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ラポール形成
【29】
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「こんな綺麗な王子様、どこで拾うわけ?」
「拾ってないよ! 落ちてたわけでもあるまいし!」
「なーんで、こんなイケメンがあんたなんか選んだんだろうね」
「仮にも妹に言う言葉? 偶然出くわすことが続けてあったから、運命感じたって言ってたんだよ?」
「乙女かよ」
今度は姉が顔をしかめる。時々昔の癖が出て、言葉遣いも荒くなる。
真の姉の姿を、生徒達に見せてやりたいくらいだ。
「それに、私がテレビ出てたの見てたって言ってたし……」
「ふーん。あの時よりだいぶ老けたと思うけど、あんただって気付いたんだ?」
「老けてない! 落ち着いたって言ってよ! まだ32だもん!」
「ついこの間、33になったでしょうが。でも、5つも年下って言わなかった? ……当時学生じゃない? その子」
「うん。大学生だったって言ってたよ。初めは私だって気付いてなかったけど、昔の写真を見せる機会があって、それで気付いたみたい」
「ふーん。確か、まどかが出演してるの全部録画してDVDに焼いてあるよ」
「え!?」
「あの頃、Blu-rayが出たばっかでさ。お父さんが全部録画するために、大容量のを買うんだって張り切ってたっかい金出して買ってたよ」
「そうだったっけ? あの時まだ私実家にいたはずだけど、覚えてないなぁ」
父がそんなに張り切る印象もないし、まさかこの家でも録画されているとは思ってもみなかった。
「DVD探してみよ。お母さんに聞けばわかるかな」
私の話など聞いていない姉は、首を傾げている。
「もういいよ。あまねくんも探してみるとか言ってたし、本当恥ずかしいからやめて」
「彼、録画までしてたの?」
「そうらしい」
「へぇ……あんた、地元じゃファン多かったもんね。職場までこられて大変だったじゃん」
「うん。変な人もいたしね」
広報に載ったのも、地元の職業案内がきっかけだし、当然私が勤める施設名も掲載されてしまっていた。
テレビで人気が出てからは、ネットに職場が搭載されてしまい、顔も知らないファンの人達に待ち伏せされることもあった。
当時は姉に貰った黒髪のウィッグを被り、メガネにマスクで出退勤していた。
施設の作業服で出入りしていれば意外とバレずに済んだが、利用者さんたちの家族にも迷惑をかけてしまった。
施設長は、自分の紹介だったからと私を責めることもなく、車も職員駐車場ではなく出入口のすぐに停めるよう配慮してくれた。
今思い出しても、鳥肌が立つ。
私は、やっぱり目立たずひっそりと生きたい。いつも誰かに見られている仕事は気も遣うし、精神がすり減る気がするから。
「拾ってないよ! 落ちてたわけでもあるまいし!」
「なーんで、こんなイケメンがあんたなんか選んだんだろうね」
「仮にも妹に言う言葉? 偶然出くわすことが続けてあったから、運命感じたって言ってたんだよ?」
「乙女かよ」
今度は姉が顔をしかめる。時々昔の癖が出て、言葉遣いも荒くなる。
真の姉の姿を、生徒達に見せてやりたいくらいだ。
「それに、私がテレビ出てたの見てたって言ってたし……」
「ふーん。あの時よりだいぶ老けたと思うけど、あんただって気付いたんだ?」
「老けてない! 落ち着いたって言ってよ! まだ32だもん!」
「ついこの間、33になったでしょうが。でも、5つも年下って言わなかった? ……当時学生じゃない? その子」
「うん。大学生だったって言ってたよ。初めは私だって気付いてなかったけど、昔の写真を見せる機会があって、それで気付いたみたい」
「ふーん。確か、まどかが出演してるの全部録画してDVDに焼いてあるよ」
「え!?」
「あの頃、Blu-rayが出たばっかでさ。お父さんが全部録画するために、大容量のを買うんだって張り切ってたっかい金出して買ってたよ」
「そうだったっけ? あの時まだ私実家にいたはずだけど、覚えてないなぁ」
父がそんなに張り切る印象もないし、まさかこの家でも録画されているとは思ってもみなかった。
「DVD探してみよ。お母さんに聞けばわかるかな」
私の話など聞いていない姉は、首を傾げている。
「もういいよ。あまねくんも探してみるとか言ってたし、本当恥ずかしいからやめて」
「彼、録画までしてたの?」
「そうらしい」
「へぇ……あんた、地元じゃファン多かったもんね。職場までこられて大変だったじゃん」
「うん。変な人もいたしね」
広報に載ったのも、地元の職業案内がきっかけだし、当然私が勤める施設名も掲載されてしまっていた。
テレビで人気が出てからは、ネットに職場が搭載されてしまい、顔も知らないファンの人達に待ち伏せされることもあった。
当時は姉に貰った黒髪のウィッグを被り、メガネにマスクで出退勤していた。
施設の作業服で出入りしていれば意外とバレずに済んだが、利用者さんたちの家族にも迷惑をかけてしまった。
施設長は、自分の紹介だったからと私を責めることもなく、車も職員駐車場ではなく出入口のすぐに停めるよう配慮してくれた。
今思い出しても、鳥肌が立つ。
私は、やっぱり目立たずひっそりと生きたい。いつも誰かに見られている仕事は気も遣うし、精神がすり減る気がするから。
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