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再会
【35】
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検察とのやりとりなど、専門的なことは全てあまねくんの父親が担ってくれることとなった。検察と話をする際にも一緒についてきてくれるようだし、1人で何か行動しなくていいことに安堵した。
裁判だ証言だなんて聞いたことのある言葉を並べてみたところで、実際にどのように展開していくのはわからない。
昨日帰宅してから自分なりに調べてみたものの、やはり国家資格が必要なだけあって詳しいことは理解できなかった。
しっかり読み込んで整理しないと、流れも把握できないだろう。
一通りの話が終わると、どっと疲れが押し寄せた。律くんは、ようやく夕食にありつけ、おばあちゃんは既に寝室に戻ってしまっていた。
時間にすれば1時間ほど話していただろうか。本来であれば、相談料も1時間1万円ほどかかるらしい。これは、自分で調べてみての結果だけれども。
それでも、弁護士2人に相談に乗ってもらうだなんて贅沢な話だ。全く知らない弁護士さんにビクビクしながら相談することを思えば、気持ち的にもとても安心できた。
実家に戻ってこいと言った父は、元々私の部屋だった場所を片付け始めていると母からメッセージが届いた。引っ越しを手伝ってもらいたいくらいだが、そちらの片付けもあるのだから仕方がない。
こんな状態で本当に明日の昼過ぎには引っ越しできるのだろうかと不安はあるが、やるしかない。なんせもう依頼してしまっているのだから。
その状況をあまねくんに伝えると「じゃあ、送るついでにちょっと荷造り手伝うよ」と言ってくれた。明日も朝から仕事なのに申し訳ないと思うが、クローゼットの上の方に仕舞い込んでしまった荷物も私では届かないため、ありがたい申し出だった。
今日、明日で片付けなければならないため、ありがたくお言葉に甘えさせていただくことにした。
「ねぇ、ほっぺ大丈夫だった?」
帰り際にこっそり律くんに聞く。前回叩いておいて、今日こんなにも相談に乗ってもらったのだ。さすがに知らん顔で帰るのも気が引けた。
「俺の心配より、自分の心配したらどうですか。女性なのに、傷が残ったら困るじゃないですか」
呆れた顔でそう言う彼。ここへ向かう前、あまねくんが呆れ返っていた表情を思い出す。
「まあ……そうなんだけど。最悪、化粧で隠すし……」
「そういう問題じゃないんだけど。俺の方は、前回の時に和解金もらったし」
彼は、自分の頬を人差し指の腹でとんとんと軽く叩く。私の頬にキスをしたことを言っているのだろう。思い出すと、体温が上昇する気がした。律くんは、深い意味はないと言っていたけれど、あれは和解金だったのか。
いや、対等ではない気がするけれど、本人は気にしている素振りはないので、心の中で小さく「ごめんね。ありがとう」と呟いてその件にそれ以上触れるのはやめた。
帰りの車中で、あまねくんの横顔を見る。車内は暗くて、窓から差し込む信号や街灯、店の灯りに照らされた時にだけ彼の表情を確認できる。
しかし、その表情からは、彼の考えまでは読み取れない。
「お父さんと律くんにお願いしてくれてありがとうね」
そっと声をかける。彼は、横目でこちらを見て「ううん。これで解決してくれればいいけど」と言った。
裁判だ証言だなんて聞いたことのある言葉を並べてみたところで、実際にどのように展開していくのはわからない。
昨日帰宅してから自分なりに調べてみたものの、やはり国家資格が必要なだけあって詳しいことは理解できなかった。
しっかり読み込んで整理しないと、流れも把握できないだろう。
一通りの話が終わると、どっと疲れが押し寄せた。律くんは、ようやく夕食にありつけ、おばあちゃんは既に寝室に戻ってしまっていた。
時間にすれば1時間ほど話していただろうか。本来であれば、相談料も1時間1万円ほどかかるらしい。これは、自分で調べてみての結果だけれども。
それでも、弁護士2人に相談に乗ってもらうだなんて贅沢な話だ。全く知らない弁護士さんにビクビクしながら相談することを思えば、気持ち的にもとても安心できた。
実家に戻ってこいと言った父は、元々私の部屋だった場所を片付け始めていると母からメッセージが届いた。引っ越しを手伝ってもらいたいくらいだが、そちらの片付けもあるのだから仕方がない。
こんな状態で本当に明日の昼過ぎには引っ越しできるのだろうかと不安はあるが、やるしかない。なんせもう依頼してしまっているのだから。
その状況をあまねくんに伝えると「じゃあ、送るついでにちょっと荷造り手伝うよ」と言ってくれた。明日も朝から仕事なのに申し訳ないと思うが、クローゼットの上の方に仕舞い込んでしまった荷物も私では届かないため、ありがたい申し出だった。
今日、明日で片付けなければならないため、ありがたくお言葉に甘えさせていただくことにした。
「ねぇ、ほっぺ大丈夫だった?」
帰り際にこっそり律くんに聞く。前回叩いておいて、今日こんなにも相談に乗ってもらったのだ。さすがに知らん顔で帰るのも気が引けた。
「俺の心配より、自分の心配したらどうですか。女性なのに、傷が残ったら困るじゃないですか」
呆れた顔でそう言う彼。ここへ向かう前、あまねくんが呆れ返っていた表情を思い出す。
「まあ……そうなんだけど。最悪、化粧で隠すし……」
「そういう問題じゃないんだけど。俺の方は、前回の時に和解金もらったし」
彼は、自分の頬を人差し指の腹でとんとんと軽く叩く。私の頬にキスをしたことを言っているのだろう。思い出すと、体温が上昇する気がした。律くんは、深い意味はないと言っていたけれど、あれは和解金だったのか。
いや、対等ではない気がするけれど、本人は気にしている素振りはないので、心の中で小さく「ごめんね。ありがとう」と呟いてその件にそれ以上触れるのはやめた。
帰りの車中で、あまねくんの横顔を見る。車内は暗くて、窓から差し込む信号や街灯、店の灯りに照らされた時にだけ彼の表情を確認できる。
しかし、その表情からは、彼の考えまでは読み取れない。
「お父さんと律くんにお願いしてくれてありがとうね」
そっと声をかける。彼は、横目でこちらを見て「ううん。これで解決してくれればいいけど」と言った。
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