【完結】美人過ぎる〇〇はワンコ彼氏に溺愛される

雪村こはる

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再会

【33】

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「と言っても、俺と奏は中学でやめたんです。当時はそこそこ技も使えたけど、継続してないと中々プライベートで他人に技を使うことなんてないでしょ? もう十年以上も前の話だから、俺も体が覚えてれば動けるかもねっていう程度です」

 私があまりにも驚いた顔をしていたのか、律くんは弁解するかのようにそう言った。だから律くんからは、そう言った気配が感じられないのかと納得させられた。しかし、あまねくんだって、失礼だけれどそんなに強そうにはみえない。

「まどかさん、俺のこと馬鹿にしてるでしょ?」

 あまねくんは、私の顔を覗き込んで目を細める。

「し、してないよ! 馬鹿になんて……ただ
あまねくんが……」

「強そうに見えないって言うんでしょ? いいよ、皆そう言うんだから」

 あ、拗ねちゃった……。時々こうやって子供っぽいんだから。

「合気道はね、子供でも女性でも高齢者でもできる武道なの。だから、相手の力量を見た目で量るのはそもそも間違ってるんだよ」

 珍しい。あまねくんが、こんなふうに何かを否定するのはあまりないことなのに。

「まあ、こんな偉そうなこと言っても俺2段までしかもってないんだけどね」

 頬を指で掻きながら、視線を外す彼。2段がどの程度で何段まであるのかは知らないけれど。

「大学受験だからって審査受けにいくの辞めただけでしょ。とにかく、襲われて困るのはあなたの方です。職場も辞められるのなら、辞めるのが賢明だと思いますよ」

 いつの間にか、律くんの視線がこちらに向けられており、ドキリとする。人の心配をしている場合じゃないと言わんばかりの表情をしていたからだ。

「そうですね。色々と都合はあるかと思いますが、可能なら辞めた方がいいでしょう。実家に戻られるということなので、暫くの間ひっそりと暮らしていれば見つかることはないでしょうし。ただ、まどかさんの学生時代の友人に近付いて実家の場所を聞き出すこともあるので、注意して下さい」

 父親も真剣な口調で話に加わる。

「……そこまでしますか?」

「何があるかわかりません。ストーカー行為をする人間は、想像もつかないようなことを平気でしますから。出身校が知られていれば危険です。個人情報がわかるものは、なるべく隠して下さい。例えば車もナンバーを覚えられているのなら、それで家が特定されることがあります」

「そんな……。そう考えると、個人の居場所を特定するってそんなに難しいことじゃないんですね……」

「そうです。とにかくそういった人間は執念もすごいですから」

「でも……明日で勾留期間が終わってしまうんですよね? 明日までに全てをこなすなんて……」

「勾留期間が終わって、本人が保釈請求をすれば出てこられます。その申請があって検察が動くので、そこから約2日はかかるでしょう。なので、早くても明々後日になります」

「そうなんですか……」

 ほんの少しだけでも期間が伸びてほっとした。しかし、それだってたったの2日。こんなに危険がある人物を一旦野放しにするなんてどうかしている。

「不安でしょう。友人に刑事がいるので紹介します。既に生活安全課には行かれましたか?」

「はい。殴られてすぐ。案内されて、殴られた診断書も欲しいと言われたので、今日の午前中の内に受診して提出してあります。現行犯で逮捕されているので、ストーカー規制のサインはとれるだろうとのことでした」

「そうですね。それを違反してストーカー行為をすれば2年以下の懲役または200万円以下の罰金になります」

「それでもたったの2年なんですね……」

 2年と聞けば長いような気もするけれど、2年後に再び命の危険性があると考えれば、それはとてつもなく短い期間のように感じた。
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