【完結】美人過ぎる〇〇はワンコ彼氏に溺愛される

雪村こはる

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ラポール形成

【33】

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「奏!  おばあちゃんにそんな言い方しないの」

「いつまでも退かない方が悪いでしょ!  そんなに奥にいるからトイレ間に合わなくて漏らすんだよ!  ほんと最低!  きったない!」

 家族の誰から聞いたのか、そんなことまで本人に言う始末。
 さすがにそれは言い過ぎだと私も我慢の限界だった。
 ダリアさんが「奏!」ともう1度大きく名前を呼ぶ中で「奏ちゃん、それは酷いよ。おばあちゃんに謝って」とつい言ってしまった。

「はぁ!?   部外者のくせにうちの家族のことに口出しすんの!?  ウザイんだけど!」

「私は部外者だけど、おばあちゃんにそんな酷いこと言って欲しくない」

「あー、うるさ。勝手にひとんち上がりこんで説教かよ」

 気怠そうに髪をかき上げながらそう言う彼女。全く耳を貸す気はないらしい。

「はいはい。喧嘩をしないの。私が悪かったよ。まどかちゃんを怒らないで、あかね」

 おばあちゃんは立ち上がり、席を移動しようとする。一瞬の違和感に気付いた瞬間、「私は奏だよ!  あんたの娘じゃない!」奏ちゃんがそう叫んで、持っていた小振りのバッグをおばあちゃんの足元に投げつけた。

「なんてことするの!」

 見かねたダリアさんがキッチンからこちらへ駆けつけ、おばあちゃんの元に近寄った。
 怪我がないかズボンの裾を上げて確認している。

「ねぇ、奏ちゃん。当たって怪我でもしたらどうするの?  そんなに声を荒げて言うことでもないでしょ?」

 彼女の肩に手を置くと、「触らないで!  あんたなんかに何がわかんの!」と言いながら手を叩かれた。

「奏!  まどかちゃんに謝りなさい!」

「何よ……皆してまどかちゃん、まどかちゃんって……いつからこの家の娘はこの人になったのよ!」

 彼女は顔を真っ赤にさせ、ヒステリックに叫んだかと思うと、その場から走って玄関の方へ向かった。

「ちょっと!  奏!」

 ダリアさんは、声をかけるがおばあちゃんの様子も気になるようで、その場から離れられずにいる。

「私、追いかけてきます」

 咄嗟にそう言って、考えるよりも先に体が動いた。

「……放っておけばいいのに」

 静かな律くんの声がした気がした。
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