その傷を舐めさせて

お付き合いすることになりまして

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「お待たせしました！」

　じゃんっと両手を広げてリビングに戻ってきた夕映。夏服のパジャマは白地に小さなネズミの世界的人気キャラクターがいくつも散りばめられていた。表情の違うネズミが多数いる。前開きの薄手の上衣に膝上のショートパンツ。華奢な細い足がちんまりと出ていた。

　え……かわい……待て待て、俺！
　今、可愛いとか思った!?　嘘だろ!?　子供だぞ!?　ほとんど犯罪だぞ!?　いや、成人過ぎてるからいいのか……。

　胸の奥でバクバクと音を立てる。前に付き合っていた彼女はすらりと足の長いモデル体型だった。見た目だけで選んだわけではないにしろ、そんな大人の女性に魅力を感じて付き合ってきたはず。
　それなのに、子供のようなパジャマ姿に浮かれるなんてどうかしていると自分でも気持ちの整理がつかなかった。

「夜天さんもパジャマ着てくださいよー。今日はパジャマパーティーですよ」

　にししっと歯を出して笑う夕映。夜天は、本当に先に夜を共に過ごすのが旭でなくてよかったと思った。きっと夕映の頭の中はまだお菓子のことでいっぱいなはずなのに、今から自分の腕の中にこの体を収めて眠りにつくことを待ち遠しく感じている。髪を撫で、頬を擦り寄せ近くで呼吸を感じたいと思った。

　単純にパジャマパーティーの醍醐味であるパジャマ姿を急かされただけなのに、なぜか頭の中で「早く一緒に寝ましょうよ」に変換される。

「じゃあ、俺も……着替えてくる」

　年甲斐もなく、初めて彼女ができた時の高校時代を思い出した。当時迎えた初めての夜もこんなふうに柄にもなく緊張したっけかな、と考えながら夜天は着替え始めた。