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愛情

【5】

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 帰宅してから特にすることもなく、何となく茉紀に電話をかけた。
 茉紀は中学からの親友で、元彼との相談をしたり、あまねくんとの距離を近付けてくれた恩人でもある。12月23日の夜、お誘いのメッセージを茉紀が送信しなければ、今の私達はなかったかもしれない。
 いや……そもそもあまねくんは最初からUSBメモリを奪う予定だったのだから、なんとも言えない。とにかく、私達の関係に茉紀も関わっていることだけは確かだ。

「おはよー」

 元気な声が聞こえる。まだ8時過ぎだというのに、母親の朝は早いからか私よりもよっぽど元気だった。

「おはよう。今大丈夫だった?」

「うん、授乳中」

「ごめん、かけ直そうか?」

「いいよ。どうせ麗夢が適当に腹一杯になるまで飲んでるだけだから」

 何でもないように言う彼女。子供を抱えながらで大変だろうに、あっけらかんとしている。

「光輝は?」

「この前じいじに買ってもらった変身ベルトで遊んでるよ」

「朝から元気だねぇ……」

「うるさくてしょんないよ。まあ、一人で遊んでくれるからいいけどね」

「そっか。授乳終わったら麗夢も寝るかね?」

「寝ると思う。光輝の時ほど泣かないし。やっぱ男の子より女の子の方が楽だわ」

「そんなに違うの?」

 私は、茉紀と会話をしながらスティックタイプのカフェオレをマグカップに入れ、お湯を注いだ。
 簡単なわりに美味しいから気に入って時々飲んでいる。それを持ってリビングに戻り、ガラステーブルの上に置くとソファーへ腰かけた。

「違う違う。最初に産むなら女の子の方がいいかもね。って、そんなことより何か用事があったんじゃないの?」

「いや、用事って程じゃないんだけど……」

「どうせあまねのことでしょ」

 茉紀には全てお見通しで、私も呼び捨てにしたことなどない彼の名前を呼ぶ彼女。

「そうなんだけど……」

「何、珍しく喧嘩でもしたの?」

「ううん、結婚したいって言われた」

「すりゃいいじゃん」

 なんともあっさりしている。そりゃ、すりゃいいんだけれども、今じゃないじゃんねと言いたい私。

「でもさ」

「あんた、もう32だよ?  もうすぐ33でしょ。わかってる?  子供産む気はあるんでしょ」

 自分の意見を言おうとすれば、私の言葉を遮り、そう言われてしまった。
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