上 下
107 / 289
再会

【7】

しおりを挟む
「そう……。でも、何でそんなことわかるの?」

「んー……まあ、本当は知っちゃいけない情報だったりもするから、その辺は勘弁して」

 彼は苦笑している。本当は知っちゃいけないと言うことは、恐らく内部の情報なのだろう。
 あまねくんのことだから、友達に警察や裁判関係の友人がいるのかもしれない。その情報を私情で聞き出したとしたら、個人情報の漏洩と言われてしまっても仕方がない。
 私は、静かに頷き、それ以上詮索するのはやめた。

 私も、雅臣にどんなふうに待ち伏せされていたのか、その後の彼の態度や行動についても話した。

「怖かったね。無事でよかった。まどかさん、暫く日勤?」

「うん。日勤、日勤、夜勤で休みだよ」

「そっか。その休みの日って顔合わせの日だよね?」

「うん」

「……何か、とんでもないことになっちゃったね。両親にそのこと言っておかなくて大丈夫?」

「それはいいや……。私、雅臣と付き合ってたことも父には言ってないの。まだ直接何かされたわけでもないし、これ以上大事になっても困るからさ」

「そっか……。とりあえず、仕事は暫く俺が送迎するよ」

「え!?」

 彼の急な提案に、つい大きな声を上げてしまった。今日は泊まらせてもらうにしても、ここから自分で出勤させてもらえばいいと思っていたから。

「だってまどかさん、車も知られちゃってるんでしょ? 仕事中に張り込まれて、ここまで後つけられても困るし」

「それは確かに……」

 私の家のみならず、この家まで知られるわけにはいかない。
 彼には申し訳ないが、その場でスケジュールを確認してもらい、日勤はいいとして、夜勤は、外回りの時に抜けて来てくれることになった。

 ここまでしてもらって申し訳ない気持ちでいっぱいだけれど、雅臣が何を企んでいるのかわからない以上、他に方法はなかった。
 雅臣も、暫く私の姿が見つけれなければ諦めるだろう。
 出退勤の時にあまねくんが一緒にいてくれると思えば、私も安心できた。

 彼と2人きりの空間だというのに、話は雅臣のことばかりで、甘い時間など今の私達には皆無だった。
 シビアな表情を浮かべて、あまねくんも「俺のこと恨んでるかもしれないから、俺が接触すると余計にまどかさんに危険が及ぶかもしれないんだよね……」なんて言っている。

 どちらにしても、私があのアパートに住み続けるのは危険だ。これを機にあまねくんの家で同棲を始めたらどうかと彼からの提案もあった。
 それも含めて顔合わせの時に、両親に挨拶させてもらうなんて男らしいことを言ってくれたものだから、何とか顔合わせまでの時間は2人で乗り越えようと思えたのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

妻がヌードモデルになる日

矢木羽研
大衆娯楽
男性画家のヌードモデルになりたい。妻にそう切り出された夫の動揺と受容を書いてみました。

初めてなら、本気で喘がせてあげる

ヘロディア
恋愛
美しい彼女の初めてを奪うことになった主人公。 初めての体験に喘いでいく彼女をみて興奮が抑えられず…

恋人の水着は想像以上に刺激的だった

ヘロディア
恋愛
プールにデートに行くことになった主人公と恋人。 恋人の水着が刺激的すぎた主人公は…

これ以上ヤったら●っちゃう!

ヘロディア
恋愛
彼氏が変態である主人公。 いつも自分の部屋に呼んで戯れていたが、とうとう彼の部屋に呼ばれてしまい…

結構な性欲で

ヘロディア
恋愛
美人の二十代の人妻である会社の先輩の一晩を独占することになった主人公。 執拗に責めまくるのであった。 彼女の喘ぎ声は官能的で…

君の浮気にはエロいお仕置きで済ませてあげるよ

サドラ
恋愛
浮気された主人公。主人公の彼女は学校の先輩と浮気したのだ。許せない主人公は、彼女にお仕置きすることを思いつく。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

♡蜜壺に指を滑り込ませて蜜をクチュクチュ♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート♡年末まで毎日5本投稿中!!

処理中です...