その傷を舐めさせて

雪村こはる

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パーティーでは淑女を演じさせていただきます

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 客観的に自分と旭を見ているような気分だった。きっと自分も今の旭みたいにだらしなく照れていんだろうと思った。

 そんな夕映の姿に鋭い視線を送っていた人物がいた。橘杏奈だ。旭達と同期の看護師、所沢紗季に連れられてやってきた。といっても半ば強引に連れて行ってくれと頼み込んだのだ。
 本来、医師だけを対象にしたパーティーだったが、同期の看護師も参加は自由だった。だから旭達に憧れを抱いている看護師がちらほらと参加していた。
 とても同期だけのパーティーとは言えないほど人数も集まっていた。

 杏奈は悔しそうに顔を歪めた。この日の為に淡い紫色のAラインのドレスを新調した。胸元の大きく開いたドレスだ。胸をめいっぱい寄せて、谷間を強調させた。
 裾を翻して普段はズボンで覆われている足を見せびらかすようにして歩いて見せた。しかし、普段杏奈を持て囃してくれる層の医師達は当然ながら本日は参加していない。

 どれだけ自慢のスタイルを披露しようと用もないのに行ったり来たりとしてみたが、同期で集まった医師達は皆、楽しそうに談笑しているばかりで杏奈には見向きもしなかった。
 それどころか保が連れてきた絶世の美女は、一瞬にして多くの男性の視線を攫っていった。

 きぃっと悔しさで歯を食いしばる中、見つけた夕映の姿。なぜここに彼女がいるのかと目を疑った。
 杏奈の目論みでは旭だけパートナーを連れておらず、笑い者になる予定だった。そこで杏奈が旭は保のことが好きなのだと言って回ろうとしていたのだ。
 しかし実際に来てみれば、パートナーを連れているのは保と旭だけ。それに、杏奈と同じく他の医師達に便乗してきた同じ病院の看護師達ばかりだった。
 それだけでも面白くないというのに、旭だけではなく、保ともその妻とも昴でさえも夕映と会話をしている。自分はあの輪の中に入れるわけでもないのに何であの女が、と憤りを募らせていた。
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