その傷を舐めさせて

雪村こはる

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お付き合いすることになりまして

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 2人着替え終わってからも暫くお菓子を食べながらの雑談をした。夕映が聴きたがっていた曲もわかり、かけてやればいつかのようにとろんと眠そうな顔をする。

「もう眠いんだろ」

「ん……今日は早番だったので。仕事終わってからお菓子買いに行ったりと……ちょっとはしゃぎすぎました」

 夕映の言葉にふっと笑みをこぼした夜天は、「じゃあ、歯磨いて寝るか」と夕映を洗面所へ誘う。

「……あ、歯ブラシ入ってない」

 バッグの中に入れたはずの歯ブラシがなぜか入っていなかった。記憶を辿れば、パジャマをエコバックの底に敷き詰めて、その上に乗せようと一旦取り出したのを思い出す。

「あー……テーブルの上だ」

 項垂れる夕映に、夜天はすっとストックの歯ブラシを手渡す。顔を上げた夕映は、二度瞬きをして顔を綻ばせた。
 2人並んで歯を磨く。鏡に写った姿を客観的に見るのは初めてだった。こんなにも身長差があったのかとお互いに思いながらも言葉を発することなく歯磨きに集中した。
 明日もどうせ歯を磨くから、と夜天の歯ブラシの隣に並ぶ2本目の歯ブラシ。収納になっている鏡扉を閉めながらたったそれだけのことにすら胸が騒ぐ。

 夜天の後ろを大きなクッションを抱えてとことことついてくる夕映。寝室に通すのはもちろん初めてのこと。

「……いい匂いします。リビングと匂いが違いますね」

 クンクンと鼻を上に向けて匂いを嗅ぐ。そんな夕映の姿にすら心が温まる。

「部屋ごとに変えてるんだよ」

「オシャレです!」

「そうか?」

「よく眠れそうです」

 中央に置かれたクイーンサイズのベッドの掛け布団を捲ると、そこに潜り込みながら夕映が言う。体に対して大きなベッドは、四つん這いで移動しなければ奥へと行けない。

「お前、やっぱちいせぇな」

「なっ……ベッドが大きいんですよう……。こんな大きなベッド初めて見ました。でも、夜天さんの体の大きさだとこれくらいないと窮屈ですか」

「まぁ、広々寝たいしな」

 そう言いながら隣に寝転ぶ。ふわっと車の中で香った夕映の匂いがした。
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