その傷を舐めさせて

雪村こはる

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先生は同性愛者

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 どうしたものか、そう思っているところに夕映が「先生は噂されて困ってるんですよね?」と発した。

「困っては……いるけど。でもまあ、今更どうしようも……。本当のことだし。そもそも見えるところにスマホを置いておいた俺も悪いし、ロック画面なんかに設定したのも詰めが甘いし……」

 自分にも落ち度はある、と旭は片手で頭を抱える。

「先生、私と付き合いましょう!」

「……ごめんなさい」

 意気揚々と両手にぐっと力を入れた夕映に、旭は深々と頭を下げた。しかし夕映はにっこり笑うと「契約しませんか」と言った。

「……契約?」

「はい。先生は、武内先生に迷惑をかけたくないんですよね?」

「うん」

「あ、確認ですけど武内先生に想いを告げるつもりは」

「ない」

「ですよね。ということは、早い話が武内先生には好きだってことを知られたくないってことでいいんですよね?」

 旭は、1つ1つ確認する夕映に深く頷く。

「知られたくないっていうか……まあ、人伝には。いずれ言うか言わないかは別として橘さんから聞くのはなんていうか」

「わかりますよ。私も先生には私の言葉で好きだって伝えたいので」

 最近では夕映がやたらとスムーズに好きという言葉を口にするので、初めて告白された時に比べると本当に恋愛の類のものなのか疑いそうにすらなる。

「でも、多分このままだと明日には噂は広まって、パーティーではあることないこと言われると思うんです。そこには武内先生もいるわけですから、逃げ場がありません」

「そうだね」

「だから私を彼女としてパーティーに連れて行って下さい!」

「……はぁ?」

 旭は、想像もしていなかった提案に間の抜けた声を上げた。眉間に皺を寄せ、困惑した表情を浮かべる。
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