アンダーンシエ

山縣

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 そんなある日楓ちゃんが私のパパとママを見てみたいと言い出した。
 どうして急にと思ったけれどあんなに話を聞いていたらどんな見た目なのかも気になったりするか。私だって楓ちゃんのパパとママがどんな見た目の人なのか気になっている。
 これを拒否して楓ちゃんとの仲が悪くなるのも嫌だから鏡で入れ替わってパパとママを見せてあげることにした。
 最初はこの部屋にパパとママを連れてこようと思ったけれど連れてくるための理由も思いつかないし、楓ちゃんのことはパパとママには内緒にしておきたかったから鏡で入れ替わることにした。
 
 楓ちゃんが私のパパとママを見て帰った。
 「ユナちゃんのパパとママ優しそうだし、とっても良いね......
だから私のパパとママにすることにした。」
 「え? 何を言ってるの。私のパパとママは私のパパとママよ。楓ちゃんのパパとママは別にいるでしょ。」
 「私の見た目はユナちゃんよ。中身が入れ替わるなんて思いもしないだろうしちょっと記憶喪失したのかなくらいにしか思わないでしょ。」
 そうだ。楓ちゃんがこのまま私と入れ替わってくれないと私はずっと鏡の中から出られなくなってしまう。
 しかも、パパとママの話をたくさんしたから私にも完璧じゃないかもしれないけどなりきることができる。
 「鏡の中からもう出られないと思った? 大丈夫よ。また次の子が引っ越してくれば私みたいに入れ替わればまた出てこれるわよ。まあ、引っ越してくればいいけど」
 といって楓ちゃん。いや、私は高笑いをした。
 高笑いをすると楓はどこかへ行ってしまった。多分私のパパとママのところへ行ったのだろう。私の。私のパパとママなのに。
 もうパパとママに会えないのかな。考えると泣けてくる。
 パパとママに楓の事を秘密しないで話しておけば良かった。
 鏡の中に人がいるなんておかしいじゃないか。早くに壊しておけば良かった。組み立てられないくらいにハンマーで何回も叩いて粉々にしておけば良かった。
 しかし、今更悔やんでも何もできない鏡の中。

 もうダメだと思って泣いていると
 「きゃー! なにこれ。誰よあなた! 」
 ママの声が聞こえた。
 良かった。ママが私の偽物に気づいてくれたんだ。そう思って顔を上げるとママは私の方を指差していた。 
 ママの後ろで楓が笑っていた。
 楓が殺したいほど憎かった。今すぐにでも殺したかった。楓と仲良くなろうとしていた自分が馬鹿だった。
 
 しばらくするとパパが来た。
 きっともう鏡を壊されるのだろう。
 外に連れていかれた。
 ここで死ぬのかな。寿命で死ぬんじゃないなら自分で死ぬ場所を決めたかったな。
 パパがハンマーを持っている。怖い。死ぬのは怖い。
 「ねえパパやめてよ! 私よ! ユナよ! 」
 「なんだお前。なんでユナの名前を知ってるんだ。奇妙な奴め早く何処かへ行け! 」
 「やめて! 」
 必死の問いかけも聞いてはくれなかった。
 パリンッ
 「*******」
 言葉にならないような声が出た。
 誰か助けて。死にたくない。
 ハンマーで叩かれて鏡が割れるとその部分で私の身体も割れた。というか切れた。
 「いやあああ! 痛い。痛いよ。やめてよパパ。」
 「俺はお前のパパなんかじゃない! 」
 更に鏡が割れる。
 もう痛みを感じないくらいになってきた。もう喋る気にもなれない。
 身体が細切れにされすぎたのか血がですぎたのか意識が朦朧としてきた。

 このまま死ぬんだろう。
 もっとやりたい事沢山あったなあ。
 おしゃれとかお化粧とか、恋とか結婚とかもしてみたかったな。
 8歳で死ぬなんて呆気ない。
 なんのために生まれてきたんだろう。
 まさか、楓のためだとかないよね。
 どうか神様。私にあと1つなんでもできるなら
 
 楓を殺したいな。
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