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愛情
【50】
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「あ……そういえば、作業着……。お風呂入ったのにごめんね。これ、すごく汚い」
不意に現実に引き戻され、上着の裾を握って言った。もしかしたら排泄物がついているかもしれないのに。
業者がクリーニングしてくれればいいのだけれど、うちの施設では各自で洗濯となっていた。
基本は私服できて、更衣室で作業着に着替え、帰りは私服に着替えて帰ることになっている。しかし、ポロシャツに綿パンツという服装は、特に目立ちもせず施設名が入っているわけでもないため、多くの職員は作業着で出勤し、そのまま帰宅していた。
私も、着替えていたのは新人の頃だけで、今では汚れた体で私服に袖を通すのが嫌で、その手法をとっていた。
「いいよ、別に」
「本当に汚いから着替えた方がいいよ」
「そこまで言う?」
彼は笑ってしまっている。
「まどかさんもシャワー浴びる?」
「うん……着替え貸してくれる?」
「待ってて」
彼は立ち上がると、キッチンを通りすぎて、寝室の方へと向かっていった。すぐに上下のスウェットを持って来てくれてた。
何度か使用したことのある彼の浴室に一緒に行く。
「まどかさんがあんまり汚い、汚い言うから俺ももう1回シャワー浴びようかな」
彼は上着を脱ぎながらそう言う。程よくついた筋肉が綺麗で、少し割れた腹筋に目がいく。
「……一緒に入る?」
あんなに恥ずかしくて嫌だった筈なのに、今ではシャワーを浴びるための数十分間離れる方が嫌な気がして、そんなことを口走ってしまった。
「え……? どうしたの? 俺とはもうお風呂入らないんじゃなかった?」
腰を屈めて、意地悪そうな表情で私と目線を合わせる。
「だ、だって……」
「だって?」
「……もうちょっと一緒にいたい……」
「……あんまり素直過ぎるのも困るな……。余裕なくなりそ」
あまねくんは、右手で口元を多い、頬を赤らめた。いつも赤くなってるとからかわれるのは私の方で、こんなふうに照れている彼を見るのは初めてかもしれない。
今まで見たことのない表情を知れたことが、一緒にお風呂に入る羞恥心よりも勝る。
彼にもっと喜んでもらいたくて、彼の望むものを叶えてあげたいと思った。恥ずかしいけれど、彼の前で1枚ずつ服を脱ぐ。
「何回も見てるけどさ……恥ずかしそうに脱がれると……悪いことさせてる気分になる」
肘や腕を使って、ところどころ隠しながら服を脱いでいくと、彼はそう言いながら、時折視線を外した。
「……恥ずかし……けど、一緒に入る……」
「うん……。そうだ、俺が頭洗ってあげるね」
「頭?」
今度は一昨日とは逆に、私が前に座わらされ、髪を洗ってくれた。
美容院以外で他人に頭を洗ってもらうことなどなくて新鮮だった。もちろん美容師さん程のスムーズさはないけれど、洗いにくそうにしながらも丁寧に洗い上げてくれた。
私が顔を洗っている間に、彼は自身の体をもう一度洗っていた。それが終ると私の頭を洗っている間にお湯張りを始めた湯に浸かってしまった。
恥ずかしながら、一昨日のように身体中を撫で回されるんじゃないかなんて考えていたものだから、彼から渡されたナイロンのタオルを抱えてそろそろと彼の方に目を向けた。
不意に現実に引き戻され、上着の裾を握って言った。もしかしたら排泄物がついているかもしれないのに。
業者がクリーニングしてくれればいいのだけれど、うちの施設では各自で洗濯となっていた。
基本は私服できて、更衣室で作業着に着替え、帰りは私服に着替えて帰ることになっている。しかし、ポロシャツに綿パンツという服装は、特に目立ちもせず施設名が入っているわけでもないため、多くの職員は作業着で出勤し、そのまま帰宅していた。
私も、着替えていたのは新人の頃だけで、今では汚れた体で私服に袖を通すのが嫌で、その手法をとっていた。
「いいよ、別に」
「本当に汚いから着替えた方がいいよ」
「そこまで言う?」
彼は笑ってしまっている。
「まどかさんもシャワー浴びる?」
「うん……着替え貸してくれる?」
「待ってて」
彼は立ち上がると、キッチンを通りすぎて、寝室の方へと向かっていった。すぐに上下のスウェットを持って来てくれてた。
何度か使用したことのある彼の浴室に一緒に行く。
「まどかさんがあんまり汚い、汚い言うから俺ももう1回シャワー浴びようかな」
彼は上着を脱ぎながらそう言う。程よくついた筋肉が綺麗で、少し割れた腹筋に目がいく。
「……一緒に入る?」
あんなに恥ずかしくて嫌だった筈なのに、今ではシャワーを浴びるための数十分間離れる方が嫌な気がして、そんなことを口走ってしまった。
「え……? どうしたの? 俺とはもうお風呂入らないんじゃなかった?」
腰を屈めて、意地悪そうな表情で私と目線を合わせる。
「だ、だって……」
「だって?」
「……もうちょっと一緒にいたい……」
「……あんまり素直過ぎるのも困るな……。余裕なくなりそ」
あまねくんは、右手で口元を多い、頬を赤らめた。いつも赤くなってるとからかわれるのは私の方で、こんなふうに照れている彼を見るのは初めてかもしれない。
今まで見たことのない表情を知れたことが、一緒にお風呂に入る羞恥心よりも勝る。
彼にもっと喜んでもらいたくて、彼の望むものを叶えてあげたいと思った。恥ずかしいけれど、彼の前で1枚ずつ服を脱ぐ。
「何回も見てるけどさ……恥ずかしそうに脱がれると……悪いことさせてる気分になる」
肘や腕を使って、ところどころ隠しながら服を脱いでいくと、彼はそう言いながら、時折視線を外した。
「……恥ずかし……けど、一緒に入る……」
「うん……。そうだ、俺が頭洗ってあげるね」
「頭?」
今度は一昨日とは逆に、私が前に座わらされ、髪を洗ってくれた。
美容院以外で他人に頭を洗ってもらうことなどなくて新鮮だった。もちろん美容師さん程のスムーズさはないけれど、洗いにくそうにしながらも丁寧に洗い上げてくれた。
私が顔を洗っている間に、彼は自身の体をもう一度洗っていた。それが終ると私の頭を洗っている間にお湯張りを始めた湯に浸かってしまった。
恥ずかしながら、一昨日のように身体中を撫で回されるんじゃないかなんて考えていたものだから、彼から渡されたナイロンのタオルを抱えてそろそろと彼の方に目を向けた。
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