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【27】

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 暫く話をしてから、2人でベッドに潜り込む。アパートにいた時から使っているベッドのため、懐かしい感覚が蘇る。
 いつも寝る位置は、あまねくんが右側で私が左側。横向きでしか眠れない私は、彼の胸に顔を埋めるような形で眠る。

 彼が傍にいる時間をもっと堪能したくて、できれば彼が起きるまで眠りたくないと思うのだけれど、彼がいる安心感からか、すぐに睡魔がやってくる。
 瞼が重くなってくるのをやっとの思いでこじ開ける。

 そんな私を見て彼は、「すっごい眠そう。おやすみ」と言って笑った。
 頭を撫でられると眠気はピークを迎え、そのまま眠りに落ちた。

 目が覚めたのは、自分のではないアラームの音がしたから。あまねくんのスマホが奏でるアラーム音は、激しく表現しているのに、持ち主は知らん顔ですやすやと眠っている。
 一緒に眠らなくなってから随分経つが、朝が弱いのはそう簡単には直らないのだろう。
 綺麗な寝顔を眺めるのも久しぶりだった。
 彼のアラームを止めて、肩を揺する。

「あまねくん、朝だよ。1回お家帰らなきゃだからもう起きないと」

 そう声をかけてもうんともすんとも言わない。あんなに父のことを気にしていたのに、この家でぐっすり眠れるなんて、よっぽと安心してるか疲れているかだ。
 静かに寝息をたてている寝顔は相変わらずの王子様だ。

「朝だよー」

 頬をつついても起きない。そっと唇にキスをする。お伽噺のお姫様は大体これで目が覚める。
 数秒立つと瞼がピクピクと動き、ゆっくりと目が開いた。

「えー……お姫様じゃん」

 私が小声でそう言うと「……何が? お姫様ってなに? 誰?」と寝ぼけた様子でそう言った。
 完全に開けきらない瞳をしぱしぱと震わせ、眩しそうに窓から差し込む日差しから目を背ける。
 久しぶりに寝起きを見たけれど、可愛すぎる……。
 
「起きた? お仕事行かなきゃだよ」

「うん……。起きたよ。まどかさんの匂いする」

 そう言って私の足の上に頭を乗せ、腹部に顔を埋めて背中に腕を回した。

「起きる気ないでしょ」

「あるよー……。いい匂いする。このままもう1回寝たい」

「遅刻しても知らないよー?」

「んー……。好きだよ」

 話が噛み合わなくなってきて、彼がまた眠りそうになっていることに気付く。休日は、こんなやり取りを何度もして結局また眠る。彼は5回程これを繰り返すのだから。

 ここで頭を撫でたら確実にまた寝ることはわかっているので、頬を指で摘まんでむにむにと引っ張る。

「んー……、痛いよ」

「ほら、起きて」

「んー……」

 ぐずっている彼を起こそうと、髪をぐちゃぐちゃにかきあげて、柔らかな髪同士が絡まってボサボサになる。

 そんなところにドアをノックする音がした。寝ぼけたあまねくんがすぐに反応できるはずもなく、先にドアが開けられた。

「おはよう。あらあら、朝から仲がいいのね。朝ごはんできたから食べちゃいなさい」

 母が笑いながら言うと、あまねくんは飛び起きて、ベッドの上で正座をした。

「すみません! おはようございます!」

 土下座をするみたいに激しく頭を下げる彼。私は、母と一緒になって笑ってしまった。

「はいはい。温かい内に食べちゃいなさいね」 

 そう母に言われ、あまねくんは頭を下げたまま、顔を真っ赤にさせていた。
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