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再会
【38】
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「俺、やっぱりまどかさんと結婚したいから結城さんのことなるべく早く解決させたい」
「うん。裁判とかになったら、こっちの都合だけじゃ上手くいかなくなっちゃうけどね」
私も実家に戻るということで、今までみたいに自由にあまねくんが行き来できるわけじゃないと考えると、彼が恋しい。
毎日一緒にいられたら、とても安心するのに。
早く雅臣の判決が出て、平和が訪れればようやくあまねくんと結婚できる。
たった3ヶ月で結婚なんて早すぎるんじゃないかと考えたこともあったけれど、まさかこんなに手間取るなんて思っていなかった。
早めに行動してよかったのかもしれない。
私のアパートに到着し、中に入る。昼間の散らかったままの状態で時間が止まっている。
「さて、何からやる?」
タイムリミットが決まっているため、あまねくんは、スーツの上着を脱ぎながら腕捲りをして早速お片付けモードに突入している。
「あ、ごめん。ハンガーはもう段ボールに入れちゃったんだっけ」
彼の上着を指差しながら言う私。
「いいよ。どうせクリーニング出しちゃうから。少しくらい皺になっても大丈夫」
そう言いながら、そのままソファに上着を置いた。
「そう? それならいいけど」
それでも、皺にならないに越したことはない。無造作に置かれた上着をしっかり伸ばし、平らな状態でソファの上に置いた。
「本当にいいのに。後は何が残ってるの?」
「あのね、クローゼットの中の上の段と、洗面所の収納全部。高いところが届かないから、そっちからやってくれると助かる」
「わかった」
彼は微笑を浮かべて、頷いた。
私達はそれぞれ分担しながら荷造りを開始した。
あまねくんの手際がいいものだから、昼間自分でやった時よりも、彼の方が早い気がする。
全て片付け終わると、ようやく2人でソファーに座り込む。
ふぅと息をつき、自然とあまねくんの肩に頭を預けた。
彼もまた同じように頭を傾けたため、少しだけコツンと側頭部が当たる。
「まどかさん、もう帰っちゃうのか……」
「今日くらい、最後のお泊まりにすればよかったね」
「ね」
母には、今日は実家に帰ると昨日言ってしまってある。ベッドのシーツも剥がしてしまったし、浴室の用品も片付けてしまった。
あまねくんは明日仕事だし、時計は23:12を差している。
何もかも実家に戻る準備をしてしまった。
暫く彼に会えなくなるかと思うと、寂しくてたまらない。
「会いに行くから」
「うん」
「毎日連絡する」
「私も」
「差し入れも持ってく」
「映画がいいな。きっと数日も立てば暇だから」
「それはそうだね」
1週間の休みなんて、社会人になってからもらったことなどない。有給も欲しい時に取れないし、お盆休みもゴールデンウィークもない。いいとこ連休なんて3日間くらいで、長期の休みは学生以来だった。
いくら雅臣のことで忙しなくなるとはいえ、毎日活動的に動き回るわけではない。
何十時間も検察官と一緒にいるわけでもないし、あまねくんのお父さんと1日に何度も会うわけではない。
雅臣のことを考え続けたところで、すぐに有罪になるわけでもないし、一旦釈放がなくなるわけでもない。
最初こそは、新鮮な休みも、その内暇をもて余すようになるだろう。
律くんが言っていたように、職場を辞める手続きもしなければならないが、辞めてしまえばすることはない。
暇だとは思うが、色んなことがありすぎて体も心も疲弊しきっている。就活は、1ヶ月くらいゆっくりしてからにしよう。
「うん。裁判とかになったら、こっちの都合だけじゃ上手くいかなくなっちゃうけどね」
私も実家に戻るということで、今までみたいに自由にあまねくんが行き来できるわけじゃないと考えると、彼が恋しい。
毎日一緒にいられたら、とても安心するのに。
早く雅臣の判決が出て、平和が訪れればようやくあまねくんと結婚できる。
たった3ヶ月で結婚なんて早すぎるんじゃないかと考えたこともあったけれど、まさかこんなに手間取るなんて思っていなかった。
早めに行動してよかったのかもしれない。
私のアパートに到着し、中に入る。昼間の散らかったままの状態で時間が止まっている。
「さて、何からやる?」
タイムリミットが決まっているため、あまねくんは、スーツの上着を脱ぎながら腕捲りをして早速お片付けモードに突入している。
「あ、ごめん。ハンガーはもう段ボールに入れちゃったんだっけ」
彼の上着を指差しながら言う私。
「いいよ。どうせクリーニング出しちゃうから。少しくらい皺になっても大丈夫」
そう言いながら、そのままソファに上着を置いた。
「そう? それならいいけど」
それでも、皺にならないに越したことはない。無造作に置かれた上着をしっかり伸ばし、平らな状態でソファの上に置いた。
「本当にいいのに。後は何が残ってるの?」
「あのね、クローゼットの中の上の段と、洗面所の収納全部。高いところが届かないから、そっちからやってくれると助かる」
「わかった」
彼は微笑を浮かべて、頷いた。
私達はそれぞれ分担しながら荷造りを開始した。
あまねくんの手際がいいものだから、昼間自分でやった時よりも、彼の方が早い気がする。
全て片付け終わると、ようやく2人でソファーに座り込む。
ふぅと息をつき、自然とあまねくんの肩に頭を預けた。
彼もまた同じように頭を傾けたため、少しだけコツンと側頭部が当たる。
「まどかさん、もう帰っちゃうのか……」
「今日くらい、最後のお泊まりにすればよかったね」
「ね」
母には、今日は実家に帰ると昨日言ってしまってある。ベッドのシーツも剥がしてしまったし、浴室の用品も片付けてしまった。
あまねくんは明日仕事だし、時計は23:12を差している。
何もかも実家に戻る準備をしてしまった。
暫く彼に会えなくなるかと思うと、寂しくてたまらない。
「会いに行くから」
「うん」
「毎日連絡する」
「私も」
「差し入れも持ってく」
「映画がいいな。きっと数日も立てば暇だから」
「それはそうだね」
1週間の休みなんて、社会人になってからもらったことなどない。有給も欲しい時に取れないし、お盆休みもゴールデンウィークもない。いいとこ連休なんて3日間くらいで、長期の休みは学生以来だった。
いくら雅臣のことで忙しなくなるとはいえ、毎日活動的に動き回るわけではない。
何十時間も検察官と一緒にいるわけでもないし、あまねくんのお父さんと1日に何度も会うわけではない。
雅臣のことを考え続けたところで、すぐに有罪になるわけでもないし、一旦釈放がなくなるわけでもない。
最初こそは、新鮮な休みも、その内暇をもて余すようになるだろう。
律くんが言っていたように、職場を辞める手続きもしなければならないが、辞めてしまえばすることはない。
暇だとは思うが、色んなことがありすぎて体も心も疲弊しきっている。就活は、1ヶ月くらいゆっくりしてからにしよう。
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