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再会
【53】
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「そうじゃなきゃ、こんなに最近2人目産まれたりしないでしょ? 旦那さんは、甘えん坊なんだろうね。茉紀ちゃんがしっかりしてて、優しいから。だからその優しさに胡座をかいてとことん甘えるんだよ」
ハイジさんの言葉に胸がチクリと痛む。私にも思い当たる節があったから。千代さんや姉のことで気を取られていた時、あまねくんからの連絡を蔑ろにした。
そのせいで彼は、菅沼さんとの仲を誤解し、あんなにも辛い思いをさせてしまった。それは、私があまねくんの優しさに甘えたからだ。
今の茉紀は、あの時のあまねくんと同じくらいの辛さを抱いているのだろうか。
「俺が言えるのはここまで。茉紀ちゃん、いい女だからね。今からでも、他を探せば相手はいるだろうに」
「ちょ、ハイジさん! まさか離婚させようなんて思ってないですよね!?」
私は、身を乗り出して、ハイジさんに詰め寄る。彼女には生活があって、子供2人を育てていかなければならないのだ。簡単に離婚を考えているなら、それを斡旋するようなことはやめていただきたい。
「思ってないって。そんなおっかない顔しないでよ。俺だって、茉紀ちゃんの不幸は本意じゃないからね」
彼は、両手のひらをこちらに向けて、胸の前にかざした。慌てた彼の態度に、私はゆっくりと姿勢を正す。
「なぁに、私の話?」
突然横から現れた茉紀の姿にびくりと体を震わす。あっと言う間に戻ってきた彼女は、きょとんとした顔で席に着く。
「私の不幸って何?」
私の左隣に座る彼女は、カウンターに両腕を乗せながら、私とハイジさんの顔を交互に見る。
「んー? 結婚式での友人からの挨拶だよ。まどかちゃんとも仲良くなっちゃったし、冗談でまどかちゃんの友人として挨拶しようかなって言ったら、それは茉紀ちゃんの役目だってあまねくんが怒るからさ。親友としての役目を奪うのは茉紀ちゃんを不幸にさせてしまうし、本意じゃないなぁって話」
何の言い訳も浮かばなかった私とは裏腹に、ハイジさんは、さらっと嘘をつく。全く顔色を変えずに。
私は、やはりこの人は怖いと思う。味方でいる時はいいけれど、敵には回したくない。
茉紀のことも、ただの相談役でいてくれる分にはありがたいのだけれど、あまり深入りして欲しくないのも本音だった。
ただ、茉紀本人がハイジさんを気に入ってしまっている以上、こちらからは何も言えないのだけれど。
「なんだぁ。そりゃ、友人の挨拶は私にさせてくれなきゃ怒るわよ。当然呼んでくれるでしょ?」
どこかほっとした様子の茉紀に、何か知られたくないことがあるのだと察する。ハイジさんが言ったように、茉紀が言いたくないのなら、変に詮索するべきではない気がした。
「当たり前でしょ。何なら、家族席にどうぞ」
私もなるべく平然を装って明るく振る舞う。茉紀がいつも旦那さんの悪口を言うものだから、茉紀の方がとっくに冷めてしまっているのだと思っていた。
「何もしてくれないなら、いない方がマシ」
「仕事しかしてないくせにずっと寝てる」
「生活費だけ入れてくれてたら、後は父親なんていてもいなくても一緒」
そんな言葉ばかりを聞いてきたけれど、本当はまだ旦那さんのことが大好きなのだとしたら、それはとても悲しい言葉に聞こえた。
「結婚式もいつになることやらだけど。それで、ハイジさんは理由を見つけられたんですか?」
せっかく会話が逸れていたのに、また元の話題に戻す茉紀。心の中で「ばか!」と叫ぶ。
「それが全然わかんないんだよね。あるとすれば、まどかちゃんの元カレ絡みかなぁ」
1度天井を見上げてから、そんなことを言うものだから、私達3人は一斉に視線を逸らし、黙るのだった。
その様子を見て、彼はニヤリと笑うと「おー、ビンゴ」と嬉しそうに声を弾ませた。
ハイジさんの言葉に胸がチクリと痛む。私にも思い当たる節があったから。千代さんや姉のことで気を取られていた時、あまねくんからの連絡を蔑ろにした。
そのせいで彼は、菅沼さんとの仲を誤解し、あんなにも辛い思いをさせてしまった。それは、私があまねくんの優しさに甘えたからだ。
今の茉紀は、あの時のあまねくんと同じくらいの辛さを抱いているのだろうか。
「俺が言えるのはここまで。茉紀ちゃん、いい女だからね。今からでも、他を探せば相手はいるだろうに」
「ちょ、ハイジさん! まさか離婚させようなんて思ってないですよね!?」
私は、身を乗り出して、ハイジさんに詰め寄る。彼女には生活があって、子供2人を育てていかなければならないのだ。簡単に離婚を考えているなら、それを斡旋するようなことはやめていただきたい。
「思ってないって。そんなおっかない顔しないでよ。俺だって、茉紀ちゃんの不幸は本意じゃないからね」
彼は、両手のひらをこちらに向けて、胸の前にかざした。慌てた彼の態度に、私はゆっくりと姿勢を正す。
「なぁに、私の話?」
突然横から現れた茉紀の姿にびくりと体を震わす。あっと言う間に戻ってきた彼女は、きょとんとした顔で席に着く。
「私の不幸って何?」
私の左隣に座る彼女は、カウンターに両腕を乗せながら、私とハイジさんの顔を交互に見る。
「んー? 結婚式での友人からの挨拶だよ。まどかちゃんとも仲良くなっちゃったし、冗談でまどかちゃんの友人として挨拶しようかなって言ったら、それは茉紀ちゃんの役目だってあまねくんが怒るからさ。親友としての役目を奪うのは茉紀ちゃんを不幸にさせてしまうし、本意じゃないなぁって話」
何の言い訳も浮かばなかった私とは裏腹に、ハイジさんは、さらっと嘘をつく。全く顔色を変えずに。
私は、やはりこの人は怖いと思う。味方でいる時はいいけれど、敵には回したくない。
茉紀のことも、ただの相談役でいてくれる分にはありがたいのだけれど、あまり深入りして欲しくないのも本音だった。
ただ、茉紀本人がハイジさんを気に入ってしまっている以上、こちらからは何も言えないのだけれど。
「なんだぁ。そりゃ、友人の挨拶は私にさせてくれなきゃ怒るわよ。当然呼んでくれるでしょ?」
どこかほっとした様子の茉紀に、何か知られたくないことがあるのだと察する。ハイジさんが言ったように、茉紀が言いたくないのなら、変に詮索するべきではない気がした。
「当たり前でしょ。何なら、家族席にどうぞ」
私もなるべく平然を装って明るく振る舞う。茉紀がいつも旦那さんの悪口を言うものだから、茉紀の方がとっくに冷めてしまっているのだと思っていた。
「何もしてくれないなら、いない方がマシ」
「仕事しかしてないくせにずっと寝てる」
「生活費だけ入れてくれてたら、後は父親なんていてもいなくても一緒」
そんな言葉ばかりを聞いてきたけれど、本当はまだ旦那さんのことが大好きなのだとしたら、それはとても悲しい言葉に聞こえた。
「結婚式もいつになることやらだけど。それで、ハイジさんは理由を見つけられたんですか?」
せっかく会話が逸れていたのに、また元の話題に戻す茉紀。心の中で「ばか!」と叫ぶ。
「それが全然わかんないんだよね。あるとすれば、まどかちゃんの元カレ絡みかなぁ」
1度天井を見上げてから、そんなことを言うものだから、私達3人は一斉に視線を逸らし、黙るのだった。
その様子を見て、彼はニヤリと笑うと「おー、ビンゴ」と嬉しそうに声を弾ませた。
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