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愛情

【12】

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 そんなこんなで、私の家も一般的に見れば父親が地方公務員で、姉と私が生活に困ることはなかったけれど、あまねくんの家とは比較する対象にすらならない気がした。
 雅臣の実家をみたことはなかったけれど、もしかするとこれくらいの規模だったかもしれない。

 ようやく立派な門構えが見えて、圧倒される。平然と敷地内に入っていくあまねくんにそわそわしながらついていく。
 庭も綺麗に整備されており、辺りをキョロキョロと見渡してしまう。

「まどかさん、落ち着かないね」

 あまねくんは、こちらを向いてクスリと笑った。

「落ち着かないよ!  こんな大きなお家なんて聞いてないもん」

「大きいのかなぁ?  大体友達の家も皆これくらいだったけど……」

「それはきっとお金持ちのお友達が多いからだね」

 目を細めて言えば「何でそんな顔するの。別に実家だから、俺の持ち物じゃないし」彼は、口元を覆っておかしそうに笑う。

 笑い事じゃない。それこそうちの嫁には相応しくないなんて言われそうで、不安しかない。

「大丈夫だって言ったじゃん」

 彼は、私の右手をぎゅっと握ると、「行こう?」と続けた。左手に持った手土産が入った紙袋の紙紐を握る手にも力が入った。

「うん……」

 緊張しながら彼に続く。玄関を開けると、そこから奥に長い廊下が続いていた。想像してはいたけれど、倒れそう。

「ただいま」

 あまねくんが声をかけると、奥からパタパタとスリッパで走る音が聞こえる。

「周!  おかえり!」

 綺麗な女性が走ってきて、そのままあまねくんに抱きついた。

「わっ、ちょっと」

 弾みで私と彼の手は離れる。彼は背中をしならせながら、顔をしかめて彼女との距離をとった。

「もう!  周ってば全然家に帰ってこないんだから」

「仕事が忙しかったの」

「連絡くらいくれてもいいのに。それで、こちらが彼女さん?」

 そう言って女性は腰を屈めて私を見つめた。真っ白い肌に栗色の髪、青みがかった透き通るような目、長い手足に適度な筋肉がついていて一瞬見ただけでもスタイルの良さが伺えた。

「綺麗……」
 
 思わずそう溢してしまい、慌てて口を塞いだ。彼女は一瞬、目を大きくさせたが、すぐににこりと微笑んで「ありがとう」と言った。

「周の母です。あなたがまどかちゃん?」

「は、はい。一まどかです」

「あなたもモデル?  美人さんね」

「い、いえ!  とんでもないです」

 こんなに綺麗な人に美人などと言われるなんて恐縮で、顔の前でぶんぶんと手を振る。
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