その傷を舐めさせて

先生、お付き合いをしましょう！

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　他の看護師達とは違い、彼女からは夕映を嘲笑うかのような態度を感じた。幾人もの男達から恋愛対象とされてきた自信の表れだろうと旭は思った。
　妙に自分に自信があって、自分よりも劣ると思った人間を見下す傾向にある。旭はこういう女性が苦手だった。

「まあ……先生は嫌いだから診察してほしくないとクレームがくるよりはよっぽどいいですけどね」

　旭は彼女を一瞥し、当たり障りのない返しをした。彼女はまともに自分を見ない旭が面白くないのか、目を細めて口をへの字に曲げた。

「迷惑なら迷惑だって言った方がいいですよ。診察時間だっておしますし。先生の患者さんは他にも大勢いるんですから」

「別に迷惑だとは思っていませんよ。コミュニケーションの1つです。手術を控えていて穏やかでない患者さんです。あの年齢の女の子の体に傷が残るんですよ？　内科的治療では完治の難しい患者さんですし、俺には処方を出すことと話を聞いてあげることくらいしかできませんから」

　旭の言葉に女性はぐっと奥歯を強く噛んだ。心配してくれてありがとうくらいの言葉はもらえるものだと思っていた。それが、夕映を庇うような口振りに納得がいかない。

「先生は優しいですね。患者さん思いで」

「そうでもありませんよ。これも仕事ですから。それより橘さん、午前中に頼んでおいた検査結果、渕上先生に知らせてくれました？　まだ連絡がこないのですが」

「……あ」

　彼女はピクリと体を震わせ、口を開いたまま青冷めた顔をした。