その傷を舐めさせて

雪村こはる

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診察は手術の後で

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 実際に手術の様子を見学させてもらったこともあったが、自分の手術と置き換えて考えたことはなかった。
 だから、手術室の看護師達に全裸を披露した挙句、4月からは自分もこの病院で働くことになると考えたらいたたまれない気持ちだった。

 あー……何にも考えてなかった。手術室の看護師さんには男性もいたのに……外科に配属になったら、私も顔を合わすのに……。
 胸に心電図のパッチを貼られたし、尿道留置カテーテルも入れられたし……。あぁ、もうお嫁に行けない……。

 そんなことを考えていると、カーテンの向こう側から名前を呼ばれ、昨日手術室へ案内した看護師が顔を出した。

「おはようございます。昨日はよく眠れましたか?」

「あ、はい。麻酔が効いてたみたいでぐっすりでした」

「それはよかったです。先生の回診なので、傷口見せてもらいますね」

 そうにこやかに言われ、仰向けになると髪を綺麗に整えた希星が現れた。その間にも、看護師が手術着の紐を解き、胸元を開けた。当然下着などつけておらず、胸は露になる。
 大きいとは言い難い、控えめな胸。夕映は、立派な大きさでもあれば見せつけてやれるのに、と思いながら小さく息をついた。

「小柳さん、おはようございます」

「おはようございます」

「傷口見ていくね」

 看護師の手によって剥がされたテープとガーゼ。空気が触れてひんやりとする。

「綺麗ね。洗っていくから、冷たいけど少し我慢してね」

 暖房がついていても2月の室温は寒い。前もって言われたところでじゃばじゃばと傷口に生理食塩水をかけられれば、冷たさに体が驚く。ぶるりと身震いをしながら必死に耐えた。
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