その傷を舐めさせて

雪村こはる

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パーティーでは淑女を演じさせていただきます

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 保の妻を見上げる夕映の姿に気付いた保が「あ、夕映ちゃん。その人俺の奥さんね」と未だに昴をホールドしながら言った。
 保の言葉に、人がいると気付いた女性がすっと視線を下げた。

「え!? なに!? 可愛い! 小動物!?」

 ずいっと顔を近付けられ、夕映はまたしても後退ることになった。希星にも似た雰囲気を持っているように感じた。ただ、長い髪を揺らす希星とは違い、フェイスラインまでしかない髪は、その小顔をより一層小さく見せた。
 希星も長身だったが、それよりも更に高いように思えた。ハイヒールのせいで保と同じくらいはあるんじゃないかと夕映はじっと彼女を見つめた。
 希星はどちらかといえばクールな第一印象だが、彼女は健康的に焼けた肌と意志の強そうなアーモンドアイから、スポーツをやっていそうに見えた。

「旭の彼女なんだって」

「あさひ?」

「俺の同期」

 保がすっと指を差すと、それを追うようにして保の妻が旭に目を向けた。

「こんばんは」

 彼女の方が先に挨拶をすると、旭は1つ息をついてから「こんばんは。荻乃旭といいます。ご主人とは同期で奥様のお話もよく伺っております」と形式上の言葉を並べた。取り繕っておかなければ動揺してしまいそうだった。
 保は女性のことが好きな男性であり、その保が一生涯を共にしようと選んだ相手なのだ。

「武内和泉いずみと申します。同期ってことは、皆同級生かしら?」

「あ、はい。同い年ですね」

「わぁ、一緒だ。一緒! 私も保と昴と同じなの! 大学の頃から3人で仲良くてね」

 弾んだ声で和泉が言った。夕映は客観的にそれを見ていて、だから仲良さそうに見えたんだと納得した。
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