またまどかさんと離れちゃう。結城さんに尾行されたら困るから、休み以外は中々帰ってくるの難しいし」
「……それはそうだけど」
そう言われてしまえば何も言い返せない。父が口うるさく言わなくなってから、うちに泊まってくれることもあったけれど、あまねくんだって遠慮していつでも来てくれるわけじゃなかった。
ここがいくらあまねくんの実家でも、雅臣のことがある限り、会える時間も限られてくる。
「だから、ちょっとだけ」
少しは反省してるのかと思いきや、後ろからぎゅっと抱き締めて、首もとに顔を埋める。
「……あまねくん、話聞いてた?」
「うん。もちろん」
「律くんに気付かれてるんだよ?」
「うん」
「部屋隣なんでしょ?」
「うん」
「……あまねくんは、私が律くんにいやらしい女だって思われてもいいの?」
「……え?」
あまねくんを止める手立てはある。一緒にいる中で、少しずつ彼の性格を理解し始めている証拠だ。
彼は、少し考えてから「それは嫌だな……律がまどかさんに欲情しても困るし」と困惑した表情を浮かべた。
それはないと思うけど。いつか「周やめて俺にしない?」そんなことを言われたこともあったけれど、結局は試されただけで「俺が周を裏切ることはない」と言われたし。
「まどかさんで色々想像されても嫌だしな……」
……それはあまねくんくらいのものだと思う。律くんの好きな女性のタイプを聞いたことはないけれど、なんとなく小さくて可愛らしいおとなしめの女の子が似合うような気がした。
そこには触れず、「だからおうちに誰かがいる時はやめよ?」と言えば、「うーん……」と唸りながら、最終的には納得してくれた。
私だって、あまねくんと甘い時間を過ごせるのは嬉しい。けれど、律くんには気付かれていて、他の家族にも気付かれてしまう可能性を考えると気が気じゃない。
私のせいで皆さんを巻き込んで、居候までさせてもらっているのに、その好意を裏切るような後ろめたさもあった。
ずっと悄気たままのあまねくんの頭を撫でながら、私達は眠りに就いた。
ここから、彼氏が不在である彼氏の実家に居候という奇妙な共同生活が始まった。
「あまねくんがあんなことするからだよ」
「じゃあ、まどかさんはしたくなかったの?」
「それは……」
「俺に触られるの嫌?」
「……嫌じゃないよ」
そんな聞き方はずるいと思う。
「俺は、まどかさんのことが好きだから触りたいんだよ?」
「それはわかるけど……ここじゃ……」
「だって暫くここに住むんでしょ? そしたら、またまどかさんと離れちゃう。結城さんに尾行されたら困るから、休み以外は中々帰ってくるの難しいし」
「……それはそうだけど」
そう言われてしまえば何も言い返せない。父が口うるさく言わなくなってから、うちに泊まってくれることもあったけれど、あまねくんだって遠慮していつでも来てくれるわけじゃなかった。
ここがいくらあまねくんの実家でも、雅臣のことがある限り、会える時間も限られてくる。
「だから、ちょっとだけ」
少しは反省してるのかと思いきや、後ろからぎゅっと抱き締めて、首もとに顔を埋める。
「……あまねくん、話聞いてた?」
「うん。もちろん」
「律くんに気付かれてるんだよ?」
「うん」
「部屋隣なんでしょ?」
「うん」
「……あまねくんは、私が律くんにいやらしい女だって思われてもいいの?」
「……え?」
あまねくんを止める手立てはある。一緒にいる中で、少しずつ彼の性格を理解し始めている証拠だ。
彼は、少し考えてから「それは嫌だな……律がまどかさんに欲情しても困るし」と困惑した表情を浮かべた。
それはないと思うけど。いつか「周やめて俺にしない?」そんなことを言われたこともあったけれど、結局は試されただけで「俺が周を裏切ることはない」と言われたし。
「まどかさんで色々想像されても嫌だしな……」
……それはあまねくんくらいのものだと思う。律くんの好きな女性のタイプを聞いたことはないけれど、なんとなく小さくて可愛らしいおとなしめの女の子が似合うような気がした。
そこには触れず、「だからおうちに誰かがいる時はやめよ?」と言えば、「うーん……」と唸りながら、最終的には納得してくれた。
私だって、あまねくんと甘い時間を過ごせるのは嬉しい。けれど、律くんには気付かれていて、他の家族にも気付かれてしまう可能性を考えると気が気じゃない。
私のせいで皆さんを巻き込んで、居候までさせてもらっているのに、その好意を裏切るような後ろめたさもあった。
ずっと悄気たままのあまねくんの頭を撫でながら、私達は眠りに就いた。
ここから、彼氏が不在である彼氏の実家に居候という奇妙な共同生活が始まった。
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