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再会
【48】
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6月20日 木曜日
久しぶりに訪れたハイジさんの店は、相変わらずだが、ハイジさん自身は、黒髪で毛先だけが青く変わっていた。彼いわく、今流行っているからと、勧められるがまま承諾してしまったとのことだった。
しかし、全体的には黒い部分が占めているため、そんなに派手な印象ではない。長さも少し伸びていて、印象ががらりと変わった。
それでも似合っているから不思議だ。きっとどんなに奇抜な色でも、この人なら自分のものにしてしまうだろうと思った。
「とりあえず、ビールでいい?」
いつものように、私達の意見などお構いなしに、勝手にビールを注ぎ始める彼。以前、茉紀とあまねくんと来店した時と同じ席に座り、 ビールが出されるのを待った。
もしかしたら雅臣が数日後には釈放されるかもしれないと聞いたものだから、私達はあれから2日後の今日に急いで予定を合わせた。
茉紀もよく急遽、子供を預けられたものだ。あまねくんに至っては、明日もう1日仕事だというのに付き合ってくれて感謝しかない。
この店に行く前に、1度2人で会いたいねと言っていたけれど、予定よりも早く来店することになったために、それも叶わなくなった。それでも、同じ空間にいられて、一緒に外の空気を吸えるだけいい。
今日は、久しぶりに茉紀の家に遊びに行くと言う口実で家を出てきた。いつも残業で帰りの遅い父が帰ってくる前に抜け出してきたのだ。
ほとんど残業のない母には、本当のことを言って、口裏を合わせてもらえるよう頼んである。どこか頼りない母も、こういうところは抜かりない。失敗すれば、自分もあまねくんに会えなくなる可能性があるからだ。
まるで籠の中の鳥である私は、今とてつもなく外の世界に憧れている。
ビールが配られたところで乾杯し、3口一気に飲むと、久しぶりのアルコールは喉に沁みるようだった。ビールってこんなに美味しかったかな。
仕事もしてないくせに、この1杯が堪らなく美味しく感じるということは、それなりにストレスを抱えているのだろう。特にストレスなんてなくても美味しく感じるのかも知れないが。
「よく来てくれた! 待ちわびていたよ! 君達は、自分達が幸せになった途端、顔も見せなくなって」
まだ開店してそんなに時間は経っていないはずなのに、既に酔っているのかと思わせる程、声を張って言う彼。彼がシラフからこんな状態であることは百も承知だ。
あまねくんは、また始まったと言わんばかりに顔をしかめて、無言でビールを飲んでいる。このめんどくさそーにしてる顔も何気に好きなんだよな。
「ご無沙汰してしまってすみません」
「まどかちゃん、何もあまねくんが一緒じゃなきゃいけない理由なんてないんだからさ、1人で来たってよかったんだよ」
仏のような顔をしながらそう言うハイジさんに、「まどかさんが1人でくるわけないでしょ。危険だもん」と淡々とした口調で隣の彼は言う。
こんなに冷たい言い方をされているのに、ハイジさんは嬉しそうにしているのだから、あまねくんに会えたことが相当嬉しいのだろう。そんなハイジさんも何だか可愛らしい。
久しぶりに訪れたハイジさんの店は、相変わらずだが、ハイジさん自身は、黒髪で毛先だけが青く変わっていた。彼いわく、今流行っているからと、勧められるがまま承諾してしまったとのことだった。
しかし、全体的には黒い部分が占めているため、そんなに派手な印象ではない。長さも少し伸びていて、印象ががらりと変わった。
それでも似合っているから不思議だ。きっとどんなに奇抜な色でも、この人なら自分のものにしてしまうだろうと思った。
「とりあえず、ビールでいい?」
いつものように、私達の意見などお構いなしに、勝手にビールを注ぎ始める彼。以前、茉紀とあまねくんと来店した時と同じ席に座り、 ビールが出されるのを待った。
もしかしたら雅臣が数日後には釈放されるかもしれないと聞いたものだから、私達はあれから2日後の今日に急いで予定を合わせた。
茉紀もよく急遽、子供を預けられたものだ。あまねくんに至っては、明日もう1日仕事だというのに付き合ってくれて感謝しかない。
この店に行く前に、1度2人で会いたいねと言っていたけれど、予定よりも早く来店することになったために、それも叶わなくなった。それでも、同じ空間にいられて、一緒に外の空気を吸えるだけいい。
今日は、久しぶりに茉紀の家に遊びに行くと言う口実で家を出てきた。いつも残業で帰りの遅い父が帰ってくる前に抜け出してきたのだ。
ほとんど残業のない母には、本当のことを言って、口裏を合わせてもらえるよう頼んである。どこか頼りない母も、こういうところは抜かりない。失敗すれば、自分もあまねくんに会えなくなる可能性があるからだ。
まるで籠の中の鳥である私は、今とてつもなく外の世界に憧れている。
ビールが配られたところで乾杯し、3口一気に飲むと、久しぶりのアルコールは喉に沁みるようだった。ビールってこんなに美味しかったかな。
仕事もしてないくせに、この1杯が堪らなく美味しく感じるということは、それなりにストレスを抱えているのだろう。特にストレスなんてなくても美味しく感じるのかも知れないが。
「よく来てくれた! 待ちわびていたよ! 君達は、自分達が幸せになった途端、顔も見せなくなって」
まだ開店してそんなに時間は経っていないはずなのに、既に酔っているのかと思わせる程、声を張って言う彼。彼がシラフからこんな状態であることは百も承知だ。
あまねくんは、また始まったと言わんばかりに顔をしかめて、無言でビールを飲んでいる。このめんどくさそーにしてる顔も何気に好きなんだよな。
「ご無沙汰してしまってすみません」
「まどかちゃん、何もあまねくんが一緒じゃなきゃいけない理由なんてないんだからさ、1人で来たってよかったんだよ」
仏のような顔をしながらそう言うハイジさんに、「まどかさんが1人でくるわけないでしょ。危険だもん」と淡々とした口調で隣の彼は言う。
こんなに冷たい言い方をされているのに、ハイジさんは嬉しそうにしているのだから、あまねくんに会えたことが相当嬉しいのだろう。そんなハイジさんも何だか可愛らしい。
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