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傷が疼く
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「言ったじゃん。俺も旭のこと好きだって」
飄々とした態度の保にわなわなと拳を握り締めた杏奈は「か、からかわないで下さい! 私、見たんですからね! 荻乃先生が武内先生の写真をスマホのロック画面にしてあったところ!」と苦し紛れに言った。
さすがに驚いて目を見開いた保。その表情を見逃さなかった杏奈は勝利を確信したが、「なんだ、結局してくれたんだ」と1枚上手の保がすかさず言った。
「……え?」
「カッコよく撮れたら設定してよって言ったのに頑なに断るからさ」
「やっぱりそういうことかよ。お前、何でもかんでも他人に押し付けるのやめろよな」
全てを把握している夜天がフォローに入る。
「だって、夜天は嫌がるじゃん」
「当たり前だろ。誰がお前の写真なんかスマホに入れるか」
「あ、夕映ちゃんならいいんだ?」
「……夕映ちゃん? てめっ、いつから名前で呼んでんだ」
「え? いいって言ったよね? 夕映ちゃん」
そうパッと保と視線が合う。全く身に覚えのないことに夕映はふるふると首を横に振る。
「また適当なこと言いやがって! 大体、お前が誤解を招くようなことするから俺らが巻き込まれてるんだろうが」
「なに、夜天もキスしてほしかったの?」
「何でそうなんだよ! おい、昴! 黙ってないでコイツ何とかしろよ」
「無理。面倒くせぇ。何言っても無駄だし」
全く興味のなさそうな昴。ぎゃんぎゃん騒ぐ夜天に余裕綽々な保。それをおろおろと宥めようとする旭。
すっかり置いてきぼりの杏奈は、悔しそうに顔を歪めた。
「せ、先生方! ふざけるのも大概にして下さい!」
「え? ふざけてるのきみだよね? 他人の恋愛事に土足で踏み込んで。あることないこと言いふらしてさ。俺、きみみたいな子嫌いだなー」
にっこりと笑顔で言った保。それにつられて旭が「俺も」とポツリと呟く。夜天もが「俺も」と続くと「な、何ですか! 失礼です!」と杏奈が顔を真っ赤にさせて声を張り上げた。
「……るせ。頭痛くなんだろ。お前みたいに暇じゃねぇんだよ。失せろ、ブス」
不機嫌極まりない昴が低い声で唸ったことで場の雰囲気は最悪である。心外だとばかりに顔を歪めた杏奈は、きぃっと癇癪を起してドスドスと足音を立てて去っていった。
「……やっぱり岩崎先生は怖いです」
きゅっと夜天の白衣の裾を握った夕映に、夜天はふっと頬を緩めた。
「お前、やりすぎ」
白衣の両ポケットに手を突っ込んだ昴が、保の肩にトンっと自分の肩をぶつける。
「えー、旭困ってたじゃん」
「困ってたの? お前」
「……まぁ」
「ほら、旭ゲイだから」
悪気のない保の言葉にまたしても場が凍った。しかし、昴は全く気にする素振りもなく「ふーん。だとしても保はやめとけ。他にもっといいヤツいるだろ」と顔をしかめた。
飄々とした態度の保にわなわなと拳を握り締めた杏奈は「か、からかわないで下さい! 私、見たんですからね! 荻乃先生が武内先生の写真をスマホのロック画面にしてあったところ!」と苦し紛れに言った。
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「……え?」
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「やっぱりそういうことかよ。お前、何でもかんでも他人に押し付けるのやめろよな」
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「また適当なこと言いやがって! 大体、お前が誤解を招くようなことするから俺らが巻き込まれてるんだろうが」
「なに、夜天もキスしてほしかったの?」
「何でそうなんだよ! おい、昴! 黙ってないでコイツ何とかしろよ」
「無理。面倒くせぇ。何言っても無駄だし」
全く興味のなさそうな昴。ぎゃんぎゃん騒ぐ夜天に余裕綽々な保。それをおろおろと宥めようとする旭。
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「せ、先生方! ふざけるのも大概にして下さい!」
「え? ふざけてるのきみだよね? 他人の恋愛事に土足で踏み込んで。あることないこと言いふらしてさ。俺、きみみたいな子嫌いだなー」
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「……るせ。頭痛くなんだろ。お前みたいに暇じゃねぇんだよ。失せろ、ブス」
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「……やっぱり岩崎先生は怖いです」
きゅっと夜天の白衣の裾を握った夕映に、夜天はふっと頬を緩めた。
「お前、やりすぎ」
白衣の両ポケットに手を突っ込んだ昴が、保の肩にトンっと自分の肩をぶつける。
「えー、旭困ってたじゃん」
「困ってたの? お前」
「……まぁ」
「ほら、旭ゲイだから」
悪気のない保の言葉にまたしても場が凍った。しかし、昴は全く気にする素振りもなく「ふーん。だとしても保はやめとけ。他にもっといいヤツいるだろ」と顔をしかめた。
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