その傷を舐めさせて

雪村こはる

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お付き合いすることになりまして

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「な、なんとか終わりました! 今日は優しい先輩が教えてくれたのでちゃんと聞きたい事も聞けて、勉強になりました」

「そっか、よかった。前に武内から酷い扱い受けてるって聞いたから心配してた」

 その一言で胸がきゅんと音を立てる。きっともっと前なら、そんなこと気にも止めなかっただろうに。

「先生、知ってたんですね……」

「俺のこと気にして言えなかったんだよね? 俺の方こそごめんね。俺のせいでもあるのに」

「ち、違いますよ! 師長さんもあれは先輩が悪いって言ってくれました! それに、岩崎先生が師長さんに言ってくれたんですよ。きっとそれも、荻乃先生が同期だからだと思うんです。だって、岩崎先生って看護師のこと嫌いなんですよ」

 普段一緒に働いている姿を思い出すとつい笑ってしまう。彼女の詩にさえ、仕事中は真剣な顔つきで指示を出す。
 旭は、いつか保から聞いた話を思い出した。以前、夜天から勉強を教えてもらっていた件については話題に上がったが、夕映が不当な扱いを受けていることについては未だにちゃんと謝罪もできずにいた。

「岩崎は看護師さんが嫌いなわけじゃないよ。ちゃんと仕事をしない人が嫌いなだけで。岩崎が庇ってくれたってことは、夕映ちゃんが真面目に仕事してたのが伝わったってことだと思うよ」

 そんな言葉が心に染みた。単純に昴が旭の彼女だから手を差し伸べてくれただけだと思っていた夕映にとって、看護師でなくても見てくれている人はちゃんといるんだ感激した。

「そうなんでしょうか……。それなら嬉しいな。まだまだ全然慣れませんけど、でもやっぱりあの病棟にしてよかったかなって今では思ってます」

「そう……。辛かったら俺にも話してよ」

「……え?」

「夜天ばっかりじゃなくて」

「えっと……先生?」

 夕映は足元にぞんざいに置かれた掛け布団をぎゅっと握りしめた。なぜ急に夜天の名前が出てきたのか。それに、私の話を聞くのは楽しそうじゃなかったのに……そんなふうに不思議に思う。
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