【完結】美人過ぎる〇〇はワンコ彼氏に溺愛される

雪村こはる

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再会

【27】

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「そうよ。だから、まどかと結婚するなら、ちゃんと幸せにしてくれないと」

「はい。心得ています」

「なんて、あまねくんなら大丈夫ね。まどかがあんなに必死にお父さんにお願いするなんてあまりないことだし」

 母は、私の顔を見てクスクスと笑っている。父が頑固なのは今に始まったことではない。
 頼ってほしいと言うわりに、実際に何か頼み事をすればグズグズ言うのは目に見えている。だから極力私は、自分のことは自分で何でもやってきたし、父に頭を下げることはあまりなかった。
 そんな父でも、就職して自分で生活ができるようになるまで育ててもらった恩はあるし、あまねくんのことを認めて欲しい気持ちもあった。だから、頭を下げてでもちゃんと了承を得て同棲も結婚もしたいと思った。

「私、あまねくんと一緒にいられるように頑張るよ。もし裁判になるなら、あの人の罪が1番重くなるように証言するし」

「うん。お母さんも色々調べてみる。まさか身内にこんな事件が起こるなんて考えたこともないから、法律なんて全然知らないしね」

「そうだね。私も、あまねくんの家族に頼るばかりじゃなくて、自分でも勉強してみるよ」

「うん。それと、顔はちゃんと冷やしなさいよ。来た時よりも顔が大きくなってるわよ」

 そう言われて、思わず頬を触る。あんなにスキンケアも頑張ってきたのに。肌が荒れないように、ふきでもの(ニキビと呼んでいいのは若い内だけだと茉紀に言われた)ができないように気を付けてきたのに、あの男に殴られたせいでその努力が一気に水の泡になった。

「とりあえず、腫れがひくまでは誰かに勤務変わってもらうよ。マスクしてても横から見えそうだし」

「それがいいわ。食べ物は大丈夫?」

「明日の朝ごはんくらいだし、適当に自分でなんとかするよ」

 口を動かす度に痛みは増大するし、口の中が切れてしまっているため、夕食もあまりすすまず、母が急遽雑炊を作ってくれたのだった。
 ほとんど噛まずに食べられるからありがたかった。

「そう。じゃあ、気を付けて帰るのよ」

 実家に戻るという話でまとまったが、荷物は全てアパートにあるため、本日はアパートに戻ることにした。
 適当に荷物をまとめて明日、実家に帰る予定だ。
 とりあえずあまねくんから律くんに電話をかけてもらったところ、勾留期間は72時間と言われた。雅臣が否認し、弁護士をつけたら実刑判決が出るまで一旦釈放される可能性が高いことを教えてくれた。
 そのため、私の引っ越しも2、3日で済ませなければならなくなったのだ。

 私の中ではもっと長い時間勾留されているイメージだったため、時間がないことにも焦り始めていた。
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