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前進
【31】
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飯田が帰った後、私はすぐにあまねくんにラインを送った。雅臣の会社の営業マンがきたことや、咄嗟に姉の振りをしたこと、パンフレットとサンプルを置いていったこと。
何とか今は誤魔化せたが、家を見張られたら終わりだ。通院している身であるため、全く外出しないということは不可能。それに、あまねくんが出入りしていればすぐにでもバレてしまうだろう。
どうしたものか……。
彼に送ったメッセージを見直し、暫く考えていると、またチャイムが鳴った。
びくっと肩を震わせた。もし、確認のためにあの男が雅臣を連れてきたら……。
そんな嫌な予感がして、そっとインターフォンの画面を見る。
「……なんだ」
体の力が一気に抜けたのは、いるはずのない美女が立っていたから。
何でうちにくんのよ。
そうは思うが、ドアを開け、彼女が言葉を発するよりも前に腕を掴んで中に引き込んだ。
「ちょ、ちょっと! 何!?」
相変わらずのブリーチを重ねた金髪ウェーブの髪。それなのに、傷むことを知らず艶々と腰上まで続いている。
パッチリとした大きな瞳は、まるでお人形さん。顔全体の雰囲気は、あまねくんよりも律くんの方が似ている気がする。
「何で、ここにいるの!?」
思わず小声でそう尋ねる。
「なになに……何で小声?」
「いいから!」
「あっくんに場所聞いて来たのよ。……ちょっと元気になったからって」
奏ちゃんをその場に、私は玄関の覗き穴から外を見る。特に変わった様子はないけれど、もしかしたらまだあの男がいるかもしれない。
「何してんの?」
「ここに来る時、誰かいた?」
「誰かって? そんなこと一々気にしてきてないけど」
「それもそうか……。営業マンぽい人とかいなかった」
「営業マン? んー……どうだろう。住宅街だし、いても不審に思わなきゃ目につかないよ」
そりゃそうだ。
ふうっと息を付き、彼女をリビングに案内した。
「意外と大きな家なんだ」
「意外とってなによ」
「もっとこじんまりしてて、汚い家を想像してた」
「失礼な……。うちだって両親は一応公務員なんだから」
「そう。それで、何でそんなに焦ってるわけ?」
「元カレと同じ会社の人が今営業にきたの。ねぇ、この前おばあちゃんのところに青汁の電話来たって言ってたよね?」
前回話をした時のことを尋ねれば、やはり株式会社サンケアだったとのこと。
先程の様子を、奏ちゃんに話して聞かせた。
「それ、絶対家バレてるじゃん! そもそも苗字特徴ありすぎるんだから、隠し通す方が無理じゃない?」
「そうだよねぇ……」
「あっくんには?」
「もう連絡したよ。とりあえずは家から出られないし……。あまねくんがここに来たら私がこの家にいるともバレちゃうしさ」
「うーん……私がここに来たの見られてたらまずい?」
「臣くんが奏ちゃんのことを妹だって知ってるかどうかだよね……。でも、奏ちゃん有名だからさ、本名で活動してるし、奏ちゃんだってことがわかったら自然とあまねくんの妹なのかもって繋がっちゃうよね」
「私が有名なのは、ほとんど女子高生だから。おじさん達がギャル雑誌なんて見ないでしょ」
「いや、多分元カレはギャル好きだと思うんだよねぇ……浮気相手もギャルだったもん」
「え!? 元カレいくつよ!?」
「1個上」
「うわ、気持ち悪。ひくんだけど」
彼女は、険しい顔をしている。いやいや、私だって浮気相手にあんな若い子はないってちょっとひいたよ。私以上にひかないでよ。
何とか今は誤魔化せたが、家を見張られたら終わりだ。通院している身であるため、全く外出しないということは不可能。それに、あまねくんが出入りしていればすぐにでもバレてしまうだろう。
どうしたものか……。
彼に送ったメッセージを見直し、暫く考えていると、またチャイムが鳴った。
びくっと肩を震わせた。もし、確認のためにあの男が雅臣を連れてきたら……。
そんな嫌な予感がして、そっとインターフォンの画面を見る。
「……なんだ」
体の力が一気に抜けたのは、いるはずのない美女が立っていたから。
何でうちにくんのよ。
そうは思うが、ドアを開け、彼女が言葉を発するよりも前に腕を掴んで中に引き込んだ。
「ちょ、ちょっと! 何!?」
相変わらずのブリーチを重ねた金髪ウェーブの髪。それなのに、傷むことを知らず艶々と腰上まで続いている。
パッチリとした大きな瞳は、まるでお人形さん。顔全体の雰囲気は、あまねくんよりも律くんの方が似ている気がする。
「何で、ここにいるの!?」
思わず小声でそう尋ねる。
「なになに……何で小声?」
「いいから!」
「あっくんに場所聞いて来たのよ。……ちょっと元気になったからって」
奏ちゃんをその場に、私は玄関の覗き穴から外を見る。特に変わった様子はないけれど、もしかしたらまだあの男がいるかもしれない。
「何してんの?」
「ここに来る時、誰かいた?」
「誰かって? そんなこと一々気にしてきてないけど」
「それもそうか……。営業マンぽい人とかいなかった」
「営業マン? んー……どうだろう。住宅街だし、いても不審に思わなきゃ目につかないよ」
そりゃそうだ。
ふうっと息を付き、彼女をリビングに案内した。
「意外と大きな家なんだ」
「意外とってなによ」
「もっとこじんまりしてて、汚い家を想像してた」
「失礼な……。うちだって両親は一応公務員なんだから」
「そう。それで、何でそんなに焦ってるわけ?」
「元カレと同じ会社の人が今営業にきたの。ねぇ、この前おばあちゃんのところに青汁の電話来たって言ってたよね?」
前回話をした時のことを尋ねれば、やはり株式会社サンケアだったとのこと。
先程の様子を、奏ちゃんに話して聞かせた。
「それ、絶対家バレてるじゃん! そもそも苗字特徴ありすぎるんだから、隠し通す方が無理じゃない?」
「そうだよねぇ……」
「あっくんには?」
「もう連絡したよ。とりあえずは家から出られないし……。あまねくんがここに来たら私がこの家にいるともバレちゃうしさ」
「うーん……私がここに来たの見られてたらまずい?」
「臣くんが奏ちゃんのことを妹だって知ってるかどうかだよね……。でも、奏ちゃん有名だからさ、本名で活動してるし、奏ちゃんだってことがわかったら自然とあまねくんの妹なのかもって繋がっちゃうよね」
「私が有名なのは、ほとんど女子高生だから。おじさん達がギャル雑誌なんて見ないでしょ」
「いや、多分元カレはギャル好きだと思うんだよねぇ……浮気相手もギャルだったもん」
「え!? 元カレいくつよ!?」
「1個上」
「うわ、気持ち悪。ひくんだけど」
彼女は、険しい顔をしている。いやいや、私だって浮気相手にあんな若い子はないってちょっとひいたよ。私以上にひかないでよ。
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