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愛情
【32】
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美味しい食事を終えて、昔話に花を咲かせて楽しい時間も終わりを告げる。
帰りの車内では、まだ性別もわからない子供の名前の候補をあげていた。
レストランから私の家までは、姉と菅沼さんが住むマンションを通りすぎて行く。
マンション付近までくると「ごめん、まどか。明日も昨日の授業の続きがあって、後少し修正かけなきゃだから、先に降りさせてもらってもいい?」と姉に声をかけられた。
「いいよ。用事があるなら現地集合にすればよかったね」
「一応今回はお礼が主だから、そういうわけにもいかないでしょ。拓真も悪いけど、まどかのことお願いしてもいい?」
「うん。しっかり送り届けてくる」
マンションに着き、姉が降りると、窓を開けて手を降る。
「靴ありがとうね。大事に履くから。体冷やさないように気をつけて」
「うん、ありがとう。おやすみ」
「おやすみ」
車が発進してからも暫く手を振り続けた。
「仲良いよね」
私が姿勢を直すと、ルームミラー越しにそう話しかけられる。
「そうですね。小さい頃の1個上って凄く大人だったんですよね。だから、憧れでもあったし」
「憧れ? まあ、さくらはしっかりしてるしね」
「気強くないですか?」
「少しね。でも、凄く優しいよ。まどかちゃんの話も時々出るんだよ」
「私の話?」
「子供の頃の話とか。家族想いだし、俺のことも気にかけてくれるし、ちゃんと大事にしようと思ってるよ」
「お姉ちゃんの旦那さんになる人が菅沼さんでよかったです」
「お! 嬉しいこと言ってくれるね。俺も、妹できるの嬉しいな。うち男ばっか3人だからさ。あと姉ちゃんいるけど怖いし」
「でも妹以外、皆いるならいいじゃないですか」
「真ん中には真ん中の悩みがあるの」
そう言って笑っている菅沼さんは、本当にいい人だと思う。
姉は姉で彼のことを大切にしているし、私も将来こんな夫婦になりたいと思った。
アパートの敷地内まで送ってもらい、私の車の前で停まった。
「今日は本当にご馳走さまでした」
「いやいや、こちらこそ仕事前だったのにさくらを助けてくれてありがとう。彼氏とちゃんと話し合うんだよ」
「はい。心得ております。お姉ちゃんにも、靴ありがとうってもう1度言っておいて下さい」
「わかった。おやすみ」
「おやすみなさい」
軽く会釈をして車を降りる。数歩歩いたところで「まどかちゃん!」と声をかけられる。
後ろを振り向くと、菅沼さんが運転席から降りてこちらに駆けつけてきた。
「忘れ物」
そう言って肩にコートをかけられた。店の中は暖房がきいていて暑いくらいで、脱ぎっぱなしだった。
腕に持っていたはずだけれど、AMELIAの紙袋とバッグだけはしっかり持ってそのまま車を降りてしまったようだった。
「あー、すいません……」
「どういたしまして。それじゃあ、また日取りが決まったら連絡するね」
「はい。楽しみにしてます」
「俺も。じゃあ、今度こそおやすみ」
「はーい。おやすみなさい」
去っていく車に手を振って、アパートの方へ振り向く。一歩足を踏み出して、その足を止めた。
「あまねくん!?」
私の目の前には、スーツ姿のあまねくんが立っていた。
帰りの車内では、まだ性別もわからない子供の名前の候補をあげていた。
レストランから私の家までは、姉と菅沼さんが住むマンションを通りすぎて行く。
マンション付近までくると「ごめん、まどか。明日も昨日の授業の続きがあって、後少し修正かけなきゃだから、先に降りさせてもらってもいい?」と姉に声をかけられた。
「いいよ。用事があるなら現地集合にすればよかったね」
「一応今回はお礼が主だから、そういうわけにもいかないでしょ。拓真も悪いけど、まどかのことお願いしてもいい?」
「うん。しっかり送り届けてくる」
マンションに着き、姉が降りると、窓を開けて手を降る。
「靴ありがとうね。大事に履くから。体冷やさないように気をつけて」
「うん、ありがとう。おやすみ」
「おやすみ」
車が発進してからも暫く手を振り続けた。
「仲良いよね」
私が姿勢を直すと、ルームミラー越しにそう話しかけられる。
「そうですね。小さい頃の1個上って凄く大人だったんですよね。だから、憧れでもあったし」
「憧れ? まあ、さくらはしっかりしてるしね」
「気強くないですか?」
「少しね。でも、凄く優しいよ。まどかちゃんの話も時々出るんだよ」
「私の話?」
「子供の頃の話とか。家族想いだし、俺のことも気にかけてくれるし、ちゃんと大事にしようと思ってるよ」
「お姉ちゃんの旦那さんになる人が菅沼さんでよかったです」
「お! 嬉しいこと言ってくれるね。俺も、妹できるの嬉しいな。うち男ばっか3人だからさ。あと姉ちゃんいるけど怖いし」
「でも妹以外、皆いるならいいじゃないですか」
「真ん中には真ん中の悩みがあるの」
そう言って笑っている菅沼さんは、本当にいい人だと思う。
姉は姉で彼のことを大切にしているし、私も将来こんな夫婦になりたいと思った。
アパートの敷地内まで送ってもらい、私の車の前で停まった。
「今日は本当にご馳走さまでした」
「いやいや、こちらこそ仕事前だったのにさくらを助けてくれてありがとう。彼氏とちゃんと話し合うんだよ」
「はい。心得ております。お姉ちゃんにも、靴ありがとうってもう1度言っておいて下さい」
「わかった。おやすみ」
「おやすみなさい」
軽く会釈をして車を降りる。数歩歩いたところで「まどかちゃん!」と声をかけられる。
後ろを振り向くと、菅沼さんが運転席から降りてこちらに駆けつけてきた。
「忘れ物」
そう言って肩にコートをかけられた。店の中は暖房がきいていて暑いくらいで、脱ぎっぱなしだった。
腕に持っていたはずだけれど、AMELIAの紙袋とバッグだけはしっかり持ってそのまま車を降りてしまったようだった。
「あー、すいません……」
「どういたしまして。それじゃあ、また日取りが決まったら連絡するね」
「はい。楽しみにしてます」
「俺も。じゃあ、今度こそおやすみ」
「はーい。おやすみなさい」
去っていく車に手を振って、アパートの方へ振り向く。一歩足を踏み出して、その足を止めた。
「あまねくん!?」
私の目の前には、スーツ姿のあまねくんが立っていた。
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