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再会

【15】

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「お前、最低だな」

「自分ばっかり正義のヒーロー気取るなよ。汚ない手使って俺のこと嵌めたくせに」

「黙れ、グズ。スーパーにお前の車見つけて、警察は呼んである。じきに到着するはずだから」

「は? 面倒なことすんなよ。じゃあ、とりあえず俺は帰るわ」

 雅臣は飄々とした態度で立ち上がり、おそらく荷物を取りに行くため、寝室へと向かった。

「まどかさん、大丈夫?」

 その間に身を屈めて、私の顔を覗き込む。

「怖かった……。来てくれてありがとう」

「うん。ちょっと待ってて。現行犯じゃないとちょっと難しくなりそうだから」

 そう言って眉を下げて優しく微笑むあまねくんは、私の大好きな彼。自分が知らなかった一面を彼が持っていたと知り、驚きはしたが、私のためにあんなに怒ってくれたのかと思うと、嬉しさの方が打ち勝つのだった。

 雅臣の後をついていき、寝室に籠ったあまねくん。引き戸をガラッと閉める音がして、暫く静寂が起こる。
 リビングからでは丁度死角で寝室は見えない。ましてや、ドアまで閉められてしまっては、何が起きているのか全くわからない。
 易怒的な雅臣と2人きりの空間だなんて大丈夫だろうかと不安になる。

 様子を見に行こうかと立ち上がった瞬間、寝室のドアが開き、「まどかさん、何か縛るものある?」とあまねくんの声がした。

「し、縛るもの!?」

 なぜかあまねくんの声しかせず、私は慌てながらも、雑誌を束ねるための紙紐を思いつき、それを持って寝室に向かった。
 ドアの前で急に足を止めたのは、雅臣が寝室の床に横たわっていたから。
 目を閉じて、身体中の力が抜けている。

「え? え?」

「殺してないから大丈夫。ちょっと気を失ってるだけだから、その内目を覚ます。暴れると困るから、縛っておこう」

 清々しいくらいの笑顔であまねくんは、そう言う。一体この数十秒で何が起こったのだろう。謎は深まるばかりだったけれど、あまねくんを怒らせるのはやめようと小さく心の中で誓った。

 何重にも頑丈に手足を縛り、リビングまで引きずってきた。まるで、遺体を遺棄するために共謀しているかのようだった。私は、被害者なのに、悪いことをしている気分になる。

「顔、大丈夫? 殴られたの1回だけ?」

「うん。まだじんじんする……」

「手の痕しっかり残っちゃってるもん。可哀想に……口の端も切れてるね」

「口の中も切れてるの」

 あまねくんが傍にいてくれる安心感からか、甘えるようにそう言えば、彼は伸びた雅臣を一瞥して「殺してぇ……」と言った。

「こ、殺すのはダメだよ!」

「……そうだね。俺まで捕まったら、まどかさん守れなくなっちゃうからね」

「それだけじゃないんだけど……」

「でも、やっぱり1人で帰ってこなくて正解だったね。ここは、引っ越さないとね」

 あまねくんは、私の部屋をぐるっと見渡しながら言った。

「……やっぱり引っ越さないとダメなの? あの、あまねくんと一緒に住みたくないとかじゃなくてね」

「わかってるよ。多分、住居侵入と傷害と強姦未遂全部合わせてもそんなに大した罪にならないんだよね……。懲役でいけば3年くらいついた気がするけど、もし罰金刑でこの人がまだ金持ってるなら、多分金で出てこれる」

「そんな……」

「おそらくストーカー規制はかかるとしても、ずっと勾留所にってわけにはいかないと思う」

 彼も、納得いかないと言った顔で、未だに目覚めない雅臣を見て、大きな溜め息を溢した。
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