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ラポール形成
【28】
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「お母さんから聞いたよ。あんたも顔合わせするんだって?」
「うん。あまねくんがうちにくるだけだけど。お姉ちゃん、6月9日暇?」
「暇って何よ。暇なわけないでしょ。でもまあ、こっちも顔合わせに時間作ってもらったわけだし、私だってそれくらい付き合うわよ」
「ありがと」
「うん。それより、あれからちゃんと彼とは話をしたの?」
姉と会ったのは、あのレストランの日以来だ。姉にも、菅沼さんにもあまねくんの気持ちも考えろと怒られた日。
昨日もなんだかんだ姉と話す時間はなかった。あの後、あまねくんを泣かしてしまったことを告白した。姉は、腹を抱えて笑い転げている。
「ねぇ、笑い事じゃないから」
「わかっ……て。ははっ……可愛い彼氏だね……」
最後まで息が続かなくて、ぷるぷると震えている。こちらは本気で彼に申し訳ないことをしたと反省しているというのに、なんて失礼なんだ。
「あまねくんと会ってもその話しないでよね!? お姉ちゃんだから言ったんだよ!?」
「わかって……る」
まだ笑っている。
姉にもらったAMELIAの紙袋も要因の1つであると聞いて余計に笑いが止まらないようだ。そんなに笑ってお腹の子は大丈夫だろうか。
「菅沼さんのこと見て、大人で優しそうな人だねって言ってたよ」
「それで余計やきもち妬いちゃったか。可愛いなぁ、あまね氏」
「ほんと、からかわないで」
「はいはい、ごめんね。お姉ちゃんは、まどかの味方だから、お父さん説得してあげるからさ」
「本当!?」
やっぱり姉は、子供の頃から私の味方だ。困った時の姉頼み。
今回は母も私の味方……もといあまねくんの味方だし、完全に優勢だ。一家の承諾は確定も同然だった。
「それで、さっきは何をしてたわけ? 大事そうにスマホ抱えちゃって」
私の目の前にしゃがみ込んだ姉は、私の許可もなくスマホを取り上げた。
既に暗くなってしまっている画面を点け、これまた勝手に人の人差し指を掴んで指紋認証させた。
こんな堂々とした盗み見があるだろうか。
仮にも子供達に教育する立場の人間がこんな道徳に反した行いをしていいものか。顔をしかめているうちに「誰、これ? 」と姉が呟く。
「あまねくん」
きっとまだ彼の寝顔のままの画面だろう。
「え? 女の子じゃん。想像してたのと違う」
「それ、本人気にしてるからやめて。どんな想像してたわけ?」
「なんか、子犬みたいにプルプルしてて、もっと冴えなくて芋っぽいの」
「もはや悪口だからね」
そりゃあ、菅沼さんとはタイプが違うけれど、それにしたってその想像は酷い。
「あんた、昔っから付き合う男芋っぽいのばっかじゃない 」
「は!? そんなことないし!」
「あるよ。見た目気にしないのはストライクゾーン広がっていいのかもしれないけどさ、だからって逆にこれはないわ」
私のスマホを指で摘まんで、ひょいっとこちらに投げて寄越した。
物の扱いまで雑だ。私はそれを両手で挟み込むようにして受け止め、目を細めて姉を見つめた。
「うん。あまねくんがうちにくるだけだけど。お姉ちゃん、6月9日暇?」
「暇って何よ。暇なわけないでしょ。でもまあ、こっちも顔合わせに時間作ってもらったわけだし、私だってそれくらい付き合うわよ」
「ありがと」
「うん。それより、あれからちゃんと彼とは話をしたの?」
姉と会ったのは、あのレストランの日以来だ。姉にも、菅沼さんにもあまねくんの気持ちも考えろと怒られた日。
昨日もなんだかんだ姉と話す時間はなかった。あの後、あまねくんを泣かしてしまったことを告白した。姉は、腹を抱えて笑い転げている。
「ねぇ、笑い事じゃないから」
「わかっ……て。ははっ……可愛い彼氏だね……」
最後まで息が続かなくて、ぷるぷると震えている。こちらは本気で彼に申し訳ないことをしたと反省しているというのに、なんて失礼なんだ。
「あまねくんと会ってもその話しないでよね!? お姉ちゃんだから言ったんだよ!?」
「わかって……る」
まだ笑っている。
姉にもらったAMELIAの紙袋も要因の1つであると聞いて余計に笑いが止まらないようだ。そんなに笑ってお腹の子は大丈夫だろうか。
「菅沼さんのこと見て、大人で優しそうな人だねって言ってたよ」
「それで余計やきもち妬いちゃったか。可愛いなぁ、あまね氏」
「ほんと、からかわないで」
「はいはい、ごめんね。お姉ちゃんは、まどかの味方だから、お父さん説得してあげるからさ」
「本当!?」
やっぱり姉は、子供の頃から私の味方だ。困った時の姉頼み。
今回は母も私の味方……もといあまねくんの味方だし、完全に優勢だ。一家の承諾は確定も同然だった。
「それで、さっきは何をしてたわけ? 大事そうにスマホ抱えちゃって」
私の目の前にしゃがみ込んだ姉は、私の許可もなくスマホを取り上げた。
既に暗くなってしまっている画面を点け、これまた勝手に人の人差し指を掴んで指紋認証させた。
こんな堂々とした盗み見があるだろうか。
仮にも子供達に教育する立場の人間がこんな道徳に反した行いをしていいものか。顔をしかめているうちに「誰、これ? 」と姉が呟く。
「あまねくん」
きっとまだ彼の寝顔のままの画面だろう。
「え? 女の子じゃん。想像してたのと違う」
「それ、本人気にしてるからやめて。どんな想像してたわけ?」
「なんか、子犬みたいにプルプルしてて、もっと冴えなくて芋っぽいの」
「もはや悪口だからね」
そりゃあ、菅沼さんとはタイプが違うけれど、それにしたってその想像は酷い。
「あんた、昔っから付き合う男芋っぽいのばっかじゃない 」
「は!? そんなことないし!」
「あるよ。見た目気にしないのはストライクゾーン広がっていいのかもしれないけどさ、だからって逆にこれはないわ」
私のスマホを指で摘まんで、ひょいっとこちらに投げて寄越した。
物の扱いまで雑だ。私はそれを両手で挟み込むようにして受け止め、目を細めて姉を見つめた。
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