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愛情
【2】
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「あーまーねーくん! 仕事だよ!」
ゆっさゆっさ揺すってようやく「うーん……」と声を出す。
彼にはレム睡眠がないのかと思える程、スムーズには起きられない。
介護福祉士の私は、介護をするように肩の下に右腕を差し込み、ボディメカニクスを活用して上半身を起こした。
「朝ですよ!」
「んー、わかってるよ……。大好き、まどかさん……」
ゆっくり、ゆっくり喋る彼。本当にわかっているのか、なんなのか。
まだ目を閉じたままだけれど、上半身を起こしたままの体勢を保ててはいる。
「まだ確定申告残ってるんでしょ? 早く行って準備した方がいいじゃないの?」
「んー……。忙しい。……から、今日会えないかも」
「わかったから。今月も後3日で終わりだし、確定申告終わったらゆっくりしよ」
「うん。……好き」
両手を伸ばされて、両脇下に通される。そのまま背中を覆われて、ぎゅっと抱き締められた。
「わっ、ちょっ」
バランスを崩した私は、そのまま彼の腿の上に座り込む。
黒いシーツに包まれた掛け布団がクッションになってか、彼は顔をしかめるでもなく、依然として眠そうに私の胸に顔を埋めた。
「あまねくん、起きようよ」
「ん……」
小さくこくこくと頷く。
税理士の彼は、3月いっぱいまで繁忙期だ。私の元彼のせいで仕事も増え、毎日残業で帰りが遅いこともあり、余計に疲れが溜まって眠たいのだろう。
無理に起こすのも可哀想になってしまうけれど、仕事に真面目な彼は、朝から経済新聞に目を通し、社会情勢を確認してから出勤することを日課にしている。
そのルーチンを崩した時にはとんでもなく後悔するものだがら、こちらとしても早めに起こしてあげたい。
「ご飯作ったよ」
「……まどかさんのご飯好き」
「うん、一緒に食べよう?」
「うん……」
「ほら、目開けて。向こう行こう。冷めちゃうよ」
「ん……」
「あまねくん?」
ゆっくりと目が開き、とろんとした視線が、私を捕らえる。寝起きの彼は、なぜか艶やかで無意識に纏う色香に鼓動が高鳴る。朝っぱらから、何考えてるんだろ、私。
そんなふうに考えたところで、背中に回されていた手が私のスウェットの裾から入り込んできた。
「ちょっ、どこ触って……」
「朝起きて、1番にまどかさん見られるって幸せ……」
素肌をスルッと撫でられて、思わず体がしなる。
「待って、あまねくん! ご飯……」
「ご飯は後でもいいよ。冷めても美味しいから……。でも、まどかさんは今食べたい」
緩慢な動きだったはずの彼がどう動いたのか、私の体はそのまま後ろに倒れ、身構えている内にベッドの上に組敷かれてしまった。
「ちょっ、こんなことしてる場合じゃないでしょ!」
「こんなこと……? 俺が今から何しようとしてるって思ってるの? まどかさん、やらしいからなぁ……」
相変わらず言葉はゆっくりなのに、そのまま首筋に顔を埋められる。素早く彼の手が私のスウェットを捲って、突起を優しく爪で引っ掻く。
何度されても慣れないその感覚に爽やかな朝に似合わない甘ったるい声が漏れる。
ゆっさゆっさ揺すってようやく「うーん……」と声を出す。
彼にはレム睡眠がないのかと思える程、スムーズには起きられない。
介護福祉士の私は、介護をするように肩の下に右腕を差し込み、ボディメカニクスを活用して上半身を起こした。
「朝ですよ!」
「んー、わかってるよ……。大好き、まどかさん……」
ゆっくり、ゆっくり喋る彼。本当にわかっているのか、なんなのか。
まだ目を閉じたままだけれど、上半身を起こしたままの体勢を保ててはいる。
「まだ確定申告残ってるんでしょ? 早く行って準備した方がいいじゃないの?」
「んー……。忙しい。……から、今日会えないかも」
「わかったから。今月も後3日で終わりだし、確定申告終わったらゆっくりしよ」
「うん。……好き」
両手を伸ばされて、両脇下に通される。そのまま背中を覆われて、ぎゅっと抱き締められた。
「わっ、ちょっ」
バランスを崩した私は、そのまま彼の腿の上に座り込む。
黒いシーツに包まれた掛け布団がクッションになってか、彼は顔をしかめるでもなく、依然として眠そうに私の胸に顔を埋めた。
「あまねくん、起きようよ」
「ん……」
小さくこくこくと頷く。
税理士の彼は、3月いっぱいまで繁忙期だ。私の元彼のせいで仕事も増え、毎日残業で帰りが遅いこともあり、余計に疲れが溜まって眠たいのだろう。
無理に起こすのも可哀想になってしまうけれど、仕事に真面目な彼は、朝から経済新聞に目を通し、社会情勢を確認してから出勤することを日課にしている。
そのルーチンを崩した時にはとんでもなく後悔するものだがら、こちらとしても早めに起こしてあげたい。
「ご飯作ったよ」
「……まどかさんのご飯好き」
「うん、一緒に食べよう?」
「うん……」
「ほら、目開けて。向こう行こう。冷めちゃうよ」
「ん……」
「あまねくん?」
ゆっくりと目が開き、とろんとした視線が、私を捕らえる。寝起きの彼は、なぜか艶やかで無意識に纏う色香に鼓動が高鳴る。朝っぱらから、何考えてるんだろ、私。
そんなふうに考えたところで、背中に回されていた手が私のスウェットの裾から入り込んできた。
「ちょっ、どこ触って……」
「朝起きて、1番にまどかさん見られるって幸せ……」
素肌をスルッと撫でられて、思わず体がしなる。
「待って、あまねくん! ご飯……」
「ご飯は後でもいいよ。冷めても美味しいから……。でも、まどかさんは今食べたい」
緩慢な動きだったはずの彼がどう動いたのか、私の体はそのまま後ろに倒れ、身構えている内にベッドの上に組敷かれてしまった。
「ちょっ、こんなことしてる場合じゃないでしょ!」
「こんなこと……? 俺が今から何しようとしてるって思ってるの? まどかさん、やらしいからなぁ……」
相変わらず言葉はゆっくりなのに、そのまま首筋に顔を埋められる。素早く彼の手が私のスウェットを捲って、突起を優しく爪で引っ掻く。
何度されても慣れないその感覚に爽やかな朝に似合わない甘ったるい声が漏れる。
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