上 下
156 / 289
再会

【56】

しおりを挟む
〔私も茉紀のことは気になってる。ハイジさんともよく会ってるみたいだし、離婚なんてならなきゃいいけど……〕

〔2人目産まれたばっかりだって言ってたし、今離婚は辛いよね。旦那さんのお母さんが子供の面倒見てくれるのはありがたいと思うけど、肝心の旦那さんが何もしてくれないんじゃ何かと大変だろうし〕

〔いつもいつもお義母さんがみてくれるわけじゃないしね。何か力になれたらいいんだけど……〕

〔茉紀さんのことは心配だけど、まどかさんも他人の心配ばかりしてる場合じゃないよ。結城さんの釈放が決まりそうなんだって。父さんが会って話したいって言うから、今日実家に来れるかな?〕

 テンポよくやりとりしていたメッセージを見て硬直する。雅臣が釈放される……。これは、確かに茉紀のことばかりに気をとられている場合ではない。
 あの時の恐怖が甦り、半分湿ったフェイスタオルをぎゅっと握りしめる。
 実家の場所はまだ知られていない。大丈夫……。 

 雅臣とのことを思いだし、心拍数の上がる胸を押さえながら、気持ちを落ち着かせようと深呼吸する。
 昨日あまねくんと会ったばかりで、本日も会えるのはとても嬉しいのだけれど、そんな悠長なことを言っていられる状況ではなかった。

 あまねくんの仕事帰りにそのまま迎えにきてもらうことになり、私はそれまでの間、洗濯をしたり、掃除をしたりして過ごした。
 何かしていないと、雅臣のことを思い出してしまうから。余計なことは考えたくなくて、集中できる何かを探した。

 夕方になると、あまねくんが迎えに来るよりも先に母が帰ってきた。
 明るい声が聞こえて、居間の襖が開けられた。畳の上に正座していた私を見て、母は「何してるの?」と首を傾げたため、雅臣の釈放が決まりそうなことを伝えた。

「そう……。結城くん、出てきちゃうのね。まどかに近付かないように規制がかかってるって聞いたから、大丈夫だとは思うけど、何かあると心配だからやっぱり暫く家から出ない方がいいね」

「うん」

「あまねくんもいるんだし、大丈夫よ。それより、何で昨日はあんなになるまで飲んだの? お母さんじゃ上まで運べないし、あまねくんにお願いするのも申し訳ないから、ここに布団敷いて寝かせたけど、お父さんに説明するの大変だったんだから」

「やっぱり……。お父さん、何て?」

「何で自分の部屋で寝ないんだって。まどかを起こして自分の部屋で寝るように言うって言い出したんだから。
 ただの酔っぱらいだったけど、お店の子は気を聞かせて体調が悪そうだからって言ってくれたから、そのまま言い訳に使わせてもらったわよ。気持ち悪くなっちゃって何度も吐いちゃってるから、とても上まで上がれそうになかったって言っておいた。ようやく寝たところだから起こさないでって慌てて止めたんだから」

「ごめん……。そんな言い訳までしてくれたのに、今日そういうわけであまねくんち実家に言ってくる」

 無理にでも起こされていたら、酒の匂いでただ酔い潰れただけだと気付かれてしまっただろう。そうなったら、ハイジさんのフォローも母の演技も水の泡になるところだった。
 母には感謝しつつ、本日も家を出ることにリスクを感じた。しかし、今日は遊びではないのだから理解してもらわないわけにはいかない。
 妙なタイミングで厄介事が増えるものだ。畳に額が付きそうな程、母に頭を垂れ、父のご機嫌取りをお願いした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

妻がヌードモデルになる日

矢木羽研
大衆娯楽
男性画家のヌードモデルになりたい。妻にそう切り出された夫の動揺と受容を書いてみました。

初めてなら、本気で喘がせてあげる

ヘロディア
恋愛
美しい彼女の初めてを奪うことになった主人公。 初めての体験に喘いでいく彼女をみて興奮が抑えられず…

恋人の水着は想像以上に刺激的だった

ヘロディア
恋愛
プールにデートに行くことになった主人公と恋人。 恋人の水着が刺激的すぎた主人公は…

これ以上ヤったら●っちゃう!

ヘロディア
恋愛
彼氏が変態である主人公。 いつも自分の部屋に呼んで戯れていたが、とうとう彼の部屋に呼ばれてしまい…

結構な性欲で

ヘロディア
恋愛
美人の二十代の人妻である会社の先輩の一晩を独占することになった主人公。 執拗に責めまくるのであった。 彼女の喘ぎ声は官能的で…

君の浮気にはエロいお仕置きで済ませてあげるよ

サドラ
恋愛
浮気された主人公。主人公の彼女は学校の先輩と浮気したのだ。許せない主人公は、彼女にお仕置きすることを思いつく。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

♡蜜壺に指を滑り込ませて蜜をクチュクチュ♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート♡年末まで毎日5本投稿中!!

処理中です...