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愛情
【19】
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「幸い律と喧嘩をすることもなく、周は律のことを慕ってくれました。自分は理系の方が得意だからと税理士の道に進み、それでも苦労は多かったようですが、無事に税理士試験も受かって少しは自信になったようです」
「税理士試験だって難しいですよね? 5科目とらなきゃいけないですもんね」
「そうなんです。よく知っていますね。司法試験は1回ですが、おっしゃったように税理士試験は5科目とらなければいけません。在学中になんとか5科目取れましたが、何回か不合格だったこともあり、その度に落ち込んでいましたから」
「あの………在学中に税理士を取るっていうのも凄く早いですよね? 私、1科目とるのに1年以上かかるって聞いたことあるんですけど……」
「それは、社会人になってから目指す人が多いからですよ。働きながら勉強すれば、勉強時間は圧倒的に学生の時より減るから。1科目を1年でとれればいい方なんじゃないですか。社会人から税理士を目指せば、取得までに平均10年はかかるって言われてますから。在学中にとるのが1番時間もあるし効率もいい」
律くんが、顔を上げてそう教えてくれた。
こんなにたくさん喋るんだ……。勝手に寡黙なイメージでいたため、驚いた。
「そうなんだ……。でも、無事に税理士になれたんですから、それで自信に繋がったんですよね?」
「ほっとしたところはあったと思います。ですが、就職したらしたで専門的な分野にはいっていきますからね。挫けそうになることもあったようです。それでも弁護士と税理士とでは仕事内容が違うのだから、別の職種として誇りをもって仕事をしてくれればいいと思っているんです。しかし、弁護士なら税理士を兼業できるというところから、弁護士になれなかったことが今でもひっかかっているのでしょう」
「税法については俺よりもよっぽど周の方が詳しいよ。実際に実務経験を積んでる人間と、試験だけのために詰め込んだ知識とはわけが違う。弁護士だって得意、不得意の分野があるし、兼業できるって言ったって税理士程の仕事ができる弁護士なんてそうそういないよ」
律くんは、父親の方を見るでもなく、時に隣のおばあさんの食事を気にしながらそう言った。
言い方は淡々としているけれど、あまねくんを庇っているようにも聞こえる。
「そうだな。父さんもそれについては同感だ。まどかさん、親バカだと思われるかもしれませんが、周には恋愛くらいは自分が心から好きになれた方と幸せになってもらいたいと思っているのです」
父親としての切なる願いが伝わってくる。あまねくんはご両親から愛されてるのだなと感じた。
また、言い方はさておき、律くんからもあまねくんを想う気持ちが伝わってきた。
「まどかちゃんなら大丈夫よ。気の強い子だと周が負けちゃうかもしれないけど。周のこと、優しく見守っててあげてほしいの」
母親にそう言われ、「いつも優しくしてもらっているのは私の方です。支えてもらってばかりで……。私が少しでもあまねくんの役に立てるなら 、何でもしていくつもりです」と言ってしまった。
「そんなに好きなの? 周のこと」
目を大きく開いてそう聞き返されてしまい、自分が言ってしまった言葉と、きっと私の方が彼のことを好きだと思うという気持ちと、彼の家族にそのことを感じ取られてしまったであろうことから気恥ずかしくなる。
「……はい」
一言返事をするのでいっぱいいっぱいで、体中から火が吹き出しそうなほど全身が熱くなった。
「税理士試験だって難しいですよね? 5科目とらなきゃいけないですもんね」
「そうなんです。よく知っていますね。司法試験は1回ですが、おっしゃったように税理士試験は5科目とらなければいけません。在学中になんとか5科目取れましたが、何回か不合格だったこともあり、その度に落ち込んでいましたから」
「あの………在学中に税理士を取るっていうのも凄く早いですよね? 私、1科目とるのに1年以上かかるって聞いたことあるんですけど……」
「それは、社会人になってから目指す人が多いからですよ。働きながら勉強すれば、勉強時間は圧倒的に学生の時より減るから。1科目を1年でとれればいい方なんじゃないですか。社会人から税理士を目指せば、取得までに平均10年はかかるって言われてますから。在学中にとるのが1番時間もあるし効率もいい」
律くんが、顔を上げてそう教えてくれた。
こんなにたくさん喋るんだ……。勝手に寡黙なイメージでいたため、驚いた。
「そうなんだ……。でも、無事に税理士になれたんですから、それで自信に繋がったんですよね?」
「ほっとしたところはあったと思います。ですが、就職したらしたで専門的な分野にはいっていきますからね。挫けそうになることもあったようです。それでも弁護士と税理士とでは仕事内容が違うのだから、別の職種として誇りをもって仕事をしてくれればいいと思っているんです。しかし、弁護士なら税理士を兼業できるというところから、弁護士になれなかったことが今でもひっかかっているのでしょう」
「税法については俺よりもよっぽど周の方が詳しいよ。実際に実務経験を積んでる人間と、試験だけのために詰め込んだ知識とはわけが違う。弁護士だって得意、不得意の分野があるし、兼業できるって言ったって税理士程の仕事ができる弁護士なんてそうそういないよ」
律くんは、父親の方を見るでもなく、時に隣のおばあさんの食事を気にしながらそう言った。
言い方は淡々としているけれど、あまねくんを庇っているようにも聞こえる。
「そうだな。父さんもそれについては同感だ。まどかさん、親バカだと思われるかもしれませんが、周には恋愛くらいは自分が心から好きになれた方と幸せになってもらいたいと思っているのです」
父親としての切なる願いが伝わってくる。あまねくんはご両親から愛されてるのだなと感じた。
また、言い方はさておき、律くんからもあまねくんを想う気持ちが伝わってきた。
「まどかちゃんなら大丈夫よ。気の強い子だと周が負けちゃうかもしれないけど。周のこと、優しく見守っててあげてほしいの」
母親にそう言われ、「いつも優しくしてもらっているのは私の方です。支えてもらってばかりで……。私が少しでもあまねくんの役に立てるなら 、何でもしていくつもりです」と言ってしまった。
「そんなに好きなの? 周のこと」
目を大きく開いてそう聞き返されてしまい、自分が言ってしまった言葉と、きっと私の方が彼のことを好きだと思うという気持ちと、彼の家族にそのことを感じ取られてしまったであろうことから気恥ずかしくなる。
「……はい」
一言返事をするのでいっぱいいっぱいで、体中から火が吹き出しそうなほど全身が熱くなった。
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