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2巻
2-3
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第二章 おもいを届けるたまごやき
くるくる、くるくる……黄色いたまごが丸まっていく。
あついゆげの中から、においがする。
甘いにおい、しょっぱいにおい、ほんのりこげたにおい……いろんなにおい。
でも、けんのたまごやきとはなんだかちがう。
あまくて、ちょっとしょっぱくて、雲みたいにふんわりしてて……
ぜんぜん、けんみたいにできない。
そうだ、けんのたまごやきは、まほうでできてるのかな?
❖
『緒方小児科医院』は、今日も診察を待っている患者でいっぱいだ。
そして、午前の診療が終わった頃。誰もいなくなったあとの静かな院内に訪問者が二人だけいる。
診察室ではその二人……剣と悠が椅子に座り、ただ黙って向かいに座る人物の言葉を待っていた。その人物は、この医院の若き院長である緒方八重。長い髪を後ろできっちりまとめ、きりっとした目元から理知的な空気が漂っている。
「先生、どうですか? 悠の体は?」
剣は悠を膝に抱えたまま、ぐっと身を乗り出した。料理を作っているときとは打って変わって、焦った表情を浮かべている。
そんな剣に、八重はふわりと目元を緩めて答えた。
「良好です。心拍は異常なし。胃腸も大分正常に機能してきていますね。きっと栄養状態がいいからでしょう」
その言葉に、剣は胸を撫で下ろした。
「そうですか……よかった……!」
思わず力が抜けた剣だったが、悠を抱きしめる腕にはより一層力がこもった。
「でも激しい運動はできるだけ控えてくださいね。まだ筋力が弱いですから」
「はい、気を付けます……緒方先生」
剣がそう言うと、八重はそっと悠の頭と頬を撫でた。悠はその掌の感触を、心地よさそうに受け止めている。
緒方小児科医院は八重の父の代から長年、地域の子どもたちの健康を守ってきた、信頼が厚い医院だ。とはいえ、ここは剣の家から電車で二駅ほど離れた場所である。近いというほどの距離ではない。
何故ここまでわざわざ悠を連れてきているかというと、八重が悠の特殊な事情を汲み、無償で健康状態をチェックしてくれるからであった。ここまでしてくれるのは、ある知人が、彼女に剣を紹介してくれたおかげだ。
「おーい、終わったか?」
無遠慮にも診察室のドアを開けて勝手に入ってきたその人物に、八重は鋭い視線を向ける。
「診察中なんだから、勝手に入ってこないでよ、伊三次」
「おぉ、悪い悪い」
そう、伊三次からの強い薦めで、剣はこの医院に通うことを決めたのだ。
詳しいことは剣も知らないが、昔八重が伊三次の探偵事務所にとある依頼をしにきたのだとか。伊三次が見事に事件を解決して以来、八重は文句を言いつつも、何かと彼に協力してくれるのだ。剣がお礼を伝えると、八重はいつも決まってこう言う。
『こいつに迷惑をかけられてる同志ってことで』
言うまでもなく、『こいつ』とは伊三次のことだ。
「あのねえ、ここはあなたの家じゃないんだから。いきなり来てほいほい入られたら困るのよ」
「悪かったって。中にいるのがこいつらだってわかってたから、つい」
呆れてため息をつく八重を尻目に、伊三次は時計を指さして剣に言う。
「剣、そろそろ行かないといけないんじゃないか?」
「あぁ、そうだった」
剣は慌てて悠の衣服を整え、上着を着せると、自分の荷物を掴んだ。
今日は昼から、人と会う約束をしているのだった。待ち合わせの場所は緒方小児科医院から近く、駅を挟んだすぐ反対側だった。
少し込み入った話をする予定なので、悠と一緒というわけにもいかなかった。そこで剣の用事が済むまでの間、伊三次が悠の面倒を見てくれることになったのだ。このあとは剣の家ではなく、伊三次の事務所に行くことになっている。
「じゃあな、悠。伊三次のところでいい子にしてるんだぞ。夜には帰ってくるから」
「……うん」
悠は不安げだった。母親を待ち続けて、ついに会うことなく離れ離れになった記憶があるからだろうか。剣がいそいそと出ていく姿を、じっと見つめていた。
剣は違う、必ず帰ってくる。理解はしているが、幼い心に刻まれた傷は、そう簡単に消えはしない。それでも、泣くのをこらえて剣を見送った。
そんな悠の姿を、伊三次はじっと見守る。
「いつまでここにいるつもり?」
診察室の開いた扉から、じっと剣を見送る伊三次と悠に、八重が声をかける。
「す、すまん……ほら悠、俺たちも行くか」
「……うん」
伊三次は悠の手を引いて、医院の玄関へと歩き出そうとした。
「あ、ちょっと待って。何か大きな荷物を忘れてるんだけど……?」
八重が荷物を入れる籠を指さした。そこには大きな包みが、どっしりと置かれている。鞄に入っているのではなく、今どき珍しい風呂敷包みだ。
「いけねぇ、忘れるところだった。昼飯だ」
「あの人が作ったの?」
荷物は、弁当箱が一つ二つどころではなさそうに見えた。
持ってみると、いったいどれだけ詰め込んだのかと思うほどの重量だ。
「おう。前にも言ったが、剣は料理人でな。悠を預かってもらうからって、弁当を作ってくれたんだ。これから事務所で皆一緒に、剣の料理に舌鼓を打つ予定ってわけ」
「へぇ……じゃあ、言わなかったらよかった。そしたらそのお弁当、丸々私の胃袋に収められたのに」
冗談めかして言うが、八重の目は獲物を狙うハンターのように光っていた。
「おいおいおい……勘弁してくれ」
「冗談よ。いっぱい食べて丈夫になりなさいね。悠ちゃん」
「うん」
八重は、満面の笑みで頷く悠の頭をもう一度撫でた。剣や伊三次だけでなく、彼女もまた悠のことを気にかけている。
初めて診察に来たときの悲惨な様子から、徐々に丸みを帯びてきた顔、赤く染まる頬……ずっと悠を診てきた八重は、この笑顔に喜ばずにはいられなかった。
「そうだ。よかったらこの弁当、一緒に食うか?」
本日は土曜日。緒方小児科医院の診療は午前で終わり、午後からは休みとなっていた。完全に病院は閉めてしまう。
伊三次もそのことは把握していた。
「そうね。片付けして、まだおかずが残ってたらいただこうかしら」
「残しとくさ。じゃあ、終わったら連絡くれ」
そう言うと、伊三次は悠と手を繋いで診察室をあとにした。去っていく伊三次の背に、八重は軽く手を振っている。
(一人分きちんと残すように、銀と銅にも言っておかないとな)
伊三次はそんなことを考えていた。
❖
伊三次の探偵事務所は緒方小児科医院から徒歩五分ほどの場所にある。
繁華街から遠く、住宅や商店街が多いこの地域では、普通はそうそう依頼など舞い込むことはない。それでも伊三次たちが生活費を捻出できているのは、ひとえに腕がいいからだ。
人に危害を加えるようなものでない限り、依頼はできる限り引き受け、そして必ず完遂していた。知る人ぞ知る凄腕探偵として、徐々に口コミで広まっていったのだ。
とはいえ、今日は依頼が一つもない平和でのどかな日だ。
伊三次が悠を迎えに行っている間、銀と銅が事務所を大掃除し、悠が喜びそうなものを用意しておいてくれている。
管狐たちは働き者だし優秀なのだが、その分要求も多い。
最初は油揚げを欲し、やがてその味の良し悪しについてあれこれ言うようになった。剣の料理を食べるようになってからは、更に口うるさい。
しばらく歩いて、事務所に到着した悠と伊三次は、手を洗って早速お昼ご飯にすることにした。銀と銅が、テーブルの上に広げられた重箱を見て、感嘆の声を上げる。
「さすがは剣殿……!」
「花見から間を置かず、こうして剣殿のごちそうにありつけるとは……!」
一段目は三種の具材のおにぎりにいなり寿司、二段目は筑前煮に鮭の塩焼き、春雨サラダ、カボチャの煮つけ、三段目はミニハンバーグ、鶏のから揚げ、卵焼き、海老フライ、その他諸々……素材も味も様々な、ありとあらゆるものが重箱の中には詰まっていた。
剣はいつも謙遜しているが、伊三次たちからしたら、この重箱は宝箱のようなものだった。
「剣の奴、大人三人分だからってえらく張り切ったなぁ」
伊三次は感心しながら、どれに箸をつけようか料理を順番に見ていく。
悠は重箱の中身を見て驚いている。
剣はこれまで悠の胃腸の具合を考慮して、消化に負担がかかる揚げ物などの食べ物は避けていた。悠にとっては、唐揚げやフライは、未知の食べ物なのだ。
そして、揚げ物などが入っている三段目は食べてはいけないと、悠は剣に止められていた。
目を輝かせながら、四人は手を合わせる。
そして、一斉に――
「「「「いただきます!」」」」
言うが早いか、大人たちは箸を伸ばす。
双子は同じおかずを取ろうとして、視線をバチバチと合わせている。伊三次は双子が選ばないだろうおかずから、さらっと自身の取り皿に集めていく。
悠は……きょろきょろとするばかりで、まだ箸を伸ばそうとしていなかった。
「どうした? 好きなのから食べろよ」
伊三次が勧めるも、悠は迷っている様子でちらちらと三段目の中身を見ていた。
何かを口に出すことを迷っているようだ。
「もしかして……こっちのおかずも食べたいのか?」
悠はそう言われて、気まずそうな表情を浮かべてから、小さく頷いた。
こんなに小さいのに遠慮している……伊三次たちはいじらしくてたまらなかった。
「そうかそうか! 食え食え、いっぱい食え!」
伊三次はいそいそと取り皿に子どもが喜びそうなおかずを取り分けようとした。
しかし、そこでふと手を止める。
「あ、しまった。悠はまだ揚げ物とかの刺激物は食べないほうがいいんだっけか?」
「やはり、ちと腹に重いかもしれませぬな」
「そうは言っても、美味そうだし食べたいよなぁ」
伊三次と銅はうんうん唸っていたが、このままでは埒が明かない。
伊三次がスマートフォンを取り出して、剣を呼び出してみるが、すぐ留守電に繋がってしまった。
「人に会うって言ってたしな……」
「八重殿にお聞きしてみては?」
「う~ん、今頃病院を閉める準備してるだろうからな、あいつ」
試しに八重の番号にかけてみたものの、やはり応答はない。
「困ったな。八重から連絡あるまで待つか?」
「広げてしまった今となっては、それは厳しいですな」
銅の視線は、重箱に釘付けになっている。銀も、伊三次を見てはいるが、ちらちらと視線が動いている。そんなとき、悠が重箱を指さした。
「これ……?」
そこには、剣お手製の卵焼きが詰まっている。
「ああ、これならいけるか」
卵を使った料理は悠もこれまで何度も食べていた。これなら大丈夫だろうと、伊三次は一番大きな卵焼きを悠の取り皿に取ってやった。
ふんわり黄色く、ほんのりと出汁の香りがする卵焼きを、悠はしばらくしげしげと見ていた。
「剣が作ると、やっぱり形もいいよな。ほれ、きっと美味いぜ」
悠は渡された短い箸でぐっと卵焼きを二つに割った。柔らかい卵焼きが、二つに割れていく。割れた小さな一かけらをじっと見つめ、悠は口に含んだ。
「!」
悠の頬が一気に紅潮した。目を見開き、驚くほどのスピードで卵焼きを咀嚼する。
「おお、美味いか?」
伊三次が尋ねると、悠はもぐもぐ口を動かしながら、大きく何度も頷いた。そして、そのまま次の一かけらを割ろうと再び箸に力を込めた。
「そうかそうか。よかった……よしよし、もっと食え。たんと食え!」
伊三次は、重箱の中の卵焼きを次々悠の皿に移していった。
銀と銅が止めても、その手は止まらない。悠も休まず卵焼きを口に運び続ける。
重箱の中の卵焼きは、あっという間になくなってしまった。悠一人で見事に平らげてしまったのだ。
「ぜ、全部食べてしまいましたよ……」
「童よ、腹は大丈夫か? 痛うないか?」
呆れつつ、心配することも忘れない管狐たちに、悠は大きく頷いた。その瞳には、まだまだ光が宿っている。もっと食べたいのだろう。
「主様、さすがにこの小さな体で食べすぎでは? 他のものもまだ食べてはおりませぬし……」
「やっぱり、そうだよなぁ……あとで腹が痛くならんかな」
「痛くなる前に八重殿をお呼びしたほうが……」
伊三次と銅がコソコソ話していると、急激に悠の表情が曇り出した。曇ったかと思うと、その顔には涙が伝っている。
「ど、どうした⁉ やっぱり腹が痛いか⁉」
慌てる伊三次の問いに、悠はしっかりと首を横に振った。
言葉は発せず、ただ皿を持ってさめざめと泣いている。時折、重箱の中をちらちら見ながら、静かに涙を流し続けていた。
「主様、もしや……卵焼きがなくなってしまったことを悲しんでおるのでは?」
「……え?」
銅の言葉に、伊三次は眉をひそめた。
皿と悠を交互に見たあと、改めて悠に視線を送ると……悠は泣きながら頷いた。その視線は、卵焼きがあった重箱のスペースに注がれていた。どうも正解らしい。
「悠……そんなに卵焼きが食べたいのか……」
「無理もありません。剣殿の卵焼きなのですから」
「ははは……そうか」
銀の言葉に笑う伊三次。お腹を壊していたら剣になんと言おうと内心ヒヤヒヤしていた伊三次は、一気に脱力した。
「しかし、どうしたものでしょう? 卵焼きはかけらも残っておりません」
「そうだよなぁ」
銀と伊三次は、揃ってうんうん唸り出した。そこで銅が何やら不敵な笑みを浮かべる。
「ないならば……作るほかありませんな」
「……作る?」
眉間に皺を寄せる伊三次と銀に、銅は大きく、胸を張って答えた。これ以上の名案はないと言わんばかりの顔で。
「左様、我々で作るのです! この童が満足いくまで、もしくは腹がはちきれるまで!」
「銅! はちきれさせる気か⁉」
「否、これはただの比喩であろう……いちいち突っかかってくるでない!」
「あ~……ちょっといいか、おまえら」
いつもの調子で小競り合いに発展しそうな双子を止めて、伊三次は指さした。指した先は、事務所についているミニキッチン。コンロ一口に流しがあるだけの小さなキッチンだ。
「ここで、どうやってあのきれいな卵焼きを作るってんだ?」
普段は自炊よりも外食が主な伊三次たちの事務所には、電子レンジが一台あるくらいで、鍋やフライパンはない。まして、卵焼き器なんてあるはずもなかった。
伊三次と銀が黙り込む中、銅はめげなかった。
「こういうときは、援軍要請であろう。誰かに家にあるものを持ってきてもらうのです」
「援軍って……誰を……」
伊三次が呆れていたそのとき、スマートフォンが鳴った。伊三次は近しい人物の着信音を個別に設定している。この音は……
伊三次、銀、銅、三人が同時に顔を見合わせ、ニヤリと笑みを浮かべた。
「もしもし、ちょうどいいところに……おまえ、卵焼き器持ってないか、八重?」
❖
伊三次に悠を預け、剣は一人歩いていた。
緒方小児科医院から二十分ほど歩くと、駅が見えてくる。そこから駅の反対側に渡って更に徒歩十分。住宅街の一角に、その店はある。
白い壁に大きな木製のドアと大きな窓。明るい色のストライプのオーニングが、店の印象を優しくしている。ドアにかかった北欧風のデザインの看板には、店名が記されている。
『洋食ニコイチ亭』と。
剣がこの店に来るのは久々だった。窓から覗き込むと、店内には人が多くいた。時間は正午を少し過ぎたばかり。洋食店にとってはかきいれ時だろう。
ドアの前には黒板の立て看板が置かれている。ランチメニューはオムライスのみのようだが、セットの付け合わせが選べるようだ。コンソメスープかポタージュか、どちらもおかわり自由と書いてある。
剣が会う約束をしている人物が忙しく動き回っているのが、店の外からでもわかる。繁盛しているようだ。
(もう少しあとにするか)
今訪問しても邪魔になる。そう思って剣は踵を返した。
そのとき、背後で大きなドアが開く音がした。そして同時に、声が聞こえる。
「剣さん!」
声の主は、よく見知った女性だった。花見のときに会った、彼女だ。
あのときは下ろしていたセミロングの髪を、今日はまとめて結い上げている。普段はカットソーにカーディガン、スカートとシンプルな格好だが、仕事のときは白いコックコートで、バシッと決めている。つい先ほどまでアクティブに厨房を駆け回っていたことがうかがえた。
「どうも。早く来すぎたみたいで……お忙しいときに来てしまって、すみません」
そう言って歩き去ろうとした剣の腕を、女性は見た目よりもずっと強い力でしっかり掴んだ。
「え」
「そう、今とっても忙しいの」
戸惑う剣に、女性はニッコリ微笑んだ。その顔には、微かに疲労が滲んでいる。まずい、と剣は本能的に思った。
「あの……なので出直しま……」
「手伝ってくれるよね、剣さん?」
そうして、剣が何か答える前に、店に引っ張り込まれてしまったのだった。
怒濤の如きランチタイムは、それから一時間ほど続いた。店主である女性は剣が来てからは厨房に入り、ホールは剣に任せた。料理を作ることは大得意だが、客あしらいは未だに得意ではない剣が右往左往したことは、言うまでもない。
最後の客を見送って、ランチの立て看板を店内に入れ、プレートを『準備中』にかけ替えたら、ようやく一息つけた。剣が息を一気に吐き出すと、その前にコーヒーカップが置かれる。
「ご苦労様。本当に助かったよ。ありがとうね、剣さん」
「いえ、まぁこれくらいは……」
そう言いつつも、カップを掴む手は重かった。
「すごい盛況ぶりですね。オープニングの日を思い出しましたよ」
「うん、ありがたいことにね」
女性は屈託なく笑いながら、テーブルを拭いて回っていた。手伝おうとする剣を止めて、女性は一人で店内を動き回る。
くるくる、くるくる……黄色いたまごが丸まっていく。
あついゆげの中から、においがする。
甘いにおい、しょっぱいにおい、ほんのりこげたにおい……いろんなにおい。
でも、けんのたまごやきとはなんだかちがう。
あまくて、ちょっとしょっぱくて、雲みたいにふんわりしてて……
ぜんぜん、けんみたいにできない。
そうだ、けんのたまごやきは、まほうでできてるのかな?
❖
『緒方小児科医院』は、今日も診察を待っている患者でいっぱいだ。
そして、午前の診療が終わった頃。誰もいなくなったあとの静かな院内に訪問者が二人だけいる。
診察室ではその二人……剣と悠が椅子に座り、ただ黙って向かいに座る人物の言葉を待っていた。その人物は、この医院の若き院長である緒方八重。長い髪を後ろできっちりまとめ、きりっとした目元から理知的な空気が漂っている。
「先生、どうですか? 悠の体は?」
剣は悠を膝に抱えたまま、ぐっと身を乗り出した。料理を作っているときとは打って変わって、焦った表情を浮かべている。
そんな剣に、八重はふわりと目元を緩めて答えた。
「良好です。心拍は異常なし。胃腸も大分正常に機能してきていますね。きっと栄養状態がいいからでしょう」
その言葉に、剣は胸を撫で下ろした。
「そうですか……よかった……!」
思わず力が抜けた剣だったが、悠を抱きしめる腕にはより一層力がこもった。
「でも激しい運動はできるだけ控えてくださいね。まだ筋力が弱いですから」
「はい、気を付けます……緒方先生」
剣がそう言うと、八重はそっと悠の頭と頬を撫でた。悠はその掌の感触を、心地よさそうに受け止めている。
緒方小児科医院は八重の父の代から長年、地域の子どもたちの健康を守ってきた、信頼が厚い医院だ。とはいえ、ここは剣の家から電車で二駅ほど離れた場所である。近いというほどの距離ではない。
何故ここまでわざわざ悠を連れてきているかというと、八重が悠の特殊な事情を汲み、無償で健康状態をチェックしてくれるからであった。ここまでしてくれるのは、ある知人が、彼女に剣を紹介してくれたおかげだ。
「おーい、終わったか?」
無遠慮にも診察室のドアを開けて勝手に入ってきたその人物に、八重は鋭い視線を向ける。
「診察中なんだから、勝手に入ってこないでよ、伊三次」
「おぉ、悪い悪い」
そう、伊三次からの強い薦めで、剣はこの医院に通うことを決めたのだ。
詳しいことは剣も知らないが、昔八重が伊三次の探偵事務所にとある依頼をしにきたのだとか。伊三次が見事に事件を解決して以来、八重は文句を言いつつも、何かと彼に協力してくれるのだ。剣がお礼を伝えると、八重はいつも決まってこう言う。
『こいつに迷惑をかけられてる同志ってことで』
言うまでもなく、『こいつ』とは伊三次のことだ。
「あのねえ、ここはあなたの家じゃないんだから。いきなり来てほいほい入られたら困るのよ」
「悪かったって。中にいるのがこいつらだってわかってたから、つい」
呆れてため息をつく八重を尻目に、伊三次は時計を指さして剣に言う。
「剣、そろそろ行かないといけないんじゃないか?」
「あぁ、そうだった」
剣は慌てて悠の衣服を整え、上着を着せると、自分の荷物を掴んだ。
今日は昼から、人と会う約束をしているのだった。待ち合わせの場所は緒方小児科医院から近く、駅を挟んだすぐ反対側だった。
少し込み入った話をする予定なので、悠と一緒というわけにもいかなかった。そこで剣の用事が済むまでの間、伊三次が悠の面倒を見てくれることになったのだ。このあとは剣の家ではなく、伊三次の事務所に行くことになっている。
「じゃあな、悠。伊三次のところでいい子にしてるんだぞ。夜には帰ってくるから」
「……うん」
悠は不安げだった。母親を待ち続けて、ついに会うことなく離れ離れになった記憶があるからだろうか。剣がいそいそと出ていく姿を、じっと見つめていた。
剣は違う、必ず帰ってくる。理解はしているが、幼い心に刻まれた傷は、そう簡単に消えはしない。それでも、泣くのをこらえて剣を見送った。
そんな悠の姿を、伊三次はじっと見守る。
「いつまでここにいるつもり?」
診察室の開いた扉から、じっと剣を見送る伊三次と悠に、八重が声をかける。
「す、すまん……ほら悠、俺たちも行くか」
「……うん」
伊三次は悠の手を引いて、医院の玄関へと歩き出そうとした。
「あ、ちょっと待って。何か大きな荷物を忘れてるんだけど……?」
八重が荷物を入れる籠を指さした。そこには大きな包みが、どっしりと置かれている。鞄に入っているのではなく、今どき珍しい風呂敷包みだ。
「いけねぇ、忘れるところだった。昼飯だ」
「あの人が作ったの?」
荷物は、弁当箱が一つ二つどころではなさそうに見えた。
持ってみると、いったいどれだけ詰め込んだのかと思うほどの重量だ。
「おう。前にも言ったが、剣は料理人でな。悠を預かってもらうからって、弁当を作ってくれたんだ。これから事務所で皆一緒に、剣の料理に舌鼓を打つ予定ってわけ」
「へぇ……じゃあ、言わなかったらよかった。そしたらそのお弁当、丸々私の胃袋に収められたのに」
冗談めかして言うが、八重の目は獲物を狙うハンターのように光っていた。
「おいおいおい……勘弁してくれ」
「冗談よ。いっぱい食べて丈夫になりなさいね。悠ちゃん」
「うん」
八重は、満面の笑みで頷く悠の頭をもう一度撫でた。剣や伊三次だけでなく、彼女もまた悠のことを気にかけている。
初めて診察に来たときの悲惨な様子から、徐々に丸みを帯びてきた顔、赤く染まる頬……ずっと悠を診てきた八重は、この笑顔に喜ばずにはいられなかった。
「そうだ。よかったらこの弁当、一緒に食うか?」
本日は土曜日。緒方小児科医院の診療は午前で終わり、午後からは休みとなっていた。完全に病院は閉めてしまう。
伊三次もそのことは把握していた。
「そうね。片付けして、まだおかずが残ってたらいただこうかしら」
「残しとくさ。じゃあ、終わったら連絡くれ」
そう言うと、伊三次は悠と手を繋いで診察室をあとにした。去っていく伊三次の背に、八重は軽く手を振っている。
(一人分きちんと残すように、銀と銅にも言っておかないとな)
伊三次はそんなことを考えていた。
❖
伊三次の探偵事務所は緒方小児科医院から徒歩五分ほどの場所にある。
繁華街から遠く、住宅や商店街が多いこの地域では、普通はそうそう依頼など舞い込むことはない。それでも伊三次たちが生活費を捻出できているのは、ひとえに腕がいいからだ。
人に危害を加えるようなものでない限り、依頼はできる限り引き受け、そして必ず完遂していた。知る人ぞ知る凄腕探偵として、徐々に口コミで広まっていったのだ。
とはいえ、今日は依頼が一つもない平和でのどかな日だ。
伊三次が悠を迎えに行っている間、銀と銅が事務所を大掃除し、悠が喜びそうなものを用意しておいてくれている。
管狐たちは働き者だし優秀なのだが、その分要求も多い。
最初は油揚げを欲し、やがてその味の良し悪しについてあれこれ言うようになった。剣の料理を食べるようになってからは、更に口うるさい。
しばらく歩いて、事務所に到着した悠と伊三次は、手を洗って早速お昼ご飯にすることにした。銀と銅が、テーブルの上に広げられた重箱を見て、感嘆の声を上げる。
「さすがは剣殿……!」
「花見から間を置かず、こうして剣殿のごちそうにありつけるとは……!」
一段目は三種の具材のおにぎりにいなり寿司、二段目は筑前煮に鮭の塩焼き、春雨サラダ、カボチャの煮つけ、三段目はミニハンバーグ、鶏のから揚げ、卵焼き、海老フライ、その他諸々……素材も味も様々な、ありとあらゆるものが重箱の中には詰まっていた。
剣はいつも謙遜しているが、伊三次たちからしたら、この重箱は宝箱のようなものだった。
「剣の奴、大人三人分だからってえらく張り切ったなぁ」
伊三次は感心しながら、どれに箸をつけようか料理を順番に見ていく。
悠は重箱の中身を見て驚いている。
剣はこれまで悠の胃腸の具合を考慮して、消化に負担がかかる揚げ物などの食べ物は避けていた。悠にとっては、唐揚げやフライは、未知の食べ物なのだ。
そして、揚げ物などが入っている三段目は食べてはいけないと、悠は剣に止められていた。
目を輝かせながら、四人は手を合わせる。
そして、一斉に――
「「「「いただきます!」」」」
言うが早いか、大人たちは箸を伸ばす。
双子は同じおかずを取ろうとして、視線をバチバチと合わせている。伊三次は双子が選ばないだろうおかずから、さらっと自身の取り皿に集めていく。
悠は……きょろきょろとするばかりで、まだ箸を伸ばそうとしていなかった。
「どうした? 好きなのから食べろよ」
伊三次が勧めるも、悠は迷っている様子でちらちらと三段目の中身を見ていた。
何かを口に出すことを迷っているようだ。
「もしかして……こっちのおかずも食べたいのか?」
悠はそう言われて、気まずそうな表情を浮かべてから、小さく頷いた。
こんなに小さいのに遠慮している……伊三次たちはいじらしくてたまらなかった。
「そうかそうか! 食え食え、いっぱい食え!」
伊三次はいそいそと取り皿に子どもが喜びそうなおかずを取り分けようとした。
しかし、そこでふと手を止める。
「あ、しまった。悠はまだ揚げ物とかの刺激物は食べないほうがいいんだっけか?」
「やはり、ちと腹に重いかもしれませぬな」
「そうは言っても、美味そうだし食べたいよなぁ」
伊三次と銅はうんうん唸っていたが、このままでは埒が明かない。
伊三次がスマートフォンを取り出して、剣を呼び出してみるが、すぐ留守電に繋がってしまった。
「人に会うって言ってたしな……」
「八重殿にお聞きしてみては?」
「う~ん、今頃病院を閉める準備してるだろうからな、あいつ」
試しに八重の番号にかけてみたものの、やはり応答はない。
「困ったな。八重から連絡あるまで待つか?」
「広げてしまった今となっては、それは厳しいですな」
銅の視線は、重箱に釘付けになっている。銀も、伊三次を見てはいるが、ちらちらと視線が動いている。そんなとき、悠が重箱を指さした。
「これ……?」
そこには、剣お手製の卵焼きが詰まっている。
「ああ、これならいけるか」
卵を使った料理は悠もこれまで何度も食べていた。これなら大丈夫だろうと、伊三次は一番大きな卵焼きを悠の取り皿に取ってやった。
ふんわり黄色く、ほんのりと出汁の香りがする卵焼きを、悠はしばらくしげしげと見ていた。
「剣が作ると、やっぱり形もいいよな。ほれ、きっと美味いぜ」
悠は渡された短い箸でぐっと卵焼きを二つに割った。柔らかい卵焼きが、二つに割れていく。割れた小さな一かけらをじっと見つめ、悠は口に含んだ。
「!」
悠の頬が一気に紅潮した。目を見開き、驚くほどのスピードで卵焼きを咀嚼する。
「おお、美味いか?」
伊三次が尋ねると、悠はもぐもぐ口を動かしながら、大きく何度も頷いた。そして、そのまま次の一かけらを割ろうと再び箸に力を込めた。
「そうかそうか。よかった……よしよし、もっと食え。たんと食え!」
伊三次は、重箱の中の卵焼きを次々悠の皿に移していった。
銀と銅が止めても、その手は止まらない。悠も休まず卵焼きを口に運び続ける。
重箱の中の卵焼きは、あっという間になくなってしまった。悠一人で見事に平らげてしまったのだ。
「ぜ、全部食べてしまいましたよ……」
「童よ、腹は大丈夫か? 痛うないか?」
呆れつつ、心配することも忘れない管狐たちに、悠は大きく頷いた。その瞳には、まだまだ光が宿っている。もっと食べたいのだろう。
「主様、さすがにこの小さな体で食べすぎでは? 他のものもまだ食べてはおりませぬし……」
「やっぱり、そうだよなぁ……あとで腹が痛くならんかな」
「痛くなる前に八重殿をお呼びしたほうが……」
伊三次と銅がコソコソ話していると、急激に悠の表情が曇り出した。曇ったかと思うと、その顔には涙が伝っている。
「ど、どうした⁉ やっぱり腹が痛いか⁉」
慌てる伊三次の問いに、悠はしっかりと首を横に振った。
言葉は発せず、ただ皿を持ってさめざめと泣いている。時折、重箱の中をちらちら見ながら、静かに涙を流し続けていた。
「主様、もしや……卵焼きがなくなってしまったことを悲しんでおるのでは?」
「……え?」
銅の言葉に、伊三次は眉をひそめた。
皿と悠を交互に見たあと、改めて悠に視線を送ると……悠は泣きながら頷いた。その視線は、卵焼きがあった重箱のスペースに注がれていた。どうも正解らしい。
「悠……そんなに卵焼きが食べたいのか……」
「無理もありません。剣殿の卵焼きなのですから」
「ははは……そうか」
銀の言葉に笑う伊三次。お腹を壊していたら剣になんと言おうと内心ヒヤヒヤしていた伊三次は、一気に脱力した。
「しかし、どうしたものでしょう? 卵焼きはかけらも残っておりません」
「そうだよなぁ」
銀と伊三次は、揃ってうんうん唸り出した。そこで銅が何やら不敵な笑みを浮かべる。
「ないならば……作るほかありませんな」
「……作る?」
眉間に皺を寄せる伊三次と銀に、銅は大きく、胸を張って答えた。これ以上の名案はないと言わんばかりの顔で。
「左様、我々で作るのです! この童が満足いくまで、もしくは腹がはちきれるまで!」
「銅! はちきれさせる気か⁉」
「否、これはただの比喩であろう……いちいち突っかかってくるでない!」
「あ~……ちょっといいか、おまえら」
いつもの調子で小競り合いに発展しそうな双子を止めて、伊三次は指さした。指した先は、事務所についているミニキッチン。コンロ一口に流しがあるだけの小さなキッチンだ。
「ここで、どうやってあのきれいな卵焼きを作るってんだ?」
普段は自炊よりも外食が主な伊三次たちの事務所には、電子レンジが一台あるくらいで、鍋やフライパンはない。まして、卵焼き器なんてあるはずもなかった。
伊三次と銀が黙り込む中、銅はめげなかった。
「こういうときは、援軍要請であろう。誰かに家にあるものを持ってきてもらうのです」
「援軍って……誰を……」
伊三次が呆れていたそのとき、スマートフォンが鳴った。伊三次は近しい人物の着信音を個別に設定している。この音は……
伊三次、銀、銅、三人が同時に顔を見合わせ、ニヤリと笑みを浮かべた。
「もしもし、ちょうどいいところに……おまえ、卵焼き器持ってないか、八重?」
❖
伊三次に悠を預け、剣は一人歩いていた。
緒方小児科医院から二十分ほど歩くと、駅が見えてくる。そこから駅の反対側に渡って更に徒歩十分。住宅街の一角に、その店はある。
白い壁に大きな木製のドアと大きな窓。明るい色のストライプのオーニングが、店の印象を優しくしている。ドアにかかった北欧風のデザインの看板には、店名が記されている。
『洋食ニコイチ亭』と。
剣がこの店に来るのは久々だった。窓から覗き込むと、店内には人が多くいた。時間は正午を少し過ぎたばかり。洋食店にとってはかきいれ時だろう。
ドアの前には黒板の立て看板が置かれている。ランチメニューはオムライスのみのようだが、セットの付け合わせが選べるようだ。コンソメスープかポタージュか、どちらもおかわり自由と書いてある。
剣が会う約束をしている人物が忙しく動き回っているのが、店の外からでもわかる。繁盛しているようだ。
(もう少しあとにするか)
今訪問しても邪魔になる。そう思って剣は踵を返した。
そのとき、背後で大きなドアが開く音がした。そして同時に、声が聞こえる。
「剣さん!」
声の主は、よく見知った女性だった。花見のときに会った、彼女だ。
あのときは下ろしていたセミロングの髪を、今日はまとめて結い上げている。普段はカットソーにカーディガン、スカートとシンプルな格好だが、仕事のときは白いコックコートで、バシッと決めている。つい先ほどまでアクティブに厨房を駆け回っていたことがうかがえた。
「どうも。早く来すぎたみたいで……お忙しいときに来てしまって、すみません」
そう言って歩き去ろうとした剣の腕を、女性は見た目よりもずっと強い力でしっかり掴んだ。
「え」
「そう、今とっても忙しいの」
戸惑う剣に、女性はニッコリ微笑んだ。その顔には、微かに疲労が滲んでいる。まずい、と剣は本能的に思った。
「あの……なので出直しま……」
「手伝ってくれるよね、剣さん?」
そうして、剣が何か答える前に、店に引っ張り込まれてしまったのだった。
怒濤の如きランチタイムは、それから一時間ほど続いた。店主である女性は剣が来てからは厨房に入り、ホールは剣に任せた。料理を作ることは大得意だが、客あしらいは未だに得意ではない剣が右往左往したことは、言うまでもない。
最後の客を見送って、ランチの立て看板を店内に入れ、プレートを『準備中』にかけ替えたら、ようやく一息つけた。剣が息を一気に吐き出すと、その前にコーヒーカップが置かれる。
「ご苦労様。本当に助かったよ。ありがとうね、剣さん」
「いえ、まぁこれくらいは……」
そう言いつつも、カップを掴む手は重かった。
「すごい盛況ぶりですね。オープニングの日を思い出しましたよ」
「うん、ありがたいことにね」
女性は屈託なく笑いながら、テーブルを拭いて回っていた。手伝おうとする剣を止めて、女性は一人で店内を動き回る。
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