【完結】美人過ぎる〇〇はワンコ彼氏に溺愛される

雪村こはる

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ラポール形成

【39】

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「ちょっ、律くん!」

 半ば引きずられるようにして、平面のところまで登った。

「ほら、あっという間」

 そう言って彼はすぐに私の手を離し、家までの道を歩き始める。
 辺りを確かめずにここまで辿り着いたものだから、ここから彼の家までの帰路がわからずおとなしく彼の後ろを着いていく。

「ありがとう……」

「どういたしまして。……あなたに言おうかどうか迷ったんですけど……」

「ん?」

来栖くるす瑠美るみってわかります?」

「えー……と聞いたことあるなぁ……」

「今奏が表紙を飾っている専属雑誌の、前の表紙のモデルです」

「あー……くるみんって呼ばれてた子かな?  確か律くんと同じくらいか少し下じゃなかった?」

「そうです。奏がモデルになったばかりの頃、地元が同じだからってすぐに仲良くなったみたいです」

「へぇ……」

 何で急にそんな話を始めたのか不思議だったが、私は相槌をうちながら彼の話を聞くことにした。

「来栖瑠美は、周の1個上で、同じ高校に通っていたみたいです」

「え?」

「細かい話は要約しますけど、彼女は周を紹介して欲しくて奏に近付いたみたいでした」

「……そう」

「奏も右も左もわからないモデル界で親切にしてくれて、しかも当時憧れだった雑誌の表紙を飾っている彼女のことがとても好きだったようです。だから奏は、彼女と周がうまくいけばいいと思って周を紹介した」

 いくら昔の話とはいえ、あまねくんに女の子を紹介した話なんて正直聞きたくはなかった。しかも、雑誌の表紙を飾る程の人気モデルだ。
 私の胸はざわざわと落ち着かない感情が沸き上がり始めた。

「当時の周はようやく税理士資格をとって、税理士事務所に入社し、半年が経った頃。覚えることも多くて、勉強もしながら忙しい日々を送っていたから恋愛どころじゃなかったんです」

「そう……だよね」

「連絡はとっていたみたいだけど、2人が付き合うことはなかった」

 それを聞いて安堵した。あまねくんの元カノがモデルだっただなんて、そんな事実は知らなくてもいい。

「ただ、来栖瑠美にとってはそれが面白くなかったらしくて、仲が良かったモデル仲間と一緒に奏に嫌がらせをするようになったんです」

「え!?」

「奏にしてみれば、それらのモデルは全員先輩だし、泣き寝入りするしかなかった。決まっていた仕事も、仲のいい雑誌の編集者やカメラマンにあることないこと吹き込んで、仕事自体がなくなったこともありました」

「何それ……酷い!」

「実家に帰ってきてはメソメソ泣いていた奏に母は、自分で決めた道なんだから泣き言言わずに仕事を取り返して来なさいって追い出したんです」

「ダリアさんが!?」

 あの優しいダリアさんが、娘を突き放すようなことを言うだなんて信じられなかった。
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