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愛情
【23】
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「ごめん……。俺、またまどかさんの優しさに甘えてるね」
「そんなことないよ。ちゃんと妹さんに否定してくれて嬉しかった」
「……俺、ちゃんとするから。奏のこと説得して皆に認めてもらった上で結婚できるようにする」
「うん……。でも、結婚はやっぱりそんなに焦らなくてもいいんじゃないかな?」
付き合って3ヶ月でも、家族が受け入れてくれるなら、結婚もいいかもしれない。そう思えたけれど、妹さんが言ったように、あまねくんにはいくらでも若くて綺麗な子が寄ってくるだろう。
世間体から見て、私よりも相応しい相手が今後彼と出会うかもしれない。そしたら、彼の家族もそちらを選ぶかもしれない。
色んな可能性が見えてきて、今無理に結婚を考えて焦って入籍しても、私のこの卑屈な気持ちでは2人の生活も上手くいかないだろうと思えた。
「え? ……まどかさん、結婚やめるとか言わないよね?」
「……言わないよ。妹さんに認めてもらえるように頑張るって言ったじゃん」
「うん……。それならいいんだけど……」
彼は、ハンドルを握る手にぎゅっと力を込めて、下唇を噛んだ。
まさかこんなにぎすぎすした空気になるなんて思っていなかった。道は、彼のマンションへと向かっている。
「あまねくん、ごめん。今日はちょっと疲れちゃったからこのまま家に送ってくれないかな?」
「え? ……うち、来ないの?」
「うん……。明日も仕事だし」
「そうだけど……じゃあ、ちょっとまどかさんち寄ってってもいい?」
「……ごめん。明日、早いから……」
「そっか……」
ごめんね、あまねくん。これ以上一緒にいたら泣いてしまいそうだから。
彼の家族に認めてもらえないことがこんなに辛いだなんて思っていなかった。
御両親はいい人だったし、おばあさんとはほとんど話をしてないけれど、律くんも多分認めてくれた。
妹さんは、東京に出ていて、今後接する機会も少ないだろう。けれど、それでも年齢のことを言われて否定されて、私以上に相応しい子が他にもいるだなんて言われたら、悔しいなんていう感情よりも、私じゃダメなんだという切なさが勝ってしまう。
あまねくんが私を好きになってくれて、私もまた彼を好きになって。私達はお互いにとても想い合っていると思う。
けれど、その比率がずっと同じでいることなんてあるのだろうか。
私の方が先に年老いていくのは事実で、シワもシミも増えて体型も崩れてどんどん醜くなっていく。いつまで経っても彼は5つ若いままで、どんなに年を重ねても私の年齢を超すことはない。
「送ってくれてありがとう」
「うん……。また連絡するね」
「うん。待ってる」
アパート前で降ろしてもらい、彼の車を見送って家に入る。
鍵を閉めると、靴も脱がずにそのまま玄関で踞った。少しは覚悟したことだった。すぐに認めてもらえるわけがないと色々想像してから行ったじゃないか。
なのに何でこんな辛い気持ちになるの。
「うー……」
押さえていた分、次々に溢れる涙。
こんなに彼のことが好きなのに、どうしてわかってもらえないんだろう。どうして彼は、私よりも年下なんだろう。
今更そんなこと考えても仕方がないのに、運命を憎まずにはいられない。あまねくんが妹さんを説得してくれると言ってくれた。
彼は、絶対に約束を守ってくれる人だ。だからきっと必死に妹さんを説得してくれるだろう。けれど、そうだとわかっていても、今はただ溢れる涙を押さえることはできなかった。
「そんなことないよ。ちゃんと妹さんに否定してくれて嬉しかった」
「……俺、ちゃんとするから。奏のこと説得して皆に認めてもらった上で結婚できるようにする」
「うん……。でも、結婚はやっぱりそんなに焦らなくてもいいんじゃないかな?」
付き合って3ヶ月でも、家族が受け入れてくれるなら、結婚もいいかもしれない。そう思えたけれど、妹さんが言ったように、あまねくんにはいくらでも若くて綺麗な子が寄ってくるだろう。
世間体から見て、私よりも相応しい相手が今後彼と出会うかもしれない。そしたら、彼の家族もそちらを選ぶかもしれない。
色んな可能性が見えてきて、今無理に結婚を考えて焦って入籍しても、私のこの卑屈な気持ちでは2人の生活も上手くいかないだろうと思えた。
「え? ……まどかさん、結婚やめるとか言わないよね?」
「……言わないよ。妹さんに認めてもらえるように頑張るって言ったじゃん」
「うん……。それならいいんだけど……」
彼は、ハンドルを握る手にぎゅっと力を込めて、下唇を噛んだ。
まさかこんなにぎすぎすした空気になるなんて思っていなかった。道は、彼のマンションへと向かっている。
「あまねくん、ごめん。今日はちょっと疲れちゃったからこのまま家に送ってくれないかな?」
「え? ……うち、来ないの?」
「うん……。明日も仕事だし」
「そうだけど……じゃあ、ちょっとまどかさんち寄ってってもいい?」
「……ごめん。明日、早いから……」
「そっか……」
ごめんね、あまねくん。これ以上一緒にいたら泣いてしまいそうだから。
彼の家族に認めてもらえないことがこんなに辛いだなんて思っていなかった。
御両親はいい人だったし、おばあさんとはほとんど話をしてないけれど、律くんも多分認めてくれた。
妹さんは、東京に出ていて、今後接する機会も少ないだろう。けれど、それでも年齢のことを言われて否定されて、私以上に相応しい子が他にもいるだなんて言われたら、悔しいなんていう感情よりも、私じゃダメなんだという切なさが勝ってしまう。
あまねくんが私を好きになってくれて、私もまた彼を好きになって。私達はお互いにとても想い合っていると思う。
けれど、その比率がずっと同じでいることなんてあるのだろうか。
私の方が先に年老いていくのは事実で、シワもシミも増えて体型も崩れてどんどん醜くなっていく。いつまで経っても彼は5つ若いままで、どんなに年を重ねても私の年齢を超すことはない。
「送ってくれてありがとう」
「うん……。また連絡するね」
「うん。待ってる」
アパート前で降ろしてもらい、彼の車を見送って家に入る。
鍵を閉めると、靴も脱がずにそのまま玄関で踞った。少しは覚悟したことだった。すぐに認めてもらえるわけがないと色々想像してから行ったじゃないか。
なのに何でこんな辛い気持ちになるの。
「うー……」
押さえていた分、次々に溢れる涙。
こんなに彼のことが好きなのに、どうしてわかってもらえないんだろう。どうして彼は、私よりも年下なんだろう。
今更そんなこと考えても仕方がないのに、運命を憎まずにはいられない。あまねくんが妹さんを説得してくれると言ってくれた。
彼は、絶対に約束を守ってくれる人だ。だからきっと必死に妹さんを説得してくれるだろう。けれど、そうだとわかっていても、今はただ溢れる涙を押さえることはできなかった。
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